だって怖かった
こぶしをぐっと握りしめて、布団から出る。
「今日こそは一人で行けるはず」
僕は気合いをいれて、夜の暗闇の中、目的地に向かって歩き出した。
三秒後、
「やっぱり無理!」
だって、怖かった。
夜の廊下が怖かった。
壁にかかってる絵がお化けの絵だったから怖かった。
天井のシミが顔みたいにみえて、すっごくみえて怖かった。
窓の外で野良猫がごそごそしてる音が怖かった。
途中にある、電気が自動的につく場所が心霊現象みたいで怖かった。
洋服掛けが、ひとりでに動き出しそうで怖かった。
夜の家は、暗くなると、なぜか暗くなるだけで、つまり怖いものがいっぱいになるんだよ!
「おねえちゃん、いっしょにトイレいってよ」
「一人で行きなさいよ」
「無理だよ、だって怖かったんだもん!」