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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第五章 夏休みがこんなに楽しい
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彼は釈放される

 くわぁ


 オレは自分のベッドの上で目を覚ました。お勤めを終えたオレたちは無事シャバへと戻ってきた。勉強合宿は当然だが本当に何も特別なことは起きなかった。誰かが山の中に入り迷子になることも、女子の部屋へ向かおうと男子が先生たちと激闘を繰り広げることもなく、合宿は終了した。オレたちが手に入れたものといえばわずかな学力の向上だけ。くそぉ、こんなものを手に入れてオレにどうしろというのか……。


 時計を見ると、もう昼の11時だった。昨日は勉強合宿の反動で夜更かししてしまったからな。仕方ないな。


 オレはぼさぼさの頭を掻きながらリビングへと向かった。


 「あ、宗介。おはよう~」


 「おそいわよ。あんたの朝ごはん無いからね」


 「うい、おはよう」


 すごいな母さん。オレがこの時間まで寝ているのを予想して朝食を作ってないなんて。そしてこの時期も仕事をする両親に敬礼。


 「麦茶いる人~」


 「「はーい」」


 オレは麦茶をコップに注ぐとテレビの前の華恋と姉ちゃんの元へ向かった。


 華恋と姉ちゃんはテレビでレースゲームをしていた。姉ちゃんは紫の色のおじさんを、華恋はピンク色のキノコでプレイしている。ちなみにオレがよく使うのは、銀河のお姫様。金髪碧眼目隠れ美少女とか最高だろ。キャラの性能?そんなん知らん。


 オレはテーブルに麦茶を置くと、ソファーに深く座り込む。


 「うにー」


 華恋はハンドルを持ち、体を左右に曲げながらコーナリングしていく。体を曲げる意味はほぼない。でも可愛いから良し。


 姉ちゃんは手元も見ずに真剣に画面を見ながらプレイしている。二人以外はCPUだが、姉ちゃんはぶっちぎりの一位。華恋は普通に最下位だった。


 「あーおしいー」


 そうだね。最後に壁に向かって加速し続けなければ勝てたね。


 「宗介も一緒にやる?」


 「やる。姉ちゃんリモコンとって」


 「ほらよ」


 どうも。でも投げ渡す速度速くないですか?オレはキャラを選んで、レースに参加する。


 「そういえば宗介、髪伸びてきたな。伸ばしているのか?」


 「別に伸ばしているわけじゃないな。ただ切ってないだけだ」


 「そうなのか?会った時とはだいぶ印象が変わってきたけど……」


 「そうか?基本的にオレは髪を洗ったり乾かしたりする時間のめんどくささが、床屋にいくめんどくささを上回ったら、髪を切りに行くようにしてるだけだ」


 そうしてスポーツ刈りぐらいまで切ってしまう。何故だかわからないが、床屋で髪を切っている時間が苦手なのだ。あそこまで何もできない時間も珍しいと思うんだよ。そのため美容室ではなく床屋に行っている。なんか美容室のほうが時間かかりそうだし。床屋の方が安いし。いや、待てよ。美容室に行くといってお金を貰い、床屋に行ったら差額を手に入れられるのではないか。オレって天才かもしれん。


 「へーそうなのかー」


 「あんた、母さんのおかげで顔はそこそこなんだから、もっと髪とか服とかちゃんとすればいいのに。そうすればモテるわよ」


 「そんなに褒められると照れる」


 「違うわ。髪型と服装がダサいと言ったのよ」


 「顔は褒めてたよねぇ!」


 というかさらっと母さんだけのおかげにするな。父さんの顔に何の文句があるというんだ。きっと若いころは整っていたんだよ。知らんけど。今は……味わい深い顔をしてるよ。ついでに味わい深い臭いもしている。オレも将来ああなるのかと思うと悲しくなる。悲しくなるって言っちゃたよ。救いがあるとすれば、父さんや両祖父は髪はふさふさだということか。どうやら禿げる心配はないらしい。


 「大丈夫だぞ!私は宗介の髪型も服装もかっこいいと思うぞ!」


 「華恋……」


 「華恋ちゃんダメよ。甘やかしても宗介の為にならないわ。ダサいわよね?」


 「おいこら、人の好みにケチをつけるんじゃない」


 「宗介のため……」


 「華恋さん!?」


 何を言いたそうにしているんですか!?オレの着ているTシャツをチラチラ見ながら、何を考えているんですか!?


 ダサくないよ!このTシャツは。オシャレTシャツだよ。Tシャツに大きくファッションリーダーって書いてあるという、もはやファッションリーダーにしか着ることのできないTシャツだから。


 「じゃあ華恋ちゃん。いつもの宗介と女装している宗介。どっちがオシャレだと思う」


 「女装!」


 「ほらね」


 「くそぉ!」


 「あ、えっと、違うんだ宗介!だってだって女の子の時の方がオシャレだから!」


 「なんで改めて言い直したの?」


 違わないじゃーん。弁解してくれるのかと思ったら追い打ちだったぜ。


 「だ、大丈夫だぞ宗介!私も髪型とか服装とか全部お姉ちゃんに決めてもらっているから!」


 もうオレがダサいかどうかには言及しないのね。嘘をつけない華恋もいいと思います。


 「へぇ。華恋ちゃんのお姉ちゃんが……シスコンのお姉ちゃんよね。センスあるわね」


 「というか髪型も神楽坂さんが決めてるんだ」


 「うん、お姉ちゃんが切ってくれるんだ」


 「え?髪型を決めるってそういう」


 てっきり、美容師さんにどういう髪型がいいか頼んでいるんだと思った。そうではなく神楽坂さんが切ってるのか。華恋のことになると、相変わらずあの人はこちらの想像を超えてくるな。素人目だが、華恋の髪を見ても全然違和感を覚えない。綺麗に整っている。


 そうか。神楽坂さんが華恋の髪をねぇ。


 ……切った髪はちゃんと捨ててるんだろうな?ははは、まさかね。流石の神楽坂さんでも髪はいらないだろうな、うん。


 オレはヤンデレシスコン+髪の毛という最悪の式から目をそらして、ゲームに集中する。


 そんな中でオレのことをチラチラと見てくる。は!Tシャツか!Tシャツを見てるのか!そんなにダサいのか。


 「宗介はさ。どんな髪型が好きなんだ」


 「オレか?オレはさっきも言った通り特にこだわりがないか」


 「バカ弟。女の子の髪型に決まってるでしょ」


 決まってんの?しかし女の子の髪型か……。


 黒髪ロングは清楚系でクール系でヒロインの王道って感じでいいよね。でも他の色のロングも嫌いなわけじゃないんだよな。というかむしろ好き?金髪ロングだとなんかお嬢様キャラとかツンデレとかにぴったりな感じで良きだし、茶髪ロングなんかもちょっと大人っぽいヒロインとかと合わせると抜群にいいんだよね。普通の髪色じゃないロングとかもよくあるけど、神秘的な雰囲気を醸し出してて可愛い。でもこれで別にショートが好きじゃないかと言われるとそうでもないんだな。ボーイッシュな髪形でそのヒロインの活発さが現れていてすごく良いと思うし。それで髪を伸ばしたりしたら、もうそのギャップの破壊力と言ったら凄まじいものがあるよね。あとはやっぱり忘れてはいけないのはツインテール。あんまり現実では見ない髪形だね。一見可愛い系のヒロインにしか似合わないと思われがちだけど、ツインテールっていうのは魔法の髪形でどんなヒロインにも似合うんだよね。大人っぽいヒロインの髪形をツインテールにしたところを想像してみて。そうだね顔は当然照れ顔だね。はい、可愛い。ツインテールの対抗馬といえばポニーテールかな。馬だけにね。はは。ポニーテールは勝気なヒロインっぽいよね。後は何か武道を嗜んでいそうだよね。おしゃれなんて興味ない感じだけど、髪を伸ばしてシュシュを使ってしっかりポニーテールにしている。もうこれはあれだね可愛いもの好き確定だね。本当にありがとうございます。他にも色々な髪型があって、たくさんのヒロインがいる。果たしてヒロインがいるから髪型あるのか、髪型があるからヒロインがいるのか。そんなことは神にもわからないけど。言えることは一つだけある。


 「結局、その時の推しで変わる」


 髪型でキャラを好きになるのはなく、好きになったキャラの全部が好きになるのだ。


 「おし?流行とかそういう意味か?」


 「間違ってはいない」


 「あんた、現実と虚構をごちゃまぜにするのやめなー」


 失礼な!ちゃんとわかってるわ!しっかり現実でありえることとフィクション的な表現を精査しているわ!


 なお、ゲームは執拗に姉ちゃんからの妨害を受けたため、10位華恋、11位姉ちゃん、12位オレであった。姉ちゃん。何の意味があってそんなことをするんだ……!


 ええい、華恋ハイタッチするんじゃない!まさか君らグルか!チーミングだ!全くゲーマーの風上にをおけんな。





 「流行かぁ……」


 「華恋ちゃん。あれはあいつの戯言だから気にしなくていいわ。本当のあいつの好きな髪形はね……」



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