「姫」と「騎士」
俺は幼くして姫によって騎士に任命された。
騎士に憧れていたし、父が近衛騎士だった伝手もあったが故の縁だが、姫の命を守る為にとても厳しい修行を毎日のように熟す日々は文字通り地に汗握るものだった。
だが、それは所詮過去の苦しみ。乗り越えてしまえば大したことのない過去の一片となる。
「ねえ、騎士。私には夢があるの」
「はっ」
「この国の貧困層の人達を助けてあげたい。理想だけじゃなくて現実的な形でね」
「それは――とても素晴らしいことだと思います」
「だって私は国王の娘だもの、それができる地位にいるのだから、権利は行使するべきよね?」
「はははっ、全くその通りだと思います」
姫様も王女として幼い頃から英才教育を施され、今では知性に溢れ賢く慈悲深い方に成長なされた。
当時から俺と姫様は関わりが深かったので、その成長も一際強く実感できる。
それは俺もそうだし、姫様からしてもそうなのだろうと思う。
「まずはディナーの後にでもお父様にお話をつけませんとね」
姫様はまず初めに父である国王から自由に使える資金を調達した。
そしてその資金を元手に結婚等様々な理由で退職した元官僚達を雇入れ、仕事の斡旋所を設立した。
俺が護衛に入ることで、実際に斡旋所に何度も足を運んだり、紹介されている仕事の審査も不正や不適切なものがないかその足で確認した。
物乞いや残飯を漁って生きているような人達を集め、仕事をして人生を立て直す意志のある者を救済していった。
最初は貴族のお遊びかと遠巻きに見ていた貧困層の人達も、次第に今より良い仕事や給料を求めて斡旋所に足を運ぶようになった。
結果的に国全体の治安が改善され、清掃などの業務によって衛生面も良くなり疫病などの発症も格段に抑えられることになった。国王様は姫様を褒め称えたし、貴族連中もそんなメリットがあるならと自領地でもやってほしいと次々に依頼がやってくるようになった。
「ふふ、大成功ね」
「ええ、これが姫様の夢だったのですか?」
「正確には夢の一つ、ね 他にも私にできることはあるわ」
次に姫様は何を言い出すのだろうか。
俺は彼女の騎士として居られることに心から誇りに思った。