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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第一章 クーデレ女子がこんなに可愛い
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彼は目標への一歩目を踏み出す

 放課後、みんなが帰り、教室にはもうオレと涼白さんしかいない。二人で残るオレらを伊万里さんは訝しげに見ていたが、自分の部活に行かなきゃいけないため、足早に教室を出ていった。


 「それで説明してくれるってことでいいんだよな」


 「うん、宗介くんが怪しんだままで、りんちゃんに不自然だと思われても嫌だからね。説明する。その上で宗介くんには協力して欲しい」


 「うん、まあ内容による」


 「単刀直入に言うとね、りんちゃんの男嫌いを治すのに協力して欲しいの」


 「オッケー納得した。協力しよう」


 「ほへ?」


 はい、撤収。オレの日常系アニメマインドは限界が来ました。朝ちょっとシリアスな空気を醸し出してから、結局涼白さんは日中もずっとそのまんまだった。放課後までもつかなと心配していたけど、案の定早めに限界が来ました。もうこれ以上シリアスな空気が続くとオレは部屋に引きこもり、ごち○さを全部見るまで部屋から出てこれなくなるだろう。


 これあれでしょ。これから伊万里さんが男嫌いになった暗い過去話に入り、そしてどれぐらいの男嫌いでどんな迷惑を被ってきたかという誰も幸福ならない話が続くんでしょ。しんど。


 「予想の範疇ではあった。だからもういいよ。でもまあ涼白さんが話してスッキリしたいんだったら聞き役ぐらいならできるけど」


 その場合、オレは明日学校にこない。


 「ううん。いいよ。協力してくれるんでしょ?」


 「そ。それでオレは何をすれば?」


 「何もしなくていいよ」


 「あん」


 禅問答か何かですか。


 「この何日かやってきたみたいに。私たちと一緒に話してくれるだけで十分」


 「それだけでいいの?」


 「それがいいの。りんちゃんとの会話にね。近頃よく宗介くんが出てくるんだよ。彼は今日こんなバカをしたとか、今日はこんなにアホだったとか、そう話すの」


 「ちょっと?陰口たたかれてるのオレじゃん」


 「こんなことは今までなかったから。たとえひどくしつこいナンパにあったとしても、りんちゃんは目をそらすように、封じ込めるように口には出さない。陰口じゃないよ。陰口じゃないんだよ宗介くん」


 そう2回繰り返した。オレに言い聞かせるように。そして自分にも突きつけるように。


 「そんなに心配しなくても盗らないよ涼白さん。伊万里さんはただ珍しいものに食いついてるだけ」


 「宗介くんは本当に目がいいよね。うん気持ち悪いや」


 ちょっと。あなたがあからさまに寂しそうにするからでしょうが。自分の表情のわかりやすさを棚に上げてオレをディスらない。


 「でも気持ち悪くない」


 さっきから『終わりの始まり』みたいな、かっこよさげなこと言おうとしてる?


 「宗介くん。正直に答えてね」


 「オレはいつでも正直だよ」


 涼白さんは立ち上がると、オレの前でくるりと回る。


 「私の体どう思う?」


 体ですか。涼白さんの体を上履きから頭のアホ毛まで丹念に観察する。


 「筋力そんなにない。日焼けなし。やせ型。身長はだいたい160㎝ぐらい。それで言うと体重は」


 「はい、ドーン」


 「あべしっ!」


 グーが飛んできた。かわいい効果音とともに普通の正拳突きが飛んできた。ギリギリのところで首をひねってよける。あべしっは様式美だから。心臓を抑えて胸の高鳴りをアピールする。届けこの思い。


 「もう!宗介くんが悪いんだよ軽々しく乙女の秘密に立ち入ろうとするから。女性の体重は話題にしちゃいけないってお姉ちゃんとかに習わなかったの?」


 「体重計いらずって便利がってるよ」


 「うわあお。強者の発言…………ちなみに私の体重は?」


 「単位はリンゴ何個分とかにする?」


 「いらないよ、その気の使い方。少なくとも箱買いだもん。全然メルヘンじゃないし、わかりにくい」


 「**㎏」


 「嘘。ちょっと太ってる……」


 全然気にしなくてもいいよ。痩せてる痩せてる。でも結局体重言わせるのに殴ろうとした件はもうちょっと気にしてもいいと思うな。


 「結局オレに何を言わせたかったわけ」


 「ん、胸のこと」


 「言うわけなくない?」


 あの場面で胸が大きいですねとか言ったら変態じゃん!


 「まあ私も流石に言うわけないと思ったけどスタイルがいいぐらいは言うかなって。実際は私のプライバシーが晒されたわけだけど」


 「だって聞くから。ごめんなさい」


 だから目のハイライトを入れてください。


 「確かに口に出さない人の方が多いけどさ、会話中に私の体を結構チラチラ見る人いるんだよ。電車の中で凝視されたこともあるし」


 涼白さんは窓辺に寄りかかって会話を続ける。


 「でも宗介くんは人の顔を見て会話するよね。話している人の方をちゃんと見て会話する。授業中もこっちを盗み見たりすることはない。こうやって私が立ち上がってもスカートに目を奪われたりしない。だから気持ち悪くない」


 うんうんとうなずきながら、オレの視線の動きを確認するようにオレの正面へと回り込む。この状態ではもう涼白さんの顔しか見ることができない。逆に意識しちゃうわ。


 「りんちゃんとの相性だけじゃない。宗介くんを協力者に選んだ私なりの理由もある。それに仲良くなりたかったのは本当だよ」


 もしかして朝のこと言ってます?ごめんて。だってオレは少女漫画に出てくるような誰もが好感をもつイケメンじゃないからさ。それに「勘違いするなよ。お前の好感度は低い」って日々姉ちゃんに諭されているからその影響がでたんだよ。


 「帰ろっか」


 涼白さんはカバンをもって、ドアの方へと向かう。オレもあわててカバンをつかみ追いかける。追いかけていいんだよね。「帰るね」じゃなかったもんね。


 「伊万里さんを待たなくていいの?」


 「う~ん結構部活が終わるまで時間がかかるんだよね。そうだ。見学に行ってみる?」


 「女子テニス部を?みたい!みたい!みたい!」


 「それってなんかのギャグ?ごめんね芸人さんに詳しくなくて。よくいるよねとりあえず大きな声出すひと」


 「魂の叫び」


 「面白い芸名だね」


 「おいおい、冗談だよな?」


 「ん~魂の叫びかな」


 したり顔でこちらを見る涼白さん。いやいやそんなに面白くないですからね。まず魂の叫びというワードチョイスがひどい。でも、


 「「ぷっ」」


 思わず一緒にふきだしていた。


 「「あはははははははは」」


 誰もいない廊下で二人で笑いあう。


 「ねぇ。やっぱりアリアって呼んでよ。嫉妬するりんちゃんが見てみたい」


 「それ被害受けるのオレでは?」


 「そうだよ」


 「ちょっと」


 「嫌?」


 「ふっ、望むところだ」


 「じゃあ、よろしくね宗介くん」


 「よろしくどうぞ、アリア」


 オレはかわいく突きだしてきたアリアの拳に拳を突き返す……ことなく、パーを出しどや顔してみた。


 蹴りを繰り出してきた。だがしかし君の蹴りには速さが足りない!

 

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