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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
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彼はまたメイド服に袖を通す

 さてオレは家庭科部の部室につくと、手慣れた感じでメイド服に着替え、お化粧もして準備が完了する。すごい早さだ。自分が怖い。ここまで早く化けれるなんてもしかしたらオレには怪盗のセンスがあるのかもしれない。でも怪盗といえば特殊メイクの方がイメージが強いか。特殊メイク……まだ学んだことなかったな。今度挑戦してみるのもいいかもしれない。オレもかっこよく自分の顔のマスクを剥ぎ取るシーンをやりたい!


 準備を終わらせ、家庭科部が出店している隣の教室に入る。そこには今の時間がシフトらしい柿沢先輩と森川先輩がいた。森川先輩はずっとここにいるのかな?探す手間が省けていいけども。


 柿沢先輩がオレに気づいて話しかけてくる。


 「あれ?くさかべっち、おはよう。この時間に来るのはぶちょーって聞いたけど?」


 「忙しいそうなので代わりました」


 「そうなんだ。それにしても相変わらずそういう格好も似合ってるね!」


 「ええ、先輩も似合ってますよメイド服」


 「やだ、もう。そんなに見え見えのお世辞なんて言っちゃってー褒めて何にもでないよーもうこれぐらいしかでない」


 「先輩、お札をしまってください」


 何にも出ないと言ったなら何にも出さないでほしい。


 とりあえず一緒のシフトの先輩が百瀬先輩じゃなくて良かった。ごまかすのが大変だからな。オレは海神先輩みたいにプレイボーイではないので口八丁手八丁で人を丸め込むことはできないから。


 そっかーといいながらお札をポケットにしまう柿沢先輩をしり目にオレは森川先輩へと近づく。柿沢先輩、お札は財布にしまってください。すぐに取り出せる場所にいれない。


 「森川先輩」


 「ん、何~?私見ての通り忙しいんだけど」


 「見てはわからないです」


 先輩はハンガーラックにかかる衣装を吟味していた。ただその服全部森川先輩が作ったものだし、なんならその行動は昨日もしていた。


 いや、反省した。今のはよく無かった。オレだってグッズをただ眺め続けたりする。それを暇だからやってるなんて思われるのは大変心外だ。能動的にそれをやっているのだから。


 ごめんなさい森川先輩。


 「今日の皆の調子を聞いているの」


 「あの、森川先輩頼みがあるんですけど」


 「……あなたは今日は着られたくないの?でも今日こそ運命の人に出会えるかもしれないよ。一緒に私ともう少しだけで頑張ろう。ね」


 「先輩に服を作ってほしいんです」


 「詳しく聞かせて」


 しゅーと先輩はメジャーを取り出すと自分の首にかける。そして手にはスケッチブックとペン。バカなさっきまで無手だったはずなのに……!なんて速さだ。


 「先輩にはオレのドレスを作ってほしいんです」


 「ほう」


 「白雪姫をモチーフにした感じで」


 「ほうほう」


 「今日それを着てステージにあがるので、だいたい制作時間は6時間ほどですかね」


 「ほうほうほう」


 森川先輩の手が高速で動き、スケッチブックに何かを書きだしていく。


 「6時間ということはドレスだから最初から作っている暇はないね」


 「できますかね」


 ここがつまずくとオレはメイド服か魔法少女の服で白雪姫を演じないといけない。それでお姫様感を出す演技なんてものはオレにはできないので、本当によろしくお願いします。


 「まかせて。クライアントの要求に自分の100%で答えるのがプロだから」


 森川先輩はそう言って不敵に笑う。知らなかった。森川先輩はプロだったのか。


 「流石は先輩!頼りになりますね!それでこのことなんですが、できれば他の人には秘密で……」 


 「わかってるよ」


 森川先輩は早速衣装の物色をしながら答える。


 「初日に顔を出さない岬。そして今日岬のシフトで来た日下部くん。その日下部くんの頼みが白雪姫の服を作ること。大体察しはつくよ」


 森川先輩……。服にしか興味ないなんて、海神先輩はなんてことを言うんだ!こんなに気遣いができる優しい先輩なのに。


 「それに岬用に作った服が今日は元気ないから」


 「それではよろしくお願いします!」


 オレは深々と頭を下げるとそさくさと柿沢先輩のほうに向かった。すぐに離れよう。邪魔しちゃいけないからね!


 よし、これであとはオレがセリフとか動きとかを覚えるだけだな。


 まあ、昨日のシフトに入った感じを見るとお客さんもあんまり来ないし、覚える時間はたくさんあるだろうな。



 ***



 あ、普通に忙しい。


 うん、これは普通に忙しいな。


 昨日、お客さんがこなかったのは本当に森川先輩と神楽坂さんがわちゃわちゃしていたからのようだ。


 沢山のお客さんが来て滅茶苦茶混雑している、という感じではないが、常に教室にはお客さんがいる状態だ。とてもスマホを取り出していじるようなことはできない。


 かくなる上はとオレはこっそりとスマホを取り出すと、商品の影に置く。まるで授業中に隠れてスマホをいじるように。そのうえでお客さんに話しかけたら対応していく。なんだこのマルチタスクは。いや、オレならできる。いつもバイト中、本日の深夜アニメに思いを募らせているじゃないか!今こそ修練の成果を!



 ***


 「え?あ、ミサンガですか?こちらにございますよ」


 「そうですね。色はこれしかないですね」


 「作り方ですか?教えてほしい!?えっとこのような手順で作っておりますよ?」


 ***


 「クッキーのチョコ味がないですか?少々お待ちください」


 「すみません。どうやら売り切れてしまったようです。よろしければプレーン味の方が如何ですか?」


 「いらない。はい、ありがとうございましたー」


 ***


 「こちらの服ですか?これは展示ですね」


 「ああ、試着。昨日やってたみたいに……すみません今担当のものが席を外しておりまして」


 「………森川先輩、一体どこから湧いてきたんですか……いや、何でもないです。対応お願いします」


 ***


 「はい、写真撮影はご遠慮させてもらってまーす」


 ***


 「柿沢先輩お釣りは百円です。お札しまってください」


 ***


 「こんなところで泣いてどうしたのかな?お母さんは?」


 「え?プ○キュアがいるって聞いたのにいない?」


 「…………プ〇キュア・オペレーション!」


 ***


 「はい、売り子へのナンパはご遠慮くださーい」


 ***


 「柿沢先輩お釣りは千円です。お札だしてください。あ、万札じゃなくて」


 ***


 「おじいちゃん!もうお昼ご飯は食べたでしょう!」


 ***




 つ、疲れた……いや、あんなに店員に話かけてくることある?人類はいつからそんなコミュニケーション能力をそなえたのだ。


 でもやっと落ち着いたから、これで覚えられる……


 「お疲れだね」


 「うぉ!アリアか。それに竜胆も。いたのか」


 顔を上げると、目の前にアリアと竜胆が立っていた。


 「いたよー」


 「珍しいわね。あなたが疲れているなんて」


 「そうか。そんないつも元気満タンわんぱく小僧みたいか」


 「それに近いわね」


 「嘘だろ」


 オレとしてはもっとクールな男だと思っていたよ。


 「宗介くんって今日もシフト入ってたんだね」


 「ああ、先輩が代わってほしいって言うから代わったんだ」


 「ふーん」


 アリアはそうつまらなそうに返事した。文化祭中にそんな顔してけしからんな。


 よござんす。この元気満タンわんぱく小僧にお任せあれ。


 「それでお客さん!何か買ってくかい!安くしとくよ!何と税抜きだ!」


 「元々税はかかってないじゃない」


 そう言いながら、竜胆はシュシュを物色する。


 「おっ、それなんておススメだよ。何とアリアのお手製だ」


 「えっ、何で知ってるの?怖い……」


 「シュシュが教えてくれたのさ」


 「もっと怖い……」


 森川先輩になんてことを言うんだアリア。失礼な。


 「そうね。じゃあこれ頂こうかしら」


 「え?本当に?わざわざ買わなくても無料で作ってあげるのに」


 「いいのよ。こういうのも学園祭の思い出ででしょ?」


 「りんちゃん……」


 ありがとうございまーす!


 オレは竜胆からお金をもらうと、シュシュを渡した。竜胆は直ぐに封を開けるとシュシュをつける。ポニーテールだ。


 「どうかしら」


 「うん、すごく似合ってるよ」


 うん、うん。オレもその光景を見てすごく似合ってるなって思いました。

 

 おっと、他にもお客さんが来ちゃったな。


 あ、はーい。今行きまーす。


 「ちょっとすまんな。行ってくる」


 「……ぁ」


 オレはそう言って二人から離れた。


 はいはい。何ですか?座る場所?ここはメイド喫茶じゃないんですー。








 「ぶぅ、合流しようってちゃんと言ったのに、シフトの時間教えてくれないし」


 「……そうね。それに随分と忙しそうで、そして疲れてる。あと、焦ってる?かしら」


 「……りんちゃん。りんちゃんには全然関係ないけど頼みごとしてもいいかな?」


 「いいわよ、アリアの頼みなら。それに……ごほん、やっぱり何でもないわ」


 「ふふっ」


 

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