表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

お握り屋

芳山教授の日々道楽「お握り屋」


私は、たまに地方へ出張する。

姉妹校での講義だ。

いつもと違う学校、いつもと違う学生、いつもと違う環境で授業をする。

なんて、新鮮なんだ!

なんて、刺激的なんだ!

人間、同じことばかりしてはダメだ、常に変化を求めなくてはいけない。進歩してこそ発展する。

それが文化だ、それが文明の進化だーーー


さて、

今日も無事、講義が終わった。

昼食をとるとするか、

学食へ向かう。

おっ、工事中、

もうすぐ夏休みなので、改装工事を始めたらしい。

まぁ、いい。

コンビニでも探すか、

校門を出る。

この大学、かなり田舎にある。

見渡す限りの田園風景。ヒバリの声、トンビの声、車も走ってない。

のんびりと雲が動く。

のんびりと風が吹く。

のんびりと、時間が動く。

のどかな町だ、

しばらく歩く。

……

無い、

どこを探しても店がない。ましてや、コンビニなどカケラもない。

どうする?

せめて、定食屋はないか。

普通、大学の回りには必ず定食屋がある。学生が食べるからだ。

しかし、ない、

まったくない、

全然ない。

田舎過ぎるのか?

もう、しばらく歩く。

……

あった、

三角形の屋根の店構え、白と黒のツートンカラー、海苔状の屋根。

どっからどう見ても、お握り屋!

よくある地方の面白店。インパクトで客引きをする、いわゆる色もの店だ。この前は、店の上に巨大なアンコウが乗っていた店があった。(眼と提灯が光っている)

地方独自の文化のアピールとも言えるが、ここは、お握りが有名なのか?

まぁ、いい。空腹には代えられない。

看板を見上げる。

おおっ、

「お握りの星」

何だ、

業界のトップを目指す気持ちを表しているのか、関心する。

さて、

そんな心配はさておき、お握りを買おうとするか。

中へ入る。

「いらっしゃいぎり〜」

妙な挨拶だ。ここの方言か?

私は、お握りが好きだ。

コンビニでは、必ずお握りを買う。

特に、梅干し、おかか、欠かせないアイテムだ。日本人ならこの二つに限る。(シャケも)

最近のコンビニには、くだらないお握りが多い。ツナマヨお握り、炭火焼き鳥お握り。

この間は、オムライスお握りというのがあった。

オムライスか、お握りか、どっちかにしたらいいんじゃないのか?豚骨ラーメンお握りには、ひっくり返ったぞ。

日本人だったら、梅干しお握りを食べろ!オカカお握りを食べろ!


梅干しとオカカは日本人の誇りだーーー(二回目)


ハアハアハア、

さて、何にする?

おや、梅干しお握りがない。

店員に聞く。

「すまんが、梅干しお握りはないのか?」

「ありません」

「そうか、では仕方がない。オカカお握りはないか?」

「ないです」

困った。

お品書きを見る。

なぬ!

「新鮮取り立て野菜お握り」

何だ?

「今朝、取り立ての野菜たっぷりお握りです」店員が言う。

野菜たっぷり?

確かに、はみ出すほど野菜がたっぷり入っている。

お握りと野菜、いわゆるサンドイッチ感覚。いいと思うが、今の私は酸っぱい梅干しのような食欲をそそるお握りが食べたい。

他を見る。

「超刺激的ど酸っぱお握り」

何だ?

「酢たっぷりの酢飯で、赤唐辛子千切りをまぶしたレモン果肉入りお握りです」

酢飯、赤唐辛子、

そこで梅干しを入れる発想は浮かばなかったのか、見るからに酸っぱそうだ。

却下。

「もうちょっと、マイルドなお握りはないか?」

「では、これはどうでしょう」

「ミルクカフェオレお握り」

なぬ!

「カフェオレで煮込んだご飯に、具は完熟コーヒー豆、このミルクをかけてお召し上がり下さい」

付属にミルクが付いている。

う〜ん、確かにマイルド。が、極端過ぎる。(汗)

「他には、」

「では、イチゴマンゴーお握り、チョコレートサンデーお握り、トロピカルジューシーお握り、etc…」

デザートか?

ベトナムにココナッツとライスのデザートがあるが、マンゴーやチョコレート入りお握りとは?

ここの人たちは、皆、こんなお握りを食べているのか?ご当地お握りといえ、不思議な食べ物ばかりだ。

端の方に、何かある。

「ショートケーキお握り」

お握りの中に、イチゴのショートケーキが入っている。イチゴと生クリームがはみ出していて、超甘そう。

デザインはいい、見た目も斬新だ。しかし、

美味いのか?クレープか?

とても食べる気にはならない(汗)。

「これ、売れてるのか?」

「はい、学生に一番人気です!」笑顔の店員。

理解できない。主食とデザートは別ものだ。ちょっと未来すぎる、進化し過ぎだ。

「他にはないのか?」

「これは、どうでしょう!」

店員は、奥から一つ、お握りらしいお握りを取り出した。

「お握りinお握り」

お握りの中に、お握りが入っているらしい。

店員に聞く。

「これは、どんなお握りなのかな?」

「当店一押しのお握りです」

「色々な味が楽しめて、オマケもあります」

オマケ?

ちょっと大きくて丸い、全面海苔。形は悪いが、まだ他のお握りよりましだ。

「よし、これをくれ」

「はい、」


店の前のベンチで食べる。

お腹が減っていたので二つ買った。

のどかな田園風景を見ながら、新鮮な空気を吸う。

幼き日の遠足を思い出した。

楽しかった山登り、楽しかったハイキング、美味しかったバナナ、美しき青春の日々を思い出す…

さて、食すとするか。

バリ、袋を開ける。

まず、二つに割ってみよう。中の具が楽しみだ。

なぬ!

薄い皮状のお握りの中に、またお握りがあった。

これが、お握りinお握りか。

仕方がないので表面のお握りを食べる。

モグモグ

美味い、程よい塩味が効いていて味は良い。いいんじゃないのか、

さて、中身は何かな?

バリ、お握りを割る。

なぬ!

また、薄い皮状のお握りの中にお握りが、

何だ、マトリオシカか?

再び、表面のお握りを食べる。

モグモグ

美味い、今度は醤油味だ。醤油の香ばしい香りもする。

店長お薦めのことは解る。

しかし、面倒くさい!

いったい幾つ層になっているんだ?

しかも、一層しか割れない。

何なんだ、

バリ、お握りを割る。

なぬ!

また、お握りの中にお握りが、

今度は、味噌味のお握り。

モグモグ

味はいい。味噌の風味もいい、が、まだか?

いい加減に飽きてきた。

早く、具を食べたい。

バリ、お握りを割る。

今度は、この香り、

カレー味だ!

「味変ですよ」

「わっ、」

店員が、声をかけてきた。

「同じ味だと、飽きてしまいますからね」

「おい君、まだ具が出てこないぞ。なんて面倒くさいお握りなんだ」

「まあまあ、お客様はラッキーですよ。このお握りは滅多に買えない超レアお握りなんですから。お楽しみはこれからです」

「そうなのか、」

「しかも、当たりには素晴らしいプレゼントがあります!」

「プレゼント?」

まあ、いい。

パカ、

最後らしい、

中から、小さなお握りが出てきた。

それを割って見る。

パカ、

小さなフィギュアが入っていた。

カラン、カラン、

店員がベルを鳴らす。

何だ?

「この人形は、この町のゆるキャラです」

「ゆるキャラ?」

「そう、お握り君!」

わーーーっ、

ドンドコドン、ドンドコドン

突然、店の奥から着ぐるみが飛び出してきた。

「おに〜」

「僕は、お握りの星からやって来た。お握りの妖精、お握り君!」

汗、

「お握り、ぎりぎり、ぎ〜りぎり〜♫」

「お握り、ぎりぎり、お握り君♫」

「みんなの友達、お握り君♫」

「遥か宇宙のお握りの星から、みんなを守るためにやって来た……♫」

……

……

私はしばらく、彼らの寸劇に付き合った。

のんびりと雲が動く。

のんびりと風が吹く。

のんびりと、時間が動く。

のどかな町だ、

手に着いている海苔のかけらが乾く。

手に着いているご飯粒が乾く。

疲れた、

お昼の時間は、

とうに過ぎていた…


帰りの電車、

バックを開ける。

お握りが、一つあった。

そうだ、「お握りinお握り」は二つ買ったんだ。

もったいない、食べるとするか。

パカ、

お握りを割る。

中には、


梅干し君フィギュアが入っていた…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ