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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
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彼らは文化祭前日を過ごす2

 お泊りイベントの夢が潰えたオレは、仕方がないからサクサク文化祭の準備をすることにした。自分でいうのもなんだが、器用貧乏であるオレはどんな仕事でもこなしてみせるだろう。


 さて、どこを手伝おうかな。オレは腕をぐるんぐるん回しながら、やる気に満ち溢れたギラギラした目で教室を見回す。困ってるやつはいねぇがー。


 見つけた。君だ。おいおい君だよ。目があったじゃないか。つまり君も誰かの手を借りたくて探していたんだろう。どうしたんだい、そんなに俯いて震えて。喜びに震えているのかな?嬉しいかぎりだ。さぁ、顔を上げて。幸せを運ぶ座敷童みたいな存在が目の前にいるよ!


 ガシッと。


 オレは両脇から捕獲された。右腕をアリアが左腕を竜胆ががっちり掴んでいる。


 「はい。他の人のことを邪魔しちゃダメだよ。小島くんはともかく」


 「そうね。小島くんはともかく」


 哀れな小島。


 「久しぶりだな二人とも2ヶ月半ぶりくらいか?」


 「何言ってるの?昨日も会ったじゃない」


 「それな」


 本当に何を言っているんだろうオレは。


 とりあえずこの状況はどういうことだろう。捕まった宇宙人、いや両手に花といったところか。でもオレが望んでいるのは 花 オレ 花 という状況ではなく 花 花 オレ という状況だ。


 というわけですまんな二人とも。


 オレはニュルンと二人の腕から抜けると、代わりに互いの腕を組ませる。


 「「え?」」


 見事な早業で互いに驚いたように見つめあっている。


 お二人さん、お似合いだね。お熱いね。ふーふー。


 ガチャリ。


 え?


 「だから言ったでしょ二人とも。日下部くんを大人しくさせるにはそれじゃあ甘いって」


 小さな鍵をもてあそびながら、神楽坂さんがオレの後ろから出てくる。ちらりと後ろを見るとオレは両手を手錠で閉じられていた。


 「そうですね。まさか優しく振り解かれるとは……」


 「ちょっとだけ女の子としての自信が揺らいじゃうね」


 「大丈夫!どっからどう見ても女の子だよ!オレが保証する!」


 はぁと大きなため息をつく二人。ため息をつくと幸せが逃げるぞ。はっ!だからオレを捕まえたのか。でもダメだぞ。座敷童は無理矢理捕まえようとすると逃げちゃうぞ。


 まあ、オレは座敷童ではないけども。


 「まあいいや。宗介くんに用があったんだよ」


 「招福?」


 「違うわ」


 「そうそう、日下部くんへの用ってのはね」


 グイっと胸ぐらを神楽坂さんに引っ張られる。いや、こわいこわい。両手が使えない状態で引っ張られるのめちゃくちゃこわいよ。


 「このまえも華恋があなたの家でお世話になったようね。この野郎。どうもありがとう」


 「神楽坂さん。感情がぐちゃぐちゃになっているよ」


 「あと、私たちの用は神楽坂さんのものとは別だけど……」


 あ、じゃあこの人の暴走を止めていただけると……


 「でもそっちのほうが時間かからないだろうから、お先にどうぞ」


 「ありがとう」


 しっと!


 アリアと竜胆は両手を差し出して、どうぞどうぞの構えだ。


 神楽坂さんは笑顔で二人にお礼を言うと、こちらに向き直る。真顔だ。


 「それで聞くところによると、日下部くんのお姉さんに華恋は随分と懐いているみたいだね」


 「まあ、仲いいんじゃないですか」


 「それは私に対する宣戦布告ととって良いね」


 「ダメだよ」


 「じゃあ、何で私というものがありながら、お姉さんを紹介したりしたの!」


 「家にいるからしょうがないでしょうが!オレだって大学生になったらあいつが一人暮らしすると思ってたよ!」

 

 「お姉さんになんて口を!華恋が真似したらどうするの!」


 「大丈夫ですー華恋はいい子だから真似しないですー!」


 「そうね!華恋はいい子だからだ大丈夫ね!」


 「ああ、マジ天使!」


 「いいえ、大天使!」


 「いや、もはや女神様なんじゃないか!?」


 「そうね!崇め奉り可愛がりましょう!」


 「おう!」


 「「へへー」」


 二人して聖地(華恋が今いる場所)の方向に向かってお辞儀する。


 「二人とも言い合うならちゃんとしてくれるかしら?何だかこちらも変な気分になるわ」


 「会話の入口と出口が、どう考えても別だったね……」


 神楽坂さんとの会話では、すべての道は華恋可愛いに通じてるからな。これは仕方がないことなのだよ。


 「華恋の可愛さに免じて、あなたの罪を赦しましょう」


 「ありがとうございます」


 「一応聞くけど、華恋はあなたのお姉さんのことをなんて呼んでいるのかな?」


 「名前で呼び捨て」


 「そう、私が唯一姉というなら赦しましょう……いやでも名前で呼び捨てもそれはそれでギャップ萌えが……」


 「それはご自由に試してもらって」


 「花凛、花凛、花凛、かりん、カリン。うふふふ……」


 自分の名前を呟きながらトリップする神楽坂さん。ここだけ切り取ったらかなりおかしな人だぞ。


 「さてこっちのお話はまとまったけど、お二人の用は何かな」


 「えっとまとまったの?花凛ちゃんはあれでいいの?」


 「アリア。神楽坂さんはああなると長いから放って置いていいのよ」


 さすが、竜胆。ペアのことをよくわかってるな。


 「とりあえず日下部くん。こちらに来てくれるかしら」


 「はいよー」


 二人に先導されるがままに、教室の隅へと。む。後ろで縛られていると意外に歩きにくいんだな。よっと。オレは手錠を飛び越える。両腕とも身体の前にきた。これで幾分歩きやすいだろう。


 「……日下部くん、今地味にすごいことしなかった?」


 「え?さあ?手錠で捕まった知り合いがいないもんで」


 ガムテープで捕まった知り合いはいるけど。というかオレ。


 「まあいいわ。日下部くんに頼みたいことはこれよ」


 教室の隅では女の子が恥ずかしい格好にされていた。具体的には顔を真っ白に塗られたりして、随分とまあ不細工にお化粧された女の子がいた。たぶんクラスメイトの松川さんかな。


 「……これはひどい」


 思わず本音が漏れる。


 お化粧道具を持った女子も気まずげに目線を逸らす。


 「お化け役の子にみんなでメイクをしていたんだけど、どうにも全部こんな感じになっちゃって」


 「でも暗いところで彼女に出会ったら多分オレ叫びますよ」


 「それはそうなんだけど。できることならもっと普通に怖くしたいの」


 「私もメイクをしないから、この手の力になれそうもなくて」


 まあ竜胆ったら。すっぴんでそんなに綺麗なの。今の言葉で何人かの女子達を敵に回したわよ。


 「にしてもな普通のメイクならともかく、オレもお化けメイクなんてやったことないぞ。しかも怖くてかつまともになんて無理難題もいいところだ」


 「まあ、やってみてよ。大丈夫。みんな失敗してるから」


 「それ崖っぷちじゃね。松川さんはオレが顔に触ってもいいわけ?」


 オレは自分の顔を鏡でしげしげと眺めている松川さんに尋ねる。


 「どんとこい」


 やだ、男前。


 「とりあえずお化粧落としてきてください」


 「おっけー」


 松川さんはメイク落としを持つと、化粧室へと向かった。


 「さてと、アリア。袖をまくってくれ」


 「……要求は手錠を外せじゃなくていいの?」


 「そっちで」


 道理で手が動かしにくいと思ったら、そうだった。オレは手錠をしているんだった。こんなに手錠が馴じむとは、なんて罪な男なんだ。


 「アリア」


 「ありがとう。りんちゃん」


 竜胆が神楽坂さんからもらってきた手錠のカギをアリアに投げてわたす。アリアはそれを振り向きざまに受け取るとオレの手錠を外した。


 え、今のかっこよすぎん。何その以心伝心具合。長年相棒だったのかな。


 「刑事さん。私がやりました」


 かっこよすぎて思わず、自首してしまうほどだ。この二人になら捕まってもいい。


 「自首なら交番行ってね」


 「あなたたちに捕らえられたい!」


 「……さっきは抜け出したくせに」


 「捕まえ方が悪いよ」


 「……」


 ガシャン。


 あれ?アリアおかしいよ。また手錠がオレの手首にはまってるよ。


 「今度は腰ひもも持ってくるね」


 そんな笑顔で言われても。


 オレたちが手錠で戯れている間に松川さんが化粧室から帰ってきた。松川さんに向かい合って座る。


 さてどうするか。お化けらしくというとやっぱり顔は青白くしたいよな。でもさっきみたいにやり過ぎないように。あとは隈とか濃くかくか。それで唇とかを鮮やかな赤色ですこし長めに書いてやれば、それらしくならないだろうか。


 まあ、やっていきますか。オレは近くにあったお化粧道具を手に取った。ごめんなさいね。ガチャガチャうるさくて。



 お化粧を割と順調に進めていく途中で二人に気になっていたことを聴く。


 「そういえば、二人は何の係なんでしたっけ」


 オレの両脇を固めるように座り、お化粧を覗き込んでいたアリアと竜胆は答える。


 「私は長い猫じゃらしで首筋を撫でる役よ」


 ああ~あったなそんなポジションも。華恋のスライム係に通じるものがあるポジションだよね。まあ、竜胆は男嫌いというものがあるからな。他のお客さんに触れられそうなポジションは厳しいのだろう。


 「私は宣伝役かな」


 「オレと同じだったんだな」


 宣伝役はシフト時間、お化けの格好をして看板を持って校舎中を練り歩く係だ。女子は白いワンピース、男子はtheお化けというようなでっかい白い布をかぶる。


 なおオレは鎧を装備しようと思っていたのだが、人がたくさんいるなかで、視界が狭く、固い鎧を装備することは危険なので却下された。まあ、近くの小学生とかも来るからな。


 ということで鎧はしっかり固定されて教室の壁際に立っている。なお中にはライトが仕込んであり目の部分から光が出るようになっている。なお手動だ。なので鎧光係がいる。


 「試着はちゃんとしたほうがいいぞ」


 「経験者は語るってやつだね」


 そうそう。あの時は焦ったな。小島が。


 よし。松川さんも中々いい感じに仕上がったんじゃないか。


 「ああ、そういえば。オレ黒猫のコスプレ持ってんだけど……」


 「日下部くん」


 ここで使えないかな。そう言い切る前に、手が重く肩にのしかかった。振り向かなくてもわかる。神楽坂さんだ。まさかこれだけの情報で華恋要素を捕捉したというのか……!


 「華恋が着用したという黒猫のコスプレが家のどこにもないんだけど。誰かからの借りものだから家にないんだとそう思っていたんだけど」


 もう片方の肩にも手が乗った。呼吸音が聞こえるほどに神楽坂さんの顔が後ろに迫っている。


 オレを助けを求めようと左右に目線を走らせる。


 二人とも松川さんやほかの女子達といっしょに出来上がったお化粧を見てキャッキャしている。ありがとうございます。それだけ喜んでもらえてすごくうれしいです。でも、あの、それの殊勲者がピンチですよ!


 「まさか日下部くんが持っているなんて、ないよね」


 「まさかぁ」


 「じゃあ、その日下部くんが持っているコスプレ見せてくれる?当たり前だけど私、わかるよ?」


 華恋が着用したか否かをですか……


 いやでも華恋が着用してから、数日たっている。これはワンチャン。


 オレはゆっくりと立ち上がると、自分のロッカーまで移動する。背後にはもちろん神楽坂さんがついてくる。


 カバンを開ける。


 オレは黒猫のコスプレを神楽坂さんに手渡した。その瞬間。


 「キシャァァァァァァ!」


 キャァァァァァァァァ!





 神楽坂さんの係が黒猫係に変更になりました。


 はい。それ以外特筆すべきことはないです。



プリ◯ネではキャルちゃんが好きです。

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