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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
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彼はお化け屋敷の楽しみ方を教える

お化け屋敷を出ると、ちらほらと高校生っぽくない人が校舎内に増えてきた。どうやら一般入場が始まったらしい。


 いやしかし、お化け屋敷楽しかったなー。


 「ぷぷっ」


 「何かな、アリア?」


 人の顔を見て笑ったりして……存在するだけで人を笑顔にするオレ、なんて素晴らしいんだ。


 「だって意外だったんだもん。あんなにお化け屋敷を怖がるなんて」


 「そうね。急に立ち止まって動かなくなるから、どうしたのかと思ったわ」


 竜胆なんてこちらを見てくれない。ちらりと見える頬は赤く、一体どれだけ笑っているのだろうか。竜胆の爆笑なんてレアなものは回り込んででも見たいが、お化け屋敷を先導してくれた恩があるので今回は見逃してやろう。


 「宗介くんって怖がりだったんだね」


 「違いますー感受性が豊かなだけですー」


 「また良い風に言う」


 「怖がりで、泣き虫で、キレやすいこんなオレですがどうぞよろしく」


 「よろしくしたくないなあぁ」


 「それは情緒不安定っていうのよ」


 「ムキー!」


 そんな冷たいこと言うなよ。泣いちゃう。


 「そもそもの話さ、お化け屋敷で怖がらないとか、それはお化け屋敷を楽しんだと言えるだろうか」


 「そんなこと言われても……」


 「怖くないのに、わざと怖がることはできないわ」


 「そりゃ邪気があるからだよ」


 「今度はなんか胡散臭いこと言い始めたね」


 「お化け屋敷に入ったのに、余計なこと考えてたでしょ。どうせ高校生のお化け屋敷だから怖くないなとか、あそこから多分何か出てくるんだろうなとか、そんなこと考えてたら怖くないに決まってるでしょうが!」


 「もう高校生だから自然に考えちゃうよ」


 「何も考えないで無心になればいいんです。そうすればきっと世界はもっと楽しい」


 最近のアニメつまらないなとか最近の漫画は面白くないなとかほざくそこのあなた。余計な知識や経験というフィルターを捨て、無心になるのです。あの純粋だったころを思い出して。


 「楽しもうとしなきゃ楽しめないんですよ」


 「別に楽しくなかったわけじゃないけど、まあなんとなく言いたいことはわかったかな」


 そうでしょうとも。オレはうんうんと頷いて言葉を続ける。


 「……ちなみに宗介くんは、作画崩壊しているアニメはどう思う」


 「え?そういうアニメはだいたいストーリーも崩壊してるから見ないよ」


 「「……。」」


 二人のジト目がオレに突き刺さる。


 「……はっ!心の目で見ます。妄想と想像で補って楽しむのです」


 オレはアルカイックスマイルを浮かべて言った。ええ、仏のような心持で見るのです。


 「……最近、気づいたことがあるのだけど。日下部くんが敬語になる時って、ふざけた発言をする時が多い気がするのよね」


 え?マジ?


 ……あー。


 いやいや、オレはいつも大真面目ですから、ふざけた発言なんてしたことないですよ。おっと。


 「ごほん。そんなことより次は何処へ行きましょうか?」


 「誤魔化したわ」


 「そうだね。それに普通の発言にも敬語を混ぜてきたよ」


 ええい、オレの分析を発言するんじゃない。


 オレは、さて次はどこに行こうかのうと言いながらパンフレットを見て進む。後ろを見たら負けだ。


 そうして曲がり角に差し掛かったその時、曲がり角からすごい勢いで人が飛び出してきた。オレはパンフレットを闘牛のマントのように扱いくるりと避ける。


 この技術を使えば姉ちゃんの攻撃をいなすことができるのではないか。いや、あの人は赤いものじゃなくてオレ自身に向かってくるから無理か。全く愛が痛いぜ。


 「あれ?唯織か?」


 オレと危うく正面衝突するところだったのは相変わらずの黒髪ツインテール眼帯呪われし右手の唯織だった。何かに抱きつき損ねたような格好で静止している。


 「うん、おはよう。そーくん…………チッ」


 「おはよう、唯織……え?今舌打ちした?」


 「してない。投げキッス」


 「それこそしてなかったぞ」


 いつから挨拶がわりに投げキッスをするようなセクシーキャラになったのだろうか。


 「あれ、おはよう黒崎さん」


 「…………おはよう…………チッ」


 「黒崎さんももう来たんだ……今舌打ちした?」


 「してない。口笛」


 「そうだとしたら下手すぎるよ」


 唯織は天丼をおぼえた。正確には違う言葉でボケたから天丼ではないのか?


 「じゃあ、そーくん行こ」


 そう言って唯織はオレの右腕を掴む。何処へでしょうか?


 「うん、ちょっと待とうか」


 そう言ってアリアもオレの左肩を掴む。アリアさん?痛いです。骨に手が食い込んでますわよ。


 「大丈夫。そーくんは私が引き取る。あなたは他の友達と遊んでいいよ」


 「余計なお世話だよ。というか他の友達と一緒に宗介くんで遊んでいたの。ねえ、りんちゃん」


 「りんちゃん?」


 そこで初めて唯織は蚊帳の外に置かれていた竜胆を見る。竜胆は同じグループなのか違うのか微妙な距離でこちらを見ていた。3人の目が向くとビクッとしてこちらへと来る。


 ……さっき宗介くん()遊んでって言った?ひどいやっぱり私とは遊びだったのね!


 「……おはようございます。アリア達から話は聞いてます。伊万里竜胆です。よろしくお願いします」


 固いなあ。


 「黒崎唯織。そーくんの右腕」


 そうだね。今、あなたは右腕を捕まえてるね。


 「「…………。」」


 なぜ二人は見つめ合って黙っているんだろうか。



 「アリア。竜胆と唯織って初対面なんだな」


 「うん、そうだよ。家庭科部の人には会わせてないよ」


 「会わせてない?あれ故意なの?」


 「だって、ねぇ?」


 「ねぇと言われても……オレもその一員だから何とも言えんぞ。でもそれほど害があるわけじゃないし、会わせても良かったんじゃね?海神先輩以外は」


 「うん。海神先輩に会わせたくないっていうのはあるんだけど……」


 それ以外にも理由がありそうな雰囲気。海神先輩に会わせたくないのはしょうがない。


 「日下部くん、ちょっと」


 唯織との無言の交信を終えた竜胆がまた少し離れて、オレを手招きする。


 オレは唯織の手をやんわりと外すと向かう。


 「何?」


 「私の苦手なものについて教えておくわ」


 「いきなりどした?」


 沈鬱な表情で言う竜胆。そんなに苦手なんだろうか。だとしても何故このタイミングで。


 「私ね、」


 ごくり。


 「友達の友達が苦手なの」


 「……。」


 いや、わかるけども。そんな深刻な表情で言うことだろうか。


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