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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
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彼らは文化祭前日を過ごす

 さて文化祭の準備期間は流れるように過ぎ去り、とうとう文化祭前日となった。


 まさに光陰矢の如しだ。


 このことわざだが昔の速いもの代表といえば矢だったのだろう。今となっては時代遅れと言わざるをえない。確か矢のスピードはだいたい時速200キロぐらい。時速200キロだと、野球ボールだったらキャッチするし、テニスのサーブだったら打ち返す。人間が反応できる速度を速いもの代表にしていいのだろうか。いや、よくない。


 そこで提案するのが弾丸。これからは光陰弾丸の如しを使おう。字面もかっこいい。


 さてオレたちはクラスをお化け屋敷へと変貌させている真っ最中だ。テーマは洋館風お化け屋敷。とあるパーティーの日、虐殺の宴が行われた過去がある廃墟の館に忍び込むという設定だ。うん、そんな怖すぎる設定決める必要あった?


 3クラス合同でやるから、しっかりとしたイメージの共有が必要?そうですか。やばいですね♪


 さてさて順調にお化け屋敷が出来上がっている。暗幕を窓につけ、段ボールやら学校にあったパーテーションやらで教室をしきり順路を作る。


 ん?順調?不味い!


 オレはキョロキョロと小島を探す。いた。教壇近くで偉そうに指示をしている。全く何様なんだろうか。この一大事を気づいていないというのに。


 「小島、小島!」


 「却下だ」


 「おい戯れは後にしてくれ。今はお前のおふざけに付き合ってる場合じゃないんだよ」


 「おまいう。これでしょうもないことだったらぶっ飛ばすからな」


 「ああ、今回は本気だ」


 オレの本気が伝わったのだろう。小島は聞く体勢をとる。委員長も近くへと寄ってきた。


 「今、この状況をどう見る」


 オレはクラス中を見回して聞く。


 「この状況?えっと……準備は順調に進んでいるようだな。この調子で行けば間に合うだろう」


 「そうだ。その通りだ。なんだわかってるじゃないか」


 小島の反応が鈍い。何故だ!何故ここまで辿り着いていてわからないのだ。ここで示している事実は一つだろう。


 「いいか。よく聞け」


 「おう」


 「このまま順調に準備が進んだら……」


 ごくりと小島の喉がなる。委員長は冷めた目でオレを見ている。


 「文化祭前日学校お泊りイベントが起きない……!」


 「はい、解散」


 小島はオレから背を向けて、クラスへの指示に戻り。委員長は絶対零度の瞳でオレを一瞥すると、今にもその辺にツバをはきそうなやさぐれた雰囲気で去っていった。


 「バカ野郎小島!何!スマートに仕事を進めているんだ!やめろ!」


 「斬新な怒られ方だな」


 ツッコミをする時も、もうこちらを見ない。オレをおざなりに扱うとは、どうしてくれようか。いいのか。お前にへばりついて仕事の邪魔してやってもいいんだぞ。こちらとしてはそれで仕事が遅れるなら万々歳だ。


 オレの怪電波をキャッチした小島は、指示を出し終えてこちらに向き直る。


 「いいか。日下部。まず第一に男子と女子が一緒に泊まることは流石に嫌だと思うぞ」


 「何言ってんだ。当たり前だろ」


 「おお。そんな急に普通の反応されても困る。いや、別の教室で過ごすとかでもちょっと厳しいと思うぞ。女子からの反対意見がたぶん出る」


 「気遣い屋さんのオレがそのことを考えてないわけがないだろ」


 「気遣い屋さん(笑)」


 「男子は帰ればいいと思う」


 「おい(怒)」


 「何だ?女子と一緒に泊まりたいのか。流石にそれは思春期が過ぎるぞ。僕」


 「やめろ。オレをエロガキみたいな扱いするな。準備のために女子だけ居残りさせたら、それはそれで男子の株がダダ下がりだろ」


 「確かに」


 確かにそれはまずい。準備をしている光景はお泊りイベントの絵としては弱い。大体のイベントでは文化祭準備なんてのはただの口実で実際はほとんど真面目に準備なんかしていないじゃないか。


 そうだ。つまり結論は一つ。


 「小島。オレが間違っていたよ」


 「あ、このセリフ前にも聞いたな。確かボケの前振りだったやつだ」


 「準備を速やかにすませよう」


 「正論を言うんかい。ボケないんかい」


 「そして女子だけ学校に泊まろう」


 「ボケるんかい。というかその行為に何の意味が……ちょっと、そこの女子の皆さん。それならいいかもみたいな顔しないで。ダメだからな」


 「お前は何の権利があって人の自由を奪うんだ!」


 「主人公みたいなセリフを吐くな変態が」


 うーん。小島が辛辣。


 「日下部よく聞け」


 「ねー。小島君ったら。真面目過ぎてダメよねー。これぐらいお目こぼししてもいいのにねー」


 「「「そうよ。そうよー」」」


 「やめなさい。女子の味方を増やそうとするのやめなさい。てかなにその日下部の声。ほとんど女子の声じゃん。怖い」


 何故かオレを戦々恐々とした様子で見る小島。何でそんな反応するんだろうか。精々、街中で小島に会ったらこの声で後ろから話しかけようと思っていたぐらいだ。くはは、小島がどんなリアクションをしてくれるか楽しみだよ。


 そんな小島を傍目に見ながら、オレの味方になってくれた女子の方へ行って囁く。


 コショコショコショコショ


 チラっ


 クスクスクスクス


 「一番怖いやつ!こそこそ話からのこっちチラッと見て忍び笑い!最悪のコンボだ!何を囁いたんだ日下部!」


 「今朝、卵を割ったら中身を捨てて、殻をフライパン入れたんだ」


 「よくあるクスッとエピソード!何故今ここでその話!」


 「小島。そろそろ真面目に働かないか」


 「てめぇ」


 「はいはい。そこまで二人とも」


 オレと小島の間を遮るようにして手を入れる委員長。その手には生徒手帳。


 「日下部くん。君の提案だけど叶わないわ」


 「叶うね。人の願いは想いは必ず夢に届きうる」


 「お前、適当にカッコいいこと言えばいいと思ってね」


 「なるほど。小島は今の言葉をカッコいいと思ったのか」


 「その含みのある言い方やめい」


 「オレもそう思った」


 「最悪だ」


 パンと拍手が一つ。叩いたのは委員長だ。


 「二人とも黙って聞く」


 「「すみませんでした」」


 すぐに委員長の前へと正座して座る。


 はぁぁぁと深ーいため息をつく委員長。お疲れのようだ。小島はちゃんと委員長のことを支えてやらないとダメだぞ。


 「日下部くん。そもそもの話、校則で禁止されているので、学校に泊まることはできないんですよ。女子の意見とか関係なく」


 「え?」


 オレから意図せずに驚きの声が溢れる。


 委員長はオレに生徒手帳を手渡す。オレは震える手で生徒手帳を受け取り開く。


 そしてそのページへとたどり着いた。その情報が脳へとたどり着いた瞬間、オレの手からこぼれ落ちる生徒手帳。


 「そんな、そんなバカなことがあるかよ……!」


 「事実です」


 「だって、文化祭だぞ……その前日なんだぞ……」


 「だとしてもです」


 「何を持って、彼女たちの青春を奪うというんだ!」


 「ルールですから」


 「なんでこんなおかしなルールが」


 「まあ、そういう時代ですから」


 「時代……か」


 オレはその言葉にうなだれて、両手を床に打ちつける。


 白く細い手がオレの前に落ちていた生徒手帳を拾う。


 「わかったら。さっさと働いてくださいね。明日の朝も早いですから」


 冷たい声でそれだけ言うと。遠ざかっていく足音。


 いや、もしかしたらオレの意識が遠くなっているだけかもしれない。


 「オレは……無力だ……」


 絶望がオレを襲う。校則(大きな力)の前にオレは手も足も出なかった。


 オレにはまだ力が足りない……


 だが、ここで立ち止まっていいのだろうか。


 否だ。


 オレの心に目に光が灯る。


 打ちのめされたと自覚したのなら、やることは一つ、立ち上がることだ。そして進むこと。


 差し当たっては人手が要りそうな作業を手伝いに行こう。オレの力を必要としてくれる人はきっといるはずだ。


 オレたちの文化祭準備はここからだ!










 「今の茶番、なに!?」


 いいから働こうぜ小島。

 

このクラスの委員長は小島です。宗介は副委員長である夏目さんを委員長と呼びます。


何でこんな面倒な設定にしたんだ……

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