能力者
俺たちは教授と話して得た情報をノートにまとめて研究室のある建物から出る。
時刻は17:30を回ったくらいだろうか?
空はもう暗くなり始めていて、残った太陽の光が雲に少し反射して赤くなっている。
「榊くんはいつもどおり歩き?それとも自転車かしら?」
僕はバスだよ。と伊藤くんが答える。
「伊藤くんに聞いたつもりではないんですが・・・。榊くん、もしよかったらこのあと私の」
「わ・た・しのォ~??」
突然視界外から挑発したような声が響いた。
視線を向けると、そこにはうなだれながらこちらに歩いてくる男子生徒の姿。
コイツ、大学なのに学ランを着ているぞ?
しかも、上半身は学ランだけど、下半身には別の学校の灰色のブレザーのズボンだけを着ているような・・・。髪は黒色の直毛で比較的短髪でヤクザの下っ端のチンピラのような髪型だった。
とにかく人目みて、不格好だ。と感じた。
「わたしの家でぇ~~??もしかしてエッチなこととかしちゃうんですか~~?茶花さぁ~ん?」
男子生徒が目をぐりんと上に向けながらダミ声で聞く。
「和成くん・・・。あなたどうしてこんな時間まで。」
「茶花、この人知り合いなのか?」
俺は二人の関係を聞いた。
「えぇ、長島和成君。高校から一緒なんだけどそこまでは仲良くないわ。」
「ひどいなぁ~茶花さん。この俺とあんなことまでしたってのにぃ~?」
俺はチラリと茶花を見る。茶花はこちらに目を合わせて首を振る。
伊藤君はコイツに引いてるのか口を開こうとせずにこちらや向こうに視線を泳がせている。
「おいおい~この俺というものがありながらそんな変な髪型の奴と付き合ってんのかよぉ~?ひどいな~アンビリィイイイバボォだよォ!!」
コイツ、薬でもヤってんのか?テンションがあきらかにおかしい。普段からこうなのだとしたらいささか目立ちそうなものだが・・・。つーか変な髪型とか言われてムカつくな。
「しかもその変な髪型のサカモトとか言う奴・・・。」
榊だよ。間違えんなよ。コイツの名前も覚えたくないけど。
「"契約者"だよナァ?」
何・・・!?コイツ俺が契約者と見抜いたのか?
どうやって・・・。腕の紋章は消えてるはずなのに。何か"そういう"オーラみたいなものが見えるのか?
理由はわからないが、とにかく下手をするとこの場にいる全員を面倒事に巻き込みかねない。
いや、すでに巻き込まれているといった方が正しいのかもしれない。
「契約者?何と契約するんだ?がん保険か?」
イチかバチかだけど、吉とでるか凶と出るかだけど、カマをかけてみる。
「ナァおい、ヘイcome on~。頼むぜェ。分かってんだろぉ?いや俺にはわかってる。オマエ、あのシャーロットとか言う吸血鬼の契約者だろぉ。プンプンするぜぇ奴のニオイがよォ。」
コイツ、この長島という男。契約者である以上に、"誰"と契約を結んだかまで判別できるのか・・・!
「榊くん、教授と話していたときの様子を見て思ったけど、やっぱりアナタ・・・。」
くそっ・・・。こっちにも察しがいい奴がいる。
どうする。もう誤魔化せる空気でもない。
身動きが取れなくなっているが、その時伊藤君が口を開いた。
いや、開いてくれた。
「あの、僕多分何にも関係ないと思うんで帰ってもいいですよね。」
そそくさと帰ろうとしているが、その方がありがたい。
このまま何も知らずに忘れて帰ってくれたほうがありがたい。
1人でも面倒事に巻き込みたくない。
その時俺は、面倒事ならあのマッシュ栗頭優男メンドウくんに全部押し付けて置きたいなどと頭の片隅で考えた。
しかし、長島はそうはさせなかった。
「おいおい普通の髪型の君ぃ~。そうはいかないぜ。君もこのお友達のお仲間で、茶花さんの家でイチャコラするつもりだったんだろ~がよぉ?だから俺言ったよな。今、そうはいかないってよォ!!」
突如、長島が何かを投げつけるような仕草をすると、触れてもないのに伊藤君の体が後ろに吹っ飛んだ。
「うわぁッ!」
ドサッ!という音とともに数メートル吹き飛ばされた伊藤君がその場に倒れこんで呻き声をあげる。
「伊藤君!」
茶花が伊藤君に駆け寄ろうとするが、長島はそれを制止させる。
「おっとぉ~だめですよちゃんばなさぁ~ん。この俺が話があるのは君たち二人なんだからねェ。」
ニィっと不敵な笑みを浮かべる長島。
「和成くん。アナタ目的はなんなの?こんなことして。」
「君たちが仲良く森川教授の研究室に入っていくのが見えてねェ。すごい疎外感だったよォ。高校の時からの付き合いなのにこの俺を差し置いてよォ。」
コイツ、ストーカーか何かなのか?考え方が随分と自己中心的だ・・・。しかも短絡的で怒りのキッカケも浅すぎる。もうすっかり陽は落ち、あたりの外灯に明かりが灯り始める。
「しかもそのつるんでる相手が契約者さんなんてなァ。やっぱり女ってのは特別なものに惹かれるのかねぇ。」
「さっきも言ってたけど、その契約者というのは何のことなの?榊くんが?」
俺はだんまりを決め込む。
「そう、そのサカグチって奴はあの技術革新集団プラネット・キャンベルのご令嬢吸血鬼、シャーロット・ヴィンセントの力を使役できるってわけだ。」
シャーロットがプラネット・キャンベルの令嬢だって・・・!?
プラネットキャンベルは確かISS(国際宇宙ステーション)の管理もしている開拓事業を推進している技術者集団・・・。そんな大企業の中枢に奴らがいるなんて。
しかもそんな大それた情報をコイツが握っていて、こんなに早くたどり着くことになるなんて虫が良すぎる。でも、この俺の名前を一向に覚えようとしない奇抜ファッションな長島という男がウソをついているようには見えない・・・。
「じゃあ、榊くんが何かしらの力を持っていたとして、私たちをどうするというの?あなたには何の関係もないわ。」
「ボコしにかかるんだよ!!クソイラつくからなァ!」
また先ほどのように長島の腕が空を切り振り下ろされる。
マズい!と思いココロウガチを召喚して防御するが、相手のパワーに押し負ける。
防御はできたものの後ろへ吹き飛ばされる。
ドサ!という音と共に倒れこむ。
「榊くん!」
茶花が心配そうにこちらに叫ぶ。
「和成くん、もうやめて!アナタ変よ!どうしてこんな人を傷つけるようなこと・・・。それに怒ってる理由がさっきから曖昧すぎる!」
「茶花さんは少し黙っててくれるかな。へえ、それが君の"力"か。ムシャクシャするねェ。」
そのとき、長島の姿と重なった白いモヤが揺れ動く様子を見た。
あのときと同じだ。目を覚ました病院のときと。
コイツも、デーモンに使役されている。




