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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
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彼らの文化祭が始まる

 文化祭当日。


 オレは気持ちのいい目覚めを迎えた。お姉さまから朝からうざいとお褒めの言葉を頂くほどに調子がよかった。


 そのままニコニコツヤツヤで登校した。登校した竜胆が何か言いたげだったがなんだろうか。言いたいことがあるならはっきりと言ってほしい。


 さてオレたち生徒はまず開祭式のために体育館に集まっていた。なお文化祭全体で言えることだが、自由参加のため、今も集まっている生徒たちは思い思いの場所で好きな人と体育館で始まるのを待っている。


 ほとんどの生徒たちが体育館に集まっていた。集まっていない人はまだ準備がある生徒や、捻くれている生徒ぐらいだろうか。中学のオレとか。いや、中学のオレは割と祭好きではあったので、おそらく体育館のギャラリーぐらいで参加していただろうか。もしくは入口に一番近い壁際に寄りかかって立っていた。こう楽しんでいる生徒を一歩引いて見るオレみたいな感じだ。


 ちらりとギャラリーを見上げる。二人組、三人組、たくさん組、二人組、独り。最後の人は柵に頬杖をつきつまらなそうに体育館フロアを見ている。オレはうんうんと頷きながら目をそらす。最後の一人とは気が合いそうだった。


 そんなオレだが、高校では三人組でこの開催式に参加している。いや、二人組プラス一人だろうか。


 オレはアリアと竜胆が並んで立つ後ろにヌルッと立っていた。もちろんちゃんと自然な距離は空いている。大きく前倣えしたときくらい空いている。


 「……何で宗介くんは後ろに立ってるの?」


 「お気になさらず」


 「気になるから、横にきなさい」


 むう。人が嫌がることをしてはいけませんと先生に習った……ことはないけれど当たり前の判断をしてオレは竜胆の横にしぶしぶ並んだ。


 さてそんなオレたちの服装だが、フィクションの産物だと思っていたものを着ている。いわゆるクラスTシャツというやつだ。学校を厳しく取り締まる風紀委員みたいな感じで、物語の中だけだと思っていたけど、ちゃんと存在したんだなぁ。

 

 オレたちのクラスTシャツは、基本的な色が黒で胸元にデフォルメしたオバケのワンポイント、背中にはクラス名がポップな感じの血文字で書かれている。シンプルないいデザインだ。


 なおデザイン案はオレも提出したのだが、多数決で1票しか入らず負けてしまった。一票をいれたのは当然オレだ。十字架、ドクロ、鎖を組み合わせたいかしているデザインだったが、まだオレに世界が追いついていないようだった。


 アリアや竜胆はそのTシャツに足の長さを強調するピッタリとしたジーンズをはいている。そのジーンズは色は違うが、あまりにも似すぎている。もしかしてペアルックですか?もうやだー。わかりにくいところで、そんなアピールしちゃってーこのこのー。普通の日でもペアルックしてきてもいいんですよ?


 あ、オレは普通にジャージです。


 同じクラスTシャツを着ていてもライブハウスのスタッフと屋台のあんちゃんぐらい雰囲気の違いがある。まあ、ライブハウス行ったことないんですけどね。


 そんなことを考えながら、開祭式が始まるのを待つ。


 何故か竜胆がこちらをチラチラ見ている気がする。朝からオレを気にしているようだ。勘違いだと思うじゃん?でも竜胆の方をガン見してたら目が合ったので勘違いじゃない。


 「何?どしたの?」


 「こっちのセリフよ……」


 「いや、なんかこっちをチラチラと見ている気がしたから、確かめようと思って」


 「普通に声かければ良かったじゃない」


 「見てるのが勘違いだったら恥ずかしいだろ」


 「何で女子を見つめる方が恥ずかしくないのよ……」


 はぁとため息をつく竜胆。


 …………。


 「それで?」


 「…………。」


 何故黙る。


 「ほらりんちゃん。言いたいことがあるんでしょ」


 アリアが恥ずかしそうな竜胆を促す。そして竜胆は意を決したようにこちらに向き直る。


 「き、」


 「き?」


 虚虚実実って四字熟語カッコいいよね?オレもそう思う。意味もなく座右の銘にしようと思ったぐらいには好き。


 「昨日のいたずら、どうだった?」


 いたずら?


 ……!あーあーあー!

 

 そういえば、やられてたなそんなことも。あまりにも印象に残らなかった、というかその後に強烈なイベントが襲いかかってきたので、完全に喰われてしまってるな。


 チラチラ見てた理由それ?いたずらしてリアクションが気になってたとか、さては竜胆、いたずら初心者だな。


 「いたずらっていうとオレを教室に放置したやつか」


 「あ、それは私」


 なるほどこれはアリアね。


 「オレのスマホでアラームかけたこと」


 「それも私ー」


 「……オレの顔にメイクをしたこと?」


 「それもー」


 「よし、まずはアリア、謝罪の言葉を聞こうじゃないか」


 「きゃー」


 きゃーじゃないんだよ。竜胆を盾にしやがって。そんなことでオレが許すとでも思っているのだろうか。許すー。


 「じゃあ竜胆は何をしたんだ?」


 まさかオレが把握していないだけでまだ何かをやられていたのだろうか。


 「……スマホの写真」


 スマホの写真?


 オレは何の気なしにスマホの写真フォルダを開いた。


 瞬間、オレは仰反るように体を崩し、倒れる。それは無防備な状態で決して見てはいけないものだった。


 アニメ画像が大半を占めるオレの写真フォルダの一番下。一番新しい写真。


 実写のツーショット写真。アリアと竜胆のツーショット写真。なんか白い横たわった物体を背景にアリアがしたり顔で、竜胆が恥ずかしそうに写真に収まっている。


 これが、いたずら?オレのスマホにツーショット写真を収めることがいたずら?いたずらって一体何だっけ?こんな胸のあたりがぽかぽかするものだっけ。


 「日下部くん?」


 「はっ!モー リンドウ コンナイタズラシテー」


 「喋り方が変よ日下部くん」


 とりあえずこの後の背景の物体が邪魔だから消して、間違えて消さないように保存してオッケーイ。


 突如倒れ、すぐに立ち上がりスマホを凝視するオレ、おざなりな返事、素早く動く両手。不審に思った竜胆が言葉を続ける前に、体育館の電気が消えた。


 軽快な音楽が流れ始め、ステージ上のスクリーンに映像が流れ始める。


 文化祭の準備の風景だ。準備期間が始まってから、だんだんと完成するまでの光景が流れていく。あ、オレが鎧姿でちやほやされてるのも映った。


 映像が終わり、一度ステージ上も暗転。


 そして、ステージの中心に鎧に身に包んだ騎士、もとい生徒会長が現れた。なお兜はしていない。ざわざわと微かにざわめく生徒たち。


 ゆっくりとその騎士は剣を抜くと掲げた。煌めく剣。


 生徒会長はこちらを見て笑った気がした。オレはふっとシニカル風に笑う。


 そしてーーーー


 「梓山祭!開祭だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!」」」」」」」


 生徒会長の開祭宣言に呼応して、雄たけびが体育館を包み込んだ。


 アリアは両手を上げて楽しそうに、竜胆はここでも写真のように控えめに手をあげている。もちろんオレも拳を突き上げている。


 梓山祭。開幕!











 



 「そういえばなんで生徒会長、鎧姿だったんだろうね?」


 「さぁ?劇にでも出るんじゃない」


 カッコいいからに決まってるでしょうが!

「開祭」って言葉は、辞書にのってないみたいですが、なんとなく意味は分かりますよね?

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