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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大久野学園シリーズ

大久野学園新聞部 ~風紀委員の取り締まりに密着~

まだまだ至らない所があるかもしれませんがお読みいただけるとありがたいです。

「私立 大久野学園」

 この学園は生徒の自主性や活動を重んじ、勉学や部活動などに励んでほしいという理事長の思いから設立された学園であり、学費も安くて一流の教師陣が集まっている。

 また卒業後、様々な分野で活躍する人材を多く輩出することから注目を集めている学園である。

 学風が性に合うのか、優秀だが癖のある生徒や教師も多く集まっている事も特徴であり、かなりの頻度で学園を巻き込む騒動が起こっており、飽きない学園生活を生徒や教師達は過ごしている。


 ゴールデンウィークが明け、新入生達が学園生活にも慣れ始めてきた頃合いに1mmの丸刈り頭に標準体型の新聞部部員二年生「芽出井めでい 明人あきひと」は、ねずみ男を思わせる出で立ちに丸眼鏡を掛けた姿が特徴的な新聞部部長に呼び出されていた。

「部長、話とは何の事ですか? この間の英語同好会と古典国語研究会の喧嘩の件ならもう記事にして提出したはずですよ?」

「ああ、あの記事はしっかりと受領したとも。君を呼び出したのは風紀委員会の事だ」

「そういえば風紀強化月間でしたもんね、ということは彼らの密着取材ですか?」

「そうだ、もう彼らの許可ももらっている。頼めるかい?」

「いいですよ。ただ、この件が終わったら少し休みをいただきますよ?ここ最近記事にするような出来事が相次いでますからね」

「もちろんだ。最近は学園ごと異世界に転移するやら、科学部の人工知能が暴走するやら、怪力魔法少女が学園に現れるやらで忙しかったからな、僕も少し休みたい……」





 そして翌日、芽出井は朝早くに校門前に風紀委員会の面々と共に校門前に立っていた。

 大久野学園風紀委員会は総勢25名で構成されていて、学園内の風紀を守るべく活動している。時に反抗的な面々には実力行使することもあり、この学園内の戦闘力ランキングでも上位にいたりしている。

 芽出井は黒髪ロングに堅物女子な風紀委員長に話しかけた。

「今日は取材を受けて下さりありがとうございます。たしかこれから服装検査でしたよね?」

「ああ、我が校の生徒は癖のある者が多いからな。しっかり取り締まるぞ。ちなみに身の危険を感じたらすぐ逃げるようにするんだぞ」


 身の危険を感じる服装検査とは?と芽出井は思いつつ登校する生徒達の検査を行う様子を眺めていた。


 少しして風紀委員会の面々の空気が変わってきた、これは何事かと尋ねると……

「やつらが登校する時間帯だからな……」

「やつら?」


 思い当たる顔が多すぎて困惑していると”やつら”が登校してきた。

 ガチャンガチャンと金属が当たる音を鳴らしながら登校してきたのは、西洋の騎士鎧を身に纏った”洋式剣道同好会”の男子会員の面々だった。

 基本は騎士道精神に溢れ紳士淑女な会員達だが、部活をしている時だけでなく日常的に鎧を装着していることが多い変わり者集団でもある。早速、風紀委員長が彼らに声を掛けた。

「貴様らぁっ! 何度言ったら分かるのだ! 鎧姿で登校するんじゃない! 今すぐ脱げ!」

「なんとっ! 公衆の面前で鎧を脱げと? そんな恥ずかしい真似などできるものか!この鎧は我らの魂ぞ! 決して屈するものか!」

「恥ずかしい事などないだろ! さっさと脱げ!」

「ことわ、おっ、おいなにをする! 離せ! 鎧を脱がすんじゃあないっ! やっやめろー!」

「貴様らは何度言っても聞かないからな、実力行使させてもらおう」


 よほど鬱憤がたまっていたのだろう、すごく悪い笑顔で風紀委員長はそう言った。

 風紀委員会によって、鎧をひん剥かれ学園指定のジャージ姿になった面々は日陰に転がされていた。風紀委員長は吐き捨てるように言った。

「反省文を一枚、明日までに提出するように。良いな?」

「このような辱め……くっ、殺せ!」

「10枚に変更だ。さっさと教室に行け」

「くっ殺……」


 とぼとぼと彼らは教室に向かって行った。そして風紀委員長は言った。

「女子の洋式剣道の連中か……荒事になり兼ねないから気をつけるように」

「は、はい……」


 噂をしていたら早速、女性用の騎士鎧を身に纏い恋バナに花を咲かせながら彼女らがやってきた。そして風紀委員長は声を掛けた。

「鎧を脱げ!」

「私たちの魂なのです! そう易々とは脱ぎません!」

「男子の連中は全員、脱がせたぞ。後は貴様らだけだ」

「彼らになんてことを……くっ殺す……っ!」


 そう言い終わると共に風紀委員会と洋式剣道同好会女子会の大乱闘が始まった。

 先程、風紀委員長が言っていた危なくなったら身を隠せとはこういうことだったのかと思いながら戦いが終わるのを待った。


 5分後


 男子の時と同じくジャージ姿で日陰に転がされている女子会員の姿を横目に、風紀委員会は他の生徒達の取り締まりを行っていた。

 この乱闘のお陰か登校する生徒達は素直に風紀委員の指示に従い、服装検査を受けていった。


 なお、洋式剣道同好会の面々も決して弱いわけではなく、以前に学園ごと異世界転移した際は、転移先の王国の騎士団をボコボコの半泣きにする位には実力がある。ただ、相手が悪かった。



 朝の服装検査が終わり、風紀委員を含む生徒達が各自の教室に向かって行った。今日は一限目がLHRで持ち物検査が各クラスで行われる。

 不思議なことに各クラスに1人は風紀委員が在籍しているので、担任と風紀委員で各クラスの検査をやっているのだが、少なくとも芽出井のクラスでは不要物を持ってきていても口頭注意と没収で話が終わり大きな問題は無かった。

 しかし隣のクラスからは乱闘の音がするやら、上の階からは怒鳴り声と共に踏み切りの警報音がして、下の階からは悲鳴と共にドラムロールが聞こえてきた。今日もいつも通りな学園だなと思いつつ後で他の新聞部部員にそれぞれのクラスでの状況を聞こうと決めた芽出井であった。




 そして放課後、風紀委員会と待ち合わせをして合流した芽出井は放課後の活動についての話を聞いた。

 どうやら抜き打ちで各活動の調査を行うらしい。いざとなったら逃げるように指示を受けつつ一つ目の所に向かった。


 部室棟の奥の掘っ立て小屋に下げられた表札には『中国武術研究会』と書かれている。

 この研究会に在籍している生徒達は脳筋だがそこまで問題行動をしていただろうか?と芽出井は思いつつは中に入った。


 中では会員達が汗を流しながら型の練習をしたり筋トレを行っていたりと健全な活動をしているように見える。芽出井は何かの間違いなのではと思っていたのだが…

「失礼する、風紀委員会だ。会長はいるか?」

「私ならここにいるが、何の用だ?」


 現れたのは色黒な肌、弁髪マッチョな男子生徒だった。どうやらこの男子が中国武術研究会の会長らしい。そして風紀委員長が口を開いた。

「貴様らの活動に苦情が相次いでいる、以前も注意したはずだが改めて警告しに来た」


 ふてくされた顔で委員長を見つめる会長、その態度に頭にきたのか委員長が吠えた。

「突然よその格闘技系活動に乱入したかと思えば、いきなり勝負を挑んで戦うんじゃあない馬鹿者! きちんと相手に連絡して許可を取れっ!! 分かったか?!」

「我々は一向に構わんッッ!!!」

「他にも苦情が来ている! 水上歩行の練習でプールを占領するな! せめて1つのレーンだけとかにするだろうが! というかそんな危ないトレーニングをするな!溺れるぞ!」

「溺れるような者にそれをさせん! 万が一溺れても一向に構わんッッ!!!」

「構えよっっ!」


 少し落ち着いたのか委員長が自分を落ち着かせながら言った。

「反省文を明後日までに提出してもらうぞ」

「一向に構わんッッ!!!」

「貴様ぁ! 反省してないだろうがぁ!」


 今日一日のストレスが爆発したのか、目にもとまらぬ速さで委員長が会長にニンジャチョークをかけていた。そして会長は白目を向き泡をはき、即気絶した。

 委員長の強さに武術研究会の会員達が戦慄しながら会長の応急処置を行い、部屋を出る一行を敬礼しながら見送った。


 委員長にビビりながら芽出井は尋ねた。

「次は、どちらに?」

「本当はまだまだあるのだが次行く所が厄介でな、今日はそこで最後だ」


 そしてたどり着いた部屋の表札を見て芽出井は戦慄した。

「科学部に立ち入るんですか?!」

「ああ、奴らは何度も騒ぎを起こしている上に近隣の者達からの苦情も来ているからな」


 『大久野学園科学部』

 学園内に知らぬ者はいない部活で多くの生徒達から恐れられている部でもある。

 奇人変人が多いこの学園の中でも中々にクレイジーでサイコパスな面々がこの部に在籍しており、時に騒ぎを引き起こしたり解決したりとよく分からない部活動である。


 風紀委員長がそのドアを開けた。

「風紀委員会だ! 抜き打ちで検査をさせてもらう!」


 流れるように風紀委員達が突入し科学部の面々が変な動きをしないように見張れる立ち位置に移動していた。そして部室の一番奥にいた白衣にモヒカン頭の男子生徒がこちらを振り返りながら口を開いた。

「おやおや、風紀委員長ではないか? どうしたんだい? 抜き打ち検査だなんてひどいなぁ。我が部は至って健全に活動しているはずだよぉ?」

「何が健全だ、科学部部長! よく爆発騒ぎを起こしているだろ! ここに向かう途中にも二回くらい爆発音がしたぞ!」

「実験にアクシデントは付きものだからねぇ、それに火災報知器は作動していないだろ? じゃあセーフじゃないかい?」

「爆発音がする時点でだめだろ! 火災報知器が作動しない爆発とか怖すぎるぞ!」

「うるさいねぇ。もう帰ってくれないかい?集中したいんだ」

「そうは行かない! 最近、怪しげな薬品を開発したとタレコミがあったのでな、それの検査だ!」

「チッ! もうばれたか……フォーメンションF発動!」


 科学部部長のかけ声と共にいままでおとなしかった科学部部員達が近くにいた風紀委員達を押さえつけた。よく見ると部員それぞれが白衣の下に介護用のパワードスーツを着込んでいた。そして部長が言った。

「これは、古くなって廃棄される予定の物を改造した物でね。対風紀委員用にチューンしたのさ。さて、私はこれにて失礼するよ。君たちは学園内の風紀は守れるが学園外はちがうだろう?一歩でも敷地外に出ればもう私のプライベートだ。君たちでも干渉出来ないよね?」


 そう言い終わると部長は怪しげな薬品の入った試験管を持って部室から逃亡した。しかもパワードスーツのアシスト付きの速度の為、中々に速い。風紀委員長は悔しげな顔をしながら言った。

「くっ! 奴らに遅れを取るとは! どうした貴様ら! 理事長の特訓はこんな物では無かっただろう!」


 委員長のその声と共に風紀委員達はどうにか科学部部員を押しのけ委員長の下に集まった。その隙に部員達が扉の前に陣取り行く手を阻むかのように立ち塞がる。

 1人の風紀委員が言った。

「委員長、こうなったら我々が”風紀スクラム”で奴らを押さえます。ですので部長を追いかけて下さい。」

「だ、だがその技は……貴様らにはまだ負荷が強すぎるのでは……」

「いいんです、奴を好きにさせるよりもよっぽどましです。いくぞぉっ! 皆! ”風紀スクラム”だぁっ!」


 彼の声と共に風紀委員達が結集し、スクラムを組み一気に科学部員たちに突っ込んだ。

 そのパワーは科学部の計算を超えていたようで、部員達をまとめて吹き飛ばし、ついでに出入り口側の壁ごとぶち破った。

 そのパワーの代償は大きかったらしく、風紀委員は委員長を除く全員が倒れ伏していた。彼らの思いを無駄にしないように委員長はすさまじい速度で駆け出し部長を追いかけて行った。


 思わぬ戦いに面食らいながらも芽出井は彼らの後を追った。校門近くで大きな戦闘音が聞こえてくる。

 芽出井が到着したときには2人ともボロボロの状態であった。激しい戦いであったことが分かる。


 そして2人は最後の力を振り絞り駆け出した。


 だが戦闘の負荷に耐えられなかったのか部長のパワードスーツが突如として爆発してしまう。その拍子に薬品の入った瓶が飛び出し地面に咲いていたタンポポに薬品が全てかかってしまった。


 異変が起こった。

 突如としてタンポポが眩しい光を放ち轟音が鳴ったと思ったら東京タワー(タンポポカラー)がそこにあった。

 爆発から立ち直った部長も、そして部長と委員長の戦いを眺めていた周囲の生徒達も思わぬ変化に口をあんぐりと開けて固まっていた。そのすきに部長が委員長に取り押さえられ、復活してきた風紀委員達に反省部屋まで連行されて行った。

 流石の騒ぎに教師陣も駆けつけ、目撃者に事情聴取を行い、生徒達は帰宅となった。




 翌日、学校に着いた芽出井は東京タワー(タンポポカラー)を横目に風紀委員長に事の顛末を聞いた。

「科学部部長が言うには、あの薬品は鋼のようなボディを手に入れるために開発していた試薬だったらしくてな。さすがにあいつもこんな事になるとは思ってもみなかったらしい。今回の騒ぎで科学部は部費を減額、今年度は残り10円でやりくりしろとのお達しだ。迷惑な奴らだ」

 続けて言った。

「流石に学園側もあのタワーをどうしようかで悩んでいるらしい。まあ、そうだろうな。んっ? コラっ!! 貴様ら何をしている!! 命綱なしでタワーをよじ登るな!」


 話している最中に中国武術研究会を筆頭に学園の変人達がタワーを登り始めたらしい。委員長は止めるために駆け出してしまった。

 今回のことをどのように記事にまとめようかと芽出井は頭を悩ませながら委員長の後を追った。




 後日、この東京タワー(タンポポカラー)が空飛ぶサメから学園を守るために人型決戦兵器に改造されることになるとはまだ誰も知らなかった。








中国武術研究会の会長の中華料理は絶品である。


お読みいただきありがとうございました。

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