超口径
ヨロヨロと立ち上がると、あの化身は"死刑宣告"をする。
「よかったな。お前はたった今、この俺の復讐と鬱憤晴らしのために痛みつけて、苦しんで殺されることになった。」
身勝手で利己的な吐き気を催す観点でものを語る化身ではなく、少し空を目であおいで言葉を発する。
「復讐か。この場合だととばっちりになんじゃねーのか・・・?」
「お前はシャーロットの眷属だ。部下がしっかり上司の分までズタズタにされねーとな。」
「そうかよ。」
紋章が光る右手を前に出す。
瞬間、バシン!!と音をたてて火花とともに武器が現れる。
あの銃だ。キヲクの引き出し倉庫で見た銃。
手に取って初めてわかった。軽い。軽いのに材質は重量感がある。
不思議な銃器だった。
右手でとった銃に左手を添えて狙いを合わせる。
「カキン。」
撃鉄を降ろした。しかし、訪れるのは妙な静寂。
何か変だ。
「カキン。カキン。カキン。」
この現象は知っている。FPSをやったことがある人なら誰でも、いやそうでなくてもこの現象は説明できる。
"弾切れ"だ。
おいおいウソだろ・・・。もうやってしまえという雰囲気だったじゃないか。
そうしてるうちに胴体にもう一発強烈なラリアットをくらう。
ドゴォ。ドタッ!!
「ぐあぁ・・・。」
鈍い音がする。
「なんだなんだ?眷属らしく抵抗する手段を呼び出してきたと思ったらとんだ拍子抜けだったな。銃を出せても弾がでなきゃ意味がないんだぜ?」
どうなってんだ?とヤツに目を向けると、あのモヤが見えた。しかし、明らかにほかの人間と違ったように見えた。ほかの人間は白色に見えたが、コイツは真っ赤だ。
それを見た瞬間、銃のシリンダーがガコッと開いた。何だ?銃のグリップを握ってはいるが、シリンダーには触れていない。にもかかわらず、シリンダーが自動で排出して回転している。
ギリリリリリとネジを回すような音が響く。
すると、右手に持つ銃の飛び出たシリンダーの弾丸部分から数センチ離れたところに、光の弾が6つ静止していた。その弾はシリンダーに自動で、順番よく、素早く入り込む。
スチャチャチャチャチャチャ。
すべての弾が入ると同時にハンマーがジリリと音をたてて起こされると同時にシリンダーが1/6ほど回転する。その動作が終わると同時に、レバーが「SIN」の位置にガチ!っと切り替わる。
あとは撃つだけだ。
俺は素早く正確に、奴からもらったダメージをこらえながら銃身を奴に向ける。
「ハッ!!その銃すら握れなくなるくらいまで骨を粉砕してブチ殺してやるぜえええええ!!!」
奴が突進してくる。ダンプカーの突進のようなあの一撃を食らえば即死だろう。
俺は息を少しだけ吸って、止めて、引き金を引いた。撃鉄が一瞬で動く。
その瞬間、俺の体は再度吹っ飛んだ。真後ろに。
バキィイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!
という金属音の混じった発射音とほぼ同時くらいで
ドガァ!!ガラガラガラガラガラ
と奴の後ろにあった屋上への入り口のコンクリートがはじけて崩れた。
あまりの威力に吹っ飛んだ俺のからだは、最初に吹き飛ばされたときと同様フェンスに当たり、その場に崩れ落ちた。
「なんだこりゃ。50口径どこじゃないだろ・・・。」
そして自分が殺ってしまった化け物に目をやる。
しまった!!こんな威力では体すら残らないんじゃあ・・・。
するとそこには少し顔色をよくした銀二という男が意識を失ったまま倒れていた。
まるで弾丸や砲弾なんて飛んでこなかったように。