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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第四章 文化祭がこんなに楽しい
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彼は黒猫と出会う

 さて、無事鎧の解呪に成功したオレは小島の頼みに応えるべく行動を開始した。


 高校近くのお店を回る前にまずは学校で探すべきだろう。学校でもダンボールを回収し、ゴミ捨て場に置いてあるはずだ。もうどこかのクラスにとられているかもしれないが、大した手間でもないし確認しておこう。


 オレは校舎裏のゴミ捨て場へと向かう。校舎裏といえば小説ではイベントが起きやすい場所だ。告白場所になったり、不良の溜まり場になったりと。まあ、今時そんなことが起きるはずもないか。精々魔法少女が現れるぐらいだ。事実は小説より奇なり。


 オレは立ち止まった。目の前に現れたのは黒猫。前を横切るかと思い、阻止しようとサイドステップで追従しようとした矢先になんとその黒猫はオレの前で止まったのだ。


 ニャー


 お座りしてオレに向かって鳴く。オレは既に警戒体制だ。なんだこのアニメの導入みたいな状況は。


 姿勢を低くしてじりじりと黒猫に向かって歩み寄る。いつだ?いつしかけてくるというんだ。まさかやはりオレを魔法少女にする気か。いや、あれは白色だから別だな。黒猫と言えばルナとかジジとか。結局魔法少女系統に落ち着くな。


 ニャオン


 おお、いい毛並み。



 ***


 

 「那奈ちゃん。こんなところに呼び出して、どうしたんだい?」


 「覚えてる?岬ちゃん。ここで何があったか」


 カサカサカサカサ


 風が二人の髪を揺らし、葉っぱを舞い散らせる。


 「勿論さ。ここで君に告白を受けた。忘れるはずがない。ずっと口説いていたのは私だったというのに、急に呼び出されて告白されるのだから」


 「仕方ないでしょ一回ぐらい校舎裏で告白っていうイベントこなしたかったんだから」


 「那奈ちゃんもあれだよね。ちょっと変可愛いよね」


 「も、もうそんなに褒めてもなにも出ないんだからね。だってもう全てをあげてるから」


 「うん、可愛い」


 「じゃあ」


 「ん?」


 「私がなんでここに呼び出したかわかる?」


 「おっと。そうきたか。も、もちろん」


 ガサガサガサガサ


 風が吹いていないのに、茂みが揺れる。先ほど揺れた木よりも激しく。


 「「……………。」」


 ………………。


 「誰かいるのか?」


 「…………ニ、ニャー」


 ニャー


 「ニャッ!」


 「なんだ猫か」


 「二匹もいるみたいだね。ってそんなことはどうでもいいの!で、私の気持ちわかるの?」


 「もちろん、わかるさ」

 

 そう言って視線をさ迷わせてから、手を相手の顎に添える。


 「最近、劇の練習もあったりして、若干苺ちゃんと一緒にいる時間が長いから嫉妬しているんだよね」


 「そうだけどそうじゃないの」


 「あー……」


 言葉に迷い、さらに視線が泳いだ。


 「わからないんだ……もう!岬ちゃんの馬鹿!鈍感主人公!もう知らない!」


 「那奈ちゃん!待って!」


 「待たない!」



 ……………………………………。



 「やれやれ…………」


 おお。鈍感系主人公だ。


 「とりあえず、その茂みに隠れてる人出てきてくれるかな。ちょっと恥ずかしい所を見せちゃったからね。記憶を消しておきたいんだ」


 殺意の波動。


 「……。何をするつもりですか?」


 オレは抱いた黒猫を盾にしながら茂みから出てくる。


 「何だ。君か」


 あきれたように海神先輩言った。


 「言っときますが、最初にいたのはオレですからね」


 黒猫に導かれるままに遊んでいたら、校舎裏に二人が来たからびっくりした。


 「で、追いかけなくていいんですか?」


 「君は話を聞いてたのかい?」


 「まあ、最後の方は声も大きかったですし。読唇術で最初の方も会話を見ようと思えば出来ましたけど、まあマナー違反かなと思いました」


 「読唇術……君は相変わらず何でもできるな」


 「何でもはできないですよ。できることだけ」


 「何でそんな当たり前のことをドヤ顔で?」


 「ジェネレーションギャップ!知らないのか、らいでん!」


 「一つ違いだろうに。誰だらいでん。ツッコミする前にボケを積み重ねるんじゃない」


 無理です。脊髄反射なので。つい口に出して唱えたい日本語ですよね。


 で、最初の問いの答えを聞いてないんですが。オレはそう目で問う。


 「いや、まあ君の言いたいことはわかるんだけどね。情けないことに彼女の気持ちがわからなくてね。このまま追いかけていいもんか」


 「いいんじゃないですか。とりあえず、ごめんよ子猫ちゃんとか言っておけば。追いかけないよりははるかにましでしょう。ねぇ子猫ちゃん」


 ニャウ


 「わかりにくいから、同じ文で異なる子猫ちゃん使うのやめてくれるかな?ていうかその子猫は?」


 「先ほどそこで会いまして。おそらくそろそろ人の言葉を喋ります」


 「相変わらず君は妄想がはかどっているようで」


 「オレほど現実を謳歌している人もいないんじゃないでしょうか」


 その言葉に先輩はそうかもなと答えた。そして少しだけ寂しげに笑った。


 「最近、忙しくてね。劇の練習もあるし、部活の出し物準備もある。だけれどみんなとの時間を偏らせるわけにはいかない。うまく調整していたつもりだったんだが、こういうことが起きてしまった。やはり現実はそう簡単にうまくいかないな」


 「そんな深刻になることですかね。あれも恋愛の駆け引きってやつなんじゃないですか。恋愛なんてしたことないですが」


 「それでもだよ。彼女の気持ちが察してあげれなかったのはこちらの落ち度だ……………やっぱり、百合ハーレムなんて無理だったのかなぁ」


 そんな泣き言を、寝言を言う先輩。ひさしぶりに、きれちまったぜ。


 「先輩……………目を瞑って歯を食いしばってください」


 その言葉に先輩は目を丸くした後、特に反論することなく従ってくれた。ふむ、覚悟はできているようだな。よかろう。くらえ!


 「先輩のバカヤロー!」


 ニャー!


 ぷに。


 「…………え、何今の?」


 眉間にしわを寄せながら言う。


 「誰もがノックアウトされる魔性の猫パンチです」


オレは猫を持ち上げてみせる。


 「いいですか。先輩。先輩が一番に優先するべきことは何ですか?」


 「一番優先するべきこと……」


 「もちろん文化祭のことではありません!それは百合ハーレムを存続させることです!」


 なんだその腑抜けた面は!まだ黒猫先輩の喝が足りないというのか。


 「文化祭なんて些事ですよ。劇も部活の出し物も百合ハーレムに比べたらどうでもいいことなんです!」


 「……………相も変わらず君はバカだな」


 「うるさい!バカ!」


 「おおう」


 オレは黒猫を置くと、先輩の胸倉をつかむ。


 「だってどれもこれも全部の根幹は、百合ハーレムなんですよ。先輩の根幹はそれなんです。先輩の全てなんですよ!百合ハーレム以外は大事じゃないでしょう。百合ハーレムから全てが始まったのなら百合ハーレムを優先することは当たり前のことです!」


 ニャー。


 そうか。君もそう思うか。


 「ごめんね。そんなに百合ハーレムを連呼しないでくれ。なんだか恥ずかしくなってきた」


 「うるせぇ!」


 「ええ……」


 百合ハーレムは恥ずかしくない!


 「他のものには先輩の代わりはいくらだっている。だけどこのことだけは先輩の代わりは誰もいないんですよ。そんなに忙しいなら劇のことだって部活の出し物だって先輩の仕事いくらでも手伝いますよ」


 現にオレは今日、遊んでいた……わけではないけど。今やらなくていい仕事をしてたわけだから。


 「だから先輩。何よりも彼女たちを優先してください。それが鈍感ハーレム系主人公っていうもんでしょ」


 その言葉を聞いて。先輩は深くため息をついた後、不敵に笑った。オレは先輩の胸倉から手を離した。瞳に力がもどった。いい目できるじゃねぇか。


 「まさか他人に私の恋愛をこんなに応援されるとは思わなかったよ。さしずめ君は、主人公の親友役かい?」


 「いいですね。オレは割とそのポジションのキャラ好きですよ」


 先輩は大きく一度伸びをすると、顔を両手でパシンと叩いた。うへぇ。痛そう。


 「とりあえず、那奈ちゃんを追いかけるとするよ。きっと那奈ちゃんも追いかけてくるのを待ってるから」


 「まあ、馬場先輩ならそうでしょうね」


 「那奈ちゃんの気持ちはまだわからないけど、自分の気持ちは定まったからね。とりあえず愛を囁いてくる」


 「いいですね。その意気です。まあ推察するに、馬場先輩は自分が校舎裏で告白するシチュエーションに憧れていた。つまるところ攻めですね。つまりはお姫様役の先輩に迫る王子様役というシチュエーションに嫉妬していたんじゃないですか?」


 先輩をそれを聞いて、大きな声で笑った。


 「いや、本当に君は何でもわかるんだな」


 「何でもわからないですよ。わかることだけ」


 「そうか」


 先輩はもうこの言い回しにはつっこまないようだ。しまった。どうしよう。これがオレの言葉だと思われたら。それは由々しき事態なのでちゃんと原作も布教しよう。ん?由々しき?ゆゆしき。よし、ゆ〇式も布教しよう。


 「ところで読唇術を使っていたようだけど、マナーはどこにいったんだい?」


 「しまった!誘導尋問か!」


 「ただの自爆だね」


 「だって仕方がないじゃないですか!付き合ってる二人が校舎裏にいるんですよ。もっと楽しそうな会話していると思うじゃないですか!」


 「開き直らないで、反省したまえよ」


 「いや、まあ嫉妬する馬場先輩というのも、いとをかしでしたけどね」


 「反省しろ」


 「どうもすみませんでした」


 土下座した。


 ほら君もその大きな耳で盗み聞きしたんだろう?同罪だぞ。一緒に謝って。ほら、ごめんにゃさいって。


 ニャニャ


 「ま、的確なアドバイスもあったし、プラマイゼロかな」


 へへー。


 「後輩くん」


 「はい」


 「ありがとう」


 「それは今度是非馬場先輩と一緒に言いに来てください。できれば手を繋いでか腕を組んで」


 「考えとくよ」


 そう言って先輩は走り出した。オレは立ち上がると、膝の土を叩いて落とす。すると少し行ったところで先輩は立ちどまり振り返った。


 「ああ!そうだ後輩くんー!」


 「なんですかー!」


 「現実を謳歌する君に朗報だー!」


 「なんですかー!」


 「学校で鎧の騎士がでたそうだよー!黒猫よりもワクワクするだろー!」


 「それオレですー!」


 「働けー!」


 働いてたもん!


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