森川教授の資料
大学の研究室は中央棟の2階に位置しており、
それぞれ教授の特色が見て取れる。
ズラリと並んでいるが意外にもの静かだ。
アゲハと合流して教授の森川教授の部屋を目指すと、反対の廊下から伊藤君が現れた。
「お、凪さん。お疲れ様でっす!」
軽く敬礼のようなポーズを取りながら若干よそよそしく挨拶をする伊藤君。
コイツ、俺と同い年なのになんでいつも敬語なんだ?
「伊藤君、君はついでだから。」
茶花が表情を何一つ変えないまま伊藤君に事実を突きつける。
「えぇ~ひどいよ茶花さん。この前マイルドスピード貸してあげたじゃないですか。」
伊藤君も大して傷ついてない様子だ。
「で、凪さんは何をしに来たんです?」
「え?聞いてないの?記憶とか心に関する物質を調べに来たんだよ。」
「あぁ~だからあの真面目な森川先生なのね。」
コンコン。と茶花は一人我先にと研究室へ入ろうとする。
「はぁい。」
ハスキーで高めの声が、扉で遮断されて若干こもって聞こえる。
ガチャリ、失礼します。と伊藤君が効果音まで声に出して入る。
「おぉ榊くんに茶花さん。伊藤君もか。」
「えなんか僕オマケになってません?」
「いやはやよく来たね。座りなさい。
記憶に関する物質だったね。紅茶を出そうか。」
森川教授が手慣れた手つきで紅茶を入れる。
「それでぇ調べたいのはいいんだが残念だけどまだ確認されたばかりでね。名前すら決まってないのだよ。」
森川教授が背を向けたまま話す。
「そうなんですね。教授、ちなみにその物質どんなことがわかってるんですか?」
俺は自分の持つココロウガチの能力を知ってるが故に、一般に出回っている情報がどれだけのものか知りたい。単純に、この能力もどんな制約があるかハッキリしていない部分もある。
「単純に言うとねーんぅーダークマターにより近いものだよ。」
「「ダークマターに?」」
茶花とハモりながら驚いて返答する。
「え?ダークマターってなんですか?」
伊藤君はまぁ宇宙も好きではないし、すこぶる博識でもないからわからないか。
「伊藤君はやはり愚民の民でしたか、ちなみに愚民の民だと二重言葉で正しくないのですよ。頭痛で頭が痛いみたいに。」
冷静な表情でアゲハが伊藤君を小ばかにする。
「茶花せんせーおしえてくださいよぉ。」
「ダークマターは宇宙の物質の85%以上を占めていて、人には観測できないものです。見れもしないし、触れもできないけど『重力』だけはある。」
「へーすごいっすね。」
多分コイツ、30秒後にはこの知識忘れてんだろうな。とすぐさま感じれるほどに興味がなさそうだ。
「先生、今の説明の中にそのキヲクを奪う物質と共通している部分はありますか?」
「ぬぅーそうだね~観測できはする。だけどそれが妙なところでね。物質といっても物体や分子がそこにあるわけじゃあないんだ。脳波とか電磁波とかに近いかな。」
電磁波?俺の銃からビームでも出てたのか?それにしてはあのデーモンを吹き飛ばした時、凄まじい威力で後ろの外壁までぶっ飛んでたけど・・・。
「まぁK大の溝口先生に資料をもらってきたからね。それを貸してあげるよ。」
森川教授が本棚に手を伸ばす。しかし、すぐに手を止める。
「あぁ~しまった。あの資料は貸してしまったんだった。」
え?と一同は口を揃える。
「貸したって誰にですか?」
「この前ご来賓なさった令嬢、シャーロット・ヴィンセントさんって方なんだよ。」
なんだって・・・!
あの、クソ吸血鬼が!?




