病院にて
黒崎に電話をした。
伊藤君を病院に連れて、容体を確認中に待ち時間があるので連絡を済ませて置こうと思ったのだ。
端的に、長島和成という男に襲われたけど、友達(?)になったこと。
長島にも能力があるということ。
シャーロットと関係する事件が多すぎること。
そう、直近で起きていることはほぼ100%といっていいほど
シャーロットが絡んでいる。
あの吸血鬼・・・。なんのために姿をくらましているのか。
これでは俺にヒントを与えているようなものだ。
いや、ヒントにしたって多すぎる。
「伊藤君、特に問題ないみたいよ。もし状態が悪くなったらすぐに再診を受けるようにだって。」
茶花がいつも通り冷静に医師からの診断を告げる。
それでも内心ホッとしているように見える。
「いやいや、安心したよぉ~。君たちの友達は僕の友達だからね。」
長島が他人事のように語るので茶花はキっと長島をにらみつける。
「おいおいやめてくれよ~茶花さぁ~ん。ボクだって半分は操られてたんだぜぇ~?」
「ってことは、半分はアナタの意志でもあったということね。」
「いやぁ~参ったなぁ~。まぁお詫びに飯尾くんにはメロンでも買ってきてあげるさ。」
長島という男、当然のように人の名前を間違える。
「彼は伊藤くんだよ。それ以下でもそれ以上でも、それ以外でもない。」
俺は落ち着いて答えた。
本題というか、まだ長島からシャーロットに関する情報を得てない。
茶花が家へ連絡を入れてる合間に長島から話を聞く。
「長島、俺がシャーロットと契約してるのが分かったって言ってたよな。」
あぁ、と長島は答える。
「シャーロットのことはどこで知ったんだ?」
「知ったも何も本人に会ったんだよ。」
やはり予想通りだった。
まるで好きな人に自分の人脈を使ってすり寄っていくような、
まわりくどいやり方で俺に自分に近づけるよう誘導している。
今ここで奴から電話がかかってくるようなことがあれば
「お、予定通り長島とは会ったようだな。キッシッシ!ボクってば戦略家だなぁ!」
とか言うに違いない。
「で、他に何か言ってたか?」
「いや、よくわからんが大学の帰り道に彼女と出会って、そのとき、君に会って『自分に甘いニンゲンには気を付けな』と伝えろとか言ってたな。ボクも君が能力者だっていうから興味を持ったんだけど。」
ずいぶんあっさり奴の要求を呑むんだな。警戒心が薄いのか?
そのまま長島は続ける。
「で、もっと君のことについて知りたかったんだけど、そこであの妙な女とデーモンに襲われたんだ。」
「女とデーモン?」
「そう、髪はショートでボブ。体のところどころに包帯が巻いてあって、ものすごい力で金属バット振り回して来やがった。僕の能力でいち早くアイツが能力者と気づいたんだが、時すでに遅し。デーモンのほうから術を掛けられて、あとは君たちの知る通りさ。」
人がデーモンを使役していた。あるいはデーモンのほうにその女が操られていたのか?
コイツも怒りとか感情を操作されてたみたいだし。
「その女の能力はなんだったんだ?」
「いや、能力の種類まではわからない。ボクの能力は、能力を持っているかどうかまでだからね。」
使えねぇ!!!!マジで!!!!
ほぼ意味ねーじゃん!!
近く通り過ぎてうわ!この人持ってる・・・ってなるだけじゃん!!
だが、コイツがそんなことお構いなしに能力者に不用心に近づくのは容易に想像がついた。
「ただその女が”妙”だったのは、横にいたデーモンと契約が結ばれてないってことだ。」
デーモンは自らを召喚した相手と契約し、力を与える。
本人の精神力がデーモンの力に対して脆弱ではデーモンに支配権を乗っ取られてしまう。
だけどその女の場合はそもそも契約が結ばれていないってことか。
「坂上くんも奴には気を付けるんだ。せっかくできた最強のパートナーをすぐに失いたくないからね。」
「パートナーなら名前くらい覚えろ、サカキだサカキ。サカキナギト!」
そうしてその日は長島と連絡先を交換して帰ることになった。
閑静な住宅地を抜ける。そのとき、自分がある存在に監視されてることに気づかなかった。
「絶対守るからね。榊先輩・・・。」
電柱の上で器用に立つ、右手に金属バットを持った少女だった。




