表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
85/142

彼らは接客の練習をする

 ガラガラ


 教室に入ってまず目に入ったのは魔法少女の服を持つ森川先輩とそれを触りながら戦慄く神楽坂さん。


 「次はこの魔法少女の服を妹さん着たりしてくれないかなぁ〜」チラチラ


 「ま、魔法少女!?ごほん、こんなスカートが短いなんて素晴らけしからん」


 素晴らけしからんって何だ。


 「大丈夫。ここにはニーソックスもあるので、これを履けば素足が隠れてそんなに露出しているようには見えません!もちろんニーソックスの色は汚れなき白!なんて清楚で純真なんでしょう!」


 「白のニーソックス……!先輩のそのセンスには脱帽です。最初は華恋の可愛さに狂った変態かと思いましたが、あなたはどうやら本物なのですね。本物の職人………!」


 「いいえ、私があなたの妹さんに似合うと思ったのではありません。服が妹さんに惹かれあったのです。いうならば運命……!」


 「流石は華恋……無機物までたらし込むなんて……!」


 オレの記憶が確かならば、その魔法少女の服は確か唯織が着ていたやつだ。その服二股してるよ。


 次に華恋と唯織の方へと目を向ける。


 華恋は真っ青なチャイナドレスを着ている。髪型もこれぞチャイナ娘といったところだ。二つのお団子をチャイナドレスと同じ柄の布で覆っている。あの髪飾り?には何か正式名称があるのだろうか。


 またチャイナドレスは足首まであり、割と長めに作ってあるが、結構大胆にスリットが入っている。この状態で神楽坂さんは足を広げることを求めたと思うと身内でも通報していいように思える。


 そんな華恋はメイド服の唯織に抱き着く。


 「ん~いおりん可愛いなぁ」


 「ん。そーくんも可愛いって言ってくれた」


 「いいなぁ~。宗介、私にも言ってくれるかな~」


 「大丈夫。れんれんも可愛い」


 「そんな可愛いなんて……えへへ」


 は?可愛いかよ(怒)


 可愛すぎてキレちまうぜ。


 くるくる回りながら互いの衣装を見せ合い、褒め合う二人。なんだあの空間。眩しい。


 いつからいおりんとれんれんなんて呼ぶような仲になったのだろうか。仲良しかよ。華恋が唯織のことをいおりんと呼び始める様は十分に想像できるが、唯織が華恋をれんれんと呼んでいるのは驚きだ。


 唯織のイメージとして一番近いのは警戒心の強い子猫だろうか。エサは貰うし、時には撫でさせてやってもいいけど、自分から寄っていくことはない。そんなイメージだ。


 家庭科部の先輩たちにも気を許している感じはするが、撫でさせてやっている段階かな。基本的にはされるがままだ。


 そんな唯織があだ名で呼び合うなんて……!お父さんは感動したよ。これも華恋の天使パワーが寄与したのだろうか。どのようにして唯織があだ名で華恋を呼ぶようになったのか一から十まで説明してほしいものだ。正座で聞くよ。


 さて、片や愛が暴走する変態の集い、片やゆるふわ二人の天使のファッションショー。どちらに行くべきかは言うまでもないだろう。ん?前者?そうそうオレにぴったり変態の集い……って誰が変態だーい!


 …………。ごめんなさいでした。今のは自分でも寒いし痛いなと思った。謝るので天使の方に行かせてください。


 オレは同じ穴の狢に見つからないように気配を消しながら天国へと足を進めた。


 「こんにちわ、華恋。それといらっしゃいませ」


 「おお、宗介……おお!宗介!すごいな。相変わらず綺麗だ!」


 「いや、そんなそんな」


 「なんか唯織のよりかっこいい服だな!スカートも長いしリボンもないし」


 「それは森川先輩の手腕だな」


 オレのメイド服は、普通のメイド服では白いエプロンやホワイトブリムは全てグレーとなっており、またリボンやフリルといった装飾もほぼなくすっきりとしたデザインになっている。オレの体型に合わせて作ってくれたのだろう。やけにぴったりだ。


 森川先輩はこの後、この服を一体どうするのだろうか。小生はこれでも身長が175cmほどあるため、このメイド服はほとんどの女性は着ることはできない。森川先輩はそういうことがよくある。欲望のままに服を作り、その服はオレしか着れないという。前もオレに着せるために宝塚の男役が着るような服を作ってきたものだ。女性の男装を男性の女装にするという、もうわけわかんない。


 ああ、でもそうか。モデルなら女性でもこれぐらいの身長の人はいるな。


 ……そういうことなのだろうか?実は森川先輩は将来を見据えて、意識高く服を作っているのだろうか?


 チラッ


 「はぁ、はぁ。これかな。やっぱりこれかな。ん?何?あなたが今度は着てもらいたいの。でもあなたはあの子には少し大人っぽすぎると思うの。そう?そんなに言うなら試してみよっか?」


 うん。違うな。あれは目の前の服のことしか考えてない。


 服と会話してるよぉ。怖いよぉ。


 神楽坂さんも魔法少女の服を握りしめながらトリップしてるし、あっちには近づかないでおこう。


 それとこれはどうでもいいことだが、お客さんがあの二人を見て廊下に引き返している。


 閑話休題。


 オレはなんだかウキウキしている華恋との会話に戻る。


 「なぁなぁ、宗介。この服どうだ?ほわちゃ!」


 「尊い」


 華恋は足を大きく広げて腰を落とし、片手を上に片手を下に構えて、なんだがカンフーっぽい構えをした。今なら触らずに敵をノックアウトすることだろう。オレも吹っ飛びそうだったもん。


 「尊い?使い方間違っているぞ宗介。それはもっと神聖なものにつかうんだぞ」


 そこにつっこまれるとは。でも確かに一般の方からしてみれば、尊いという言葉は日常生活であまり使わないのだろうか。もうオレには普通がわからないが。自分で言っておいてなんだが、普通がわからないってフレーズ何だかかっこよくね?うん、まあこういう感性なもんで。


 オタクって基本大げさなところあるよね。


 でも日本って八百万も神様がいるわけじゃん。それだけいるならば、みんなが日々尊いと言っている対象もその神様の中の一柱に含まれていてもおかしくはない。万物に神は宿るといっているわけだし。だから華恋に尊いと使ったっていいはずだ。


 とはいってもここで華恋に女神としての覚醒を求めても仕方がないので、オレが譲ろう。


 「華恋によく似合っていて可愛いってことだ」


 「むふー。あちゃ!あちゃ!あちゃー!」


 「叩かない叩かない」


 別に痛くないんだからいいんだが。


 でもわかるぞ華恋。チャイナ服を着てテンション上がったんだよな。何だか自分が強くなった気がするよな。


 オレもある時、チャイナ服カッコいいと思って、学ランを着て演武したことある。なんで学ランかって?あの時は学ランの首元で締まる感じとか、袖がちょっと余裕あって手を互いの袖に突っ込める感じとがチャイナ服に似てると思ったんだよ。そしてテンションのまま姉に勝負を挑み、ボコボコにされ、現実をみるところまでがワンセットだ。オレの思い出こんなんばっか。


 「さて、じゃあ唯織。今のうちに接客の練習でもするか」


 いつまでも華恋と唯織と戯れていたいところだが、真面目にお仕事をしなければ。まあお客さんは当分来ないだろうが。あの人たちはいつ落ち着いてくれるのだろうか。


 「接客……宗介、お客様は神様。つまり安易に触れるべきではないと思う」


 「そうしたいけどもね、神様はオレたちの都合なんかお構いなしに襲来するんだぞ」


 「むぅ。荒ぶる神は、英雄の一撃で倒す」


 「オレたちに許されているのはお祈りすることだけだ」


 「接客って大変」


 「全くだ」


 「えっと、そういうお客さんばっかじゃないと思うぞ?」


 まあね。このあたりが治安が悪いというのは聞いたことないし、学生のお店にそこまで期待してないだろうしね。荒ぶる神が来る確率は低いだろう。


 「そんなに心配するな唯織。接客と言っても、お客さんにいらっしゃいませって声をかけるぐらいだぞ。あとは聞かれたことに答えるぐらいだ。多分そんなに話しかけないだろうけど」


 「いらっしゃいませ」


 唯織はそう言って頭をさげる。うん、いいよ。声出てるよ。


 レジはまあオレがやるとして、森川先輩は……森川先輩の好きにさせよう。


 「はい!」


 「はい、華恋」


 「私がお客さんの役やってあげる」


 「おっ、ありがとう華恋」


 「じゃあ私もお客さんの役やる」


 「それは違う」


 「……じゃあ売り子やる」


 「そうしてくれ」


 オレたちは商品が並ぶ机の裏にまわる。華恋はちょっとだけその机から離れ、そしてまた戻ってくる。


 「こんにちわ」


 「いらっしゃいませ」


 「これはミサンガですか?」


 「はい。これはミサンガです」


 「赤色をください」


 「200円になります」


 「はい」


 「はい」


 「また来ます」


 「ありがとうございました」


 「「…………」」


 クルリ


 「「どう?」」


 英語の教科書の文章みてぇ。


 「ほとんど完璧だ」


 「よし」


 「いおりんはカリスマショップ店員だな!」


 「そこまでは言ってない」

 

 カリスマショップ店員はもっと無駄に喋ってお客さんの気を緩め、いらないものも気分よく買わせるという技を使えるからな。カリスマショップ店員になるにはまだまだ先が長いぞ。


 「一つだけオレからアドバイスをさせてくれ」


 「何?」


 「口調から温かみを消そう」


 「何を言ってるんだ?宗介」


 「いいか。世の中にはな可愛い店員さんに優しく声をかけられただけで、好意があると勘違いしてしまう人が多くいるんだ」


 「そんなにいないと思う」


 「いいや、だいたい男性の6割はそんな感じだ(オレ調べ)」


 もう、男ってほんとバカ。

 

 「だからそういうのを防ぐために、無感情で無表情で接客をするんだ」


 「わかった」


 唯織は目を瞑る。そして次に目を開いた時には表情が抜け落ち、目から光が消えていた。


 「……イラッシャイマセ。あ、はい、クッキー。どぞ。アリガトウゴザイマシタ」


 「ふむ……なるほどな」


 え、可愛いかよ。


 その目その表情で接客されるのなんだかドキドキしてきた。無表情の眼帯のメイドさんに雑に扱われる。喜びしか湧いてこない。こちらこそありがとうございます……!


 うん、男ってホントバカ。


 自主的にあっちの集いに行きますね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ