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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第一章 クーデレ女子がこんなに可愛い
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どうしても彼は納得したい

 次の日学校に行くと涼白さんは珍しく一人で席に座っていた。小さなお口を開けてあくびを一つ。いつもはこの時間には二人で一緒にいるのに珍しい。


 「おはよう、涼白さん」


 「おはよう、宗介くん」


 席につき教科書などを机の中に入れながら、雑談がてら涼白さんに話しかける。


 「今日は伊万里さんと一緒じゃないんだな」


 「うん、りんちゃんがちょっと遅れるから先に行っていいよって」


 「寝坊かね。なんか真面目そうなイメージがあるから想像つかないわ」


 「真面目な人だって寝坊する時は寝坊するよ。でも寝坊じゃないと思うな」


 「その心は?」


 「宗介くんが昨日りんちゃんのお弁当褒めたから、ちょっと今日のお弁当作りに力が入っちゃたんじゃないかな」


 中華鍋をふるうコック服の伊万里さんと重箱の図が頭の中に浮かんだ。頭を振ってそんな妄想を追い出す。ピンクのエプロンを着けブラウスを腕まくりしてふんすと気合を入れる伊万里さん。うむこんなところだろう。


 「まさか。伊万里さんはオレごときの言葉に影響を受けないでしょ」


 さっきのは妄想、妄想。


 「そうかもしれないね。でも本心からのおいしい、その一言だけでちょっと気合いが入る。そんな気持ちは料理を作る宗介くんの方がわかっているんじゃない」


 「さぁ?昨日お二人からその言葉を頂戴したけど、特に変わらずだし」


 今日も通常運転で朝食、夕食をつくりお弁当を包みました。そして時間通りに登校しています。ちなみに今日のおかずは唐揚げです。あれ?もしかしてオレ気合入ってる?朝から揚げてるじゃん。


 「それはそうだよ。あれは本心じゃなかったから」


 「涼白さん!?」


 「ぷっ、冗談。本当においしかったよ」


 なんて小悪魔な涼白さん。また知らない一面が。小悪魔な片鱗はあったけど、突如出てこられるとドキドキしちゃう。


 「そうだ。『涼白さん』って言いにくいでしょ?私のことはアリアでいいよ」


 そういってニコッと笑う。思わず見惚れてしまいそうな綺麗な笑みだった。


 「う~む」


 「あ、やっぱり女子を名前で呼ぶのは恥ずかしい?草食系男子だね~宗介くんは」


 「いや。それ自体にこれといって抵抗があるわけじゃないんだけど、釈然としないなーと」


 「何のこと?」


 「いや〜もう率直に言うとさ、そんなに急速にオレとの仲をつめてどうするのかなって」


 涼白さんの綺麗な眉が力なく曲がり、弱ったように言う。


 「ご、ごめんね。ちょっと図々しかったよね。迷惑だった?」


 「いえいえ全く。オレは涼白さんと伊万里さんとは友達になりたいと思っているからね。一緒に昼食食べるのも、名前で呼び合うのもめちゃくちゃ嬉しい。その日を記念日にして、毎月祝いたいくらいだ」


 でも、ねぇ。


 「こんなとんとん拍子で進んでいるのには違和感があるかな。異性同士であることって関係を進めるのに割と大きな壁だと思うんだよね」


 「う~ん。普通はこんなもんだと思うけど」


 「あっはっはっはっは。涼白さん。オレはさ、気持ち悪いんだよ」


 オレの今の気分を言ったのではない。オレ自体が気持ち悪いといっている。


 「え、急に何を言ってるの」


 急じゃないよ。涼白さんが普通さんを引き合いに出したんだから。


 「近しい人からもクラスメイト程度の人からも計何回気持ち悪いと言われたことかわかったもんじゃない。本気か冗談かなんてどうでもいいけどね。別に一々気にしてないからな。オレはきっと下ベクトルに普通とは違うんだと思う。自覚はそんなにないけどね」


 そんなやつが高校入ってすぐに可愛い女の子たちと仲良くなれました?妄想も大概にしとけよと言いたい。


 「こんなオレが普通に順調に女の子と仲良くできるわけないだろ」


 「……宗介くんって真面目にしゃべれるんだね」


 いつも真面目に喋ってるよ。


 「ああ、でもそうか涼白さんが異常なまでにフレンドリーっていう線もあるな」


 下のベクトルには上のベクトルで相殺する感じで。


 「でも涼白さんはオレに一歩引いている感じがするんだよな。むしろ伊万里さんの方が本心でしゃべっている感じが……伊万里さん」


 今伊万里さんという言葉に反応した。


 「オレと伊万里さんをぶつけて何かしたいのか」


 「私がどうかしました」


 「どうわっしゃ!」


 「うるさい」


 び、びっくりしたぁ。急に本人が話しかけてくるんだもの。振り返ると伊万里さんがオレの後ろに立っていた。


 「おはよう~りんちゃん」


 「おはようアリア。それとあなたも」


 「おはようございます」


 「敬語……何か私の悪口でも言っていたのかしら日下部くん」


 「邪推が過ぎる。挨拶は敬語っていう育ちの良さが出ただけですぅ。いや伊万里さんはなんで遅刻したのかなっていう話をね」


 「別に時間配分を間違えてちょっとお弁当を作るのに時間がかかっただけよ」


 「「……。」」


 涼白さん。そのどや顔をこちらに向けるをやめてください。ほらぁ~じゃないよ。何?か・わ・い・い・ね。わかったて。あなたの伊万里さんは滅茶苦茶わかりやすくて、すごくかわいい。


 「何か?」


 「いや伊万里さんはかわいいなと思ってさ」


 「そう……相当ひどい陰口をたたいたのね」


 「ねぇ、これもうオレじゃなくて伊万里さんの方に問題なあい?」


 とまあ伊万里さんが来たことでオレの話はうやむやになったかのように思われたが、隣の席から授業中に手紙が回ってきた。


 『放課後、教室で待ってて』


 やっほーい。都市伝説かと思われた女子からの呼び出しの手紙もらちゃった。しかも絶対いたずらじゃないやつ。愛の告白かな。わくわく。


 はぁ。嫌だな。怖いな。どんな話が来るんだろうか。シリアスな話嫌いなんだよな。


 お前が余計なこと言うからだって。仕方ないじゃん。だって利用するために仲良くする関係を友達というのはあまりにも寂しすぎて、オレの日常系アニメマインドが破戒寸前だったのだから。説明しよう日常系アニメマインドとは日常系アニメのような優しい世界でしか生きられない弱々メンタルのことである。社会に出て生きていけるか不安だな。


 まあ、だからお手柔らかにお願いしますよ。

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