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ココロウガチ -追憶の二律背反-  作者: 凪雨タクヤ
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銃の行方

街の大通りを外れて少しした川沿いにその銃器技師の家はあった。

途中で黒崎に電話のことを聞かれたが、親族からとウソをついた。メンドウなことになるという予想もあるし、まだこの黒崎という人間が信用できるかわからない。


看板などはかかっていない。さすがに今のこの国で銃器を扱うともなれば大々的に民間に売買はできないのだろう。少し小さな工場のような光の漏れる屋根を超えた先に鍛冶場のような空間があり、髭を伸ばした老父が作業をしている。


ウィイイインという機械音が鳴り響く中、黒崎が叫ぶ。

「おおおおおい!!爺さん!!僕だ!!黒崎だ!!おおおおい!!」


大きな声を出しても埒が明かないので、作業をしている”爺さん”の右肩をトンと弾く。

弾いた右手はそのままの速度で弧を描く。


「おおおお~メンドウくんかぁ~さっきの電話の件だな。というとこの人たちが。」

「そうだよ、あんたが作った銃を持ってる。これはあんたへの尋問でもあるんだ。」

そういうメンドウくんの顔は少し申し訳なさそうだ。

「またまたぁ~メンドウくんは優しいからなぁ~。」

”爺さん”はこちらをすっと向いて笑顔を見せる。孫を見るかのような目だ。

「さぁさぁゆっくりしてって!お~い!和香のどか!お客さんにお茶をだしてくれぇい。」


すると部屋の奥から黒い三つ編みで、顔の1/3もあるかのような眼鏡をした女子高生くらいの女が出てきた。目の下にクマができていて、おばあちゃんが着てそうなちゃんちゃんこを羽織っている。中に着てるのは部屋着みたいだ。


「ふぇええ~~?なんでようぅ・・・おじいちゃん。私、人付き合い苦手だっていってるじゃん~。」

「何、ハンサム顔の好青年が二人も来たんだぞ?お前の将来の旦那になる可能性だってあるだろうが!ガッハッハ!」

このおじいさんはどうも調子がいい性格みたいだが、この年まで元気なら頼れる人なんだろうと直感的に感じた。和香と言われた少女は、えーと、どうもと軽く会釈をしながらよそよそしくお茶を出してきた。S県産のおいしいお茶みたいだ。喉が渇いていたので頂戴すると、ほのかな苦みが喉を潤した。


「で、メンドーくん。電話で聞いていたこの榊くんっちゅう子が俺の作った銃を持っているって話だろう?」

そうだと面堂は続ける。

「僕ら公安に隠してるようなことがあればアンタは終わりだぞ。」

「ハッハッハ!お前さんにはそんな非情なことはできんことは知っとるけどな!」

煤まみれのグローブのまま片手でお茶をずずっとすすりながら爺さんは答える。

「確かにちょいと前にある企業の遣いだというものに銃を渡した。お前さんの持ってるSH-50DとSH-44Bだな。」


SH-50D、型式番号ということだろう。どうやらこの型式にも使われているスラングハンマーという名前は、一部の人しか使っていない=スラング 撃鉄=ハンマーという意味らしい。武器商人という立場ではあるので自分の本名はあまり表に出さずに活動しているとか。


「まぁ型式だと呼びづらいからな。ココロウガチとキヲクウガチと呼んどるが。」

俺の能力の方はこころを穿つ方、というともう一丁はキヲクを奪うということか。

どちらも恐ろしい能力だが、それをこんな陽気な人が作ってるなんて少し現実味がない。


「なるほど、わかりやすい名前だな。じーさん、その2丁を渡した企業ってのはどいつなんだ?」

「ツバキだ。」

そこまで聞くとメンドウはその名の通りメンドくさそうな顔をする。

やってくれたな、と彼は言う。


ツバキというと、シャーロットとの電話に出てきたあの会社だ。

俺は1か月後にその企業の株主総会に出て、そこでシャーロットと決着をつける、という筋書きだ。

「超一流企業の上層部やらに何かしら息がかかってるってことだ。じーさん、そういう情報は早く言ってくれ。」

「顧客の情報をそうやすやすと渡すわけにはいかん。ホントはこれだって言おうかなーどーしよっかなーと思ってたとこだぞ?」

ニヤつきながら眉毛をピクピク動かしてメンドーをおちょくる。

「まぁだが現時点でツバキ社に敵がいると決まったわけじゃあない。僕たちで調査して問題がないか調べる。もう一丁の銃も回収する。それが任務だ。」


メンドウが話す。ん?少しおかしいぞ?僕たち?

あの・・・。と和香が口を開く。

「榊さんも公安なんですか?」

「いや、俺は・・。」

「たった今から公安だ。」

「は・・・?」

「だから言っただろう。さっき本部に連絡して許可をもらった。眷属で・能力を持ってて・体力のある大学生。すんなり許可が下りたよ。」

大変なことに巻き込まれてしまった。いやすでに巻き込まれてはいるんだけど。

展開があまりにも早すぎる。第一俺の意志は無視かよ!?


「ちょっと待て、俺は公安に入るなんて一言も言ってないぞ?」

「お前に選択肢はない、病院にいてもデーモンやらほかの異能力者やノスフェラトスに狙われるのは見えてる。それにあんな高威力の銃を所持した男子学生を放っておけるわけないだろ。」

こうして理由を並べてみるとなるほど選択肢はなさそうだと納得できるが、せめて本人の意志を聞くくらいの酌量の余地があってもいいじゃあないか。


ともかく俺は公安の異端審問官にならなければいけないらしい。

ウザ。



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