リザルト
銀二という男が目を覚ました。
すくっと立ち上がると目の前で銃を握って唖然としている俺を見つける。
「う、うわぁあああ・・・!!銃を持ってる!!き、君こんなとこで何をしているんだ!!」
お互い状況がよくわかっていないようだが、先ほどまで銀二だったあの化け物はいなくなってしまったようだ。すぐさまぽっかりと空に向かって開いた穴から階段を人が数人上がってきた。スーツの女が1人とパーカーを来た男、そして看護婦と医者だ。
パーカーの奴は手をポケットに入れたままでかい筒状のものを竹刀のように背負っている。
看護婦と医者が銀二をすぐさま介抱して連れて行くと同時にその筒を背負った男がこちらに向かってくる。
年齢は俺と同じくらいの、髪は栗色のマッシュな、スリムな奴だ。顔はいかにも優男だが女には興味がありませんといいそうなツンケンした表情だ。
そいつが俺の数1メートル半くらい前で止まって、少し沈黙した後こう聞いてきた。
「さっきの奴、お前がやったのか。」
さっきの奴って、あの化け物のことだよな・・・。その場にもいなかったよな。
でもどうやらいろいろと事情を知ってそうな雰囲気だ。
「俺がやった。」
「轟音だったが、どうやった。」
コイツで、と銃を取りだそうとしたが、いつの間にか銃が消えていた。
「銃を使った。多分、この紋章で呼び出したヤツで。今は消えちまった。俺もよくわかんないけど・・・。」
「アイツはA級のデーモンだぞ。なんでお前がそんな奴を倒せる銃を持ってる?しかもあいつらは実体がない。除霊や強烈なエネルギー波がないと消し飛ばせないはずだ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が見えない。デーモンだって?」
話を聞くと、特定の条件下で契約を結んだ人間はデーモンを召喚し、人智を超えた力を使うことができるが、精神力が弱かったり、感情の波に流されやすい人間は逆にデーモンに操られてしまうらしい。あの銀二という男は「ロールバック:ローバス」というデーモンと契約して支配された男だったようだ。
「で?なんでお前がそんな力を持ってる?」
「・・・。」
「答えろ。お前に選択権はない。」
そういうと後ろに背負っていた筒状のものを、かぶさっていた布ごとこちらに向けてきた。
「・・・契約して、眷属になったらしい。」
「何?」
「俺は家族をノスフェラトスの奴らに殺された。その時無理やり契約だとか言って俺の血を吸ったんだよ。そしたらこの紋章ができたりとか銃が出てきたりとか、その話をあのおっさんに話して裏切られてさっきに至るんだよ。」
「自分が眷属だということを軽はずみに口に出すな。命を狙われることになる。」
・・・だから言いたくなかったんじゃねーか。
「どうせ俺も生存者だとか言って騙されたんだろ?あと、数少ない生存者のうちのもう一人はこの僕だ。」
コイツ、こんな顔と口調で一人称が「僕」なのか。しかも生存者だって?
誰に襲われたのか知らないが、コイツも眷属で何かしらの能力があるのか?
おもむろにポケットをまさぐり手帳のようなものを見せてきた。
どうやらIDカードみたいだ。「公安:特別契約」と書いてある。
「僕は公安、対デーモン対策部隊、異端審問官の黒崎面堂だ。」
メンドウ?なんか名前でいじられてそうな響きだな。
公安で、デーモンをなんとかする部隊で、異端審問官・・・。肩書が多いな。
後ろにいたスーツの女が黒崎に近寄る。
「メンドウさん、本部と連絡取れました。状況を報告しろと。」
「りょーおかい。このあと僕が直接伝える。おい、お前名前は?」
「榊凪斗。俺はどうなるんだ?」
「保護される。しかし眷属であるなら監禁されるか、俺みたいに公安の協力者になってもらうかもしれない。」
話を聞くと、公安に入るのではなく、形式上は協力者という形で行動することになるらしい。なんでも公安に入ってしまうと、公的に結んでない契約での異能力を使うことは許されないためだとか。そんなんで公安が務まるんだろうかとか、契約するにあたって公的とかあるのかとかいろいろ疑問はあるが、どうしようもないのでこの場は従うことにした。
「そうだ、お前さっき言ってた銃見せてみろ。紋章に意識を向けて構えればだせるはずだ。」
思い出したかのように黒崎が聞く。
紋章に意識を向けると、微量な光を出してジリジリと熱くなってきた。
そのまま手をかざすと、あの銃がビュンと出てきた。
「うわ、ほんとに出た。」
「!?おい、その銃・・・。」
黒崎が半ば無理やり銃をつかんで刻印を眺める。
「なんでお前がじーさんの銃を持ってる?」
じーさん?また知らない情報が出てきた。