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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
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少女たちのスタートライン

 「お」


 「こんにちは、そーくん」


 放課後、部室に来るとすでに唯織が来ていた。手には包帯を目には眼帯をつけて、髪をツインテールにした唯織がいた。


 「結局、格好はそのままなんだな」


 「うん。もう慣れちゃって」


 そう言って唯織は包帯を撫でる。それは何だか愛おしげで、慣れ以外の理由があるような気がした。まあオレの主観だが。ただオレが包帯に愛着があるせいかもしれない。おっとオレが巻いていたのは包帯ではなく聖布だった。


 「でも、これにいつまでも頼っちゃいけないんだけど」


 「それは、どういうことだ?」


 「これをしてないとスラスラ喋れない」


 なるほど。キャラを下ろして喋りを滑らかにしているということだろうか。


 「だから、そーくん。協力して欲しい」


 別にそれでもいいんじゃないかと言おうかと思ったが、やめた。唯織は決意を宿した目をしていたから。どうしてそんな人を止めることができるだろうか。


 「いいよ。オレに何ができるかわからないけどな」


 「大丈夫。包帯とか眼帯がない状態で会話をして欲しいだけだから」


 「それぐらいだったらオレにもできるな」


 「ありがとう。じゃあ私の家で二人きりでね」


 「了解」


 ん?


 その限定条件はなぜ?そんなオレの疑問を察したのか、唯織は俯き気に言う。


 「だって誰かに見られるのは恥ずかしい……」


 「なるほど。それは仕方がないな」


 それもまた練習で克服するだろう。


 「そういえば、自惚れではなければその格好ってたぶんオレの真似だよな」


 「うん」


 「ツインテールは何を参考にしたんだ?」

 

 「え?だってそーくんはツインテール好きだよね」


 「ツインテールが嫌いな男なんているかよ」


 全く何を当たり前のことを言っているんだろう。その二つの髪の房には全ての男の子を魅了する魔力が込められているんだ。


 オレなんてあずにゃんが好きで、リゼが好きで、綾ちゃんが好きなんだからな。ツインテールこそ至高。特に黒髪が好き。


 なお、勘違いしないでほしいのは推し以外の女の子たちも大好きだということ。そこには微かな差しかない。それはハンバーグとラーメンどちらが好き?と聞かれてるようなものだ。どっちも好きに決まってんだろ。


 「だからツインテールにした。そーくんが好きな髪型。だって私たち友達だからね」


 「なるほど?」


 アリアもよく竜胆の髪を好き勝手に弄ってるし、それと同じようなことだろうか。


 「唯織もオレの髪を弄るか?」


 とか言ってみたり。いじれる髪なんてないけどな。別にハゲってわけじゃない。最近、髪を切ってしまって短髪にしているだけだ。いじれる余地がないというだけだ。


 「いいの!?」


 なぜか唯織は食いついた。


 「いいけども」


 「じゃ、じゃあツインテールにしたい」


 あー女装しろってこと?


 女装しました。いつもは黒髪ロングなカツラを使っていたが、今日使っているのは黒髪のツインテールのカツラだ。この部室はなんでこんなものが置いてあるんだろう。いや、これ唯織が弄っているわけじゃないな。


 「はわわわ」


 「唯織?」


 「至高」


 そうなんだよ。ツインテールはそうなんだよ。唯織が満足ならそれでいいです。


 「だ、抱きついてもいい?」


 「それは不味くないか」


 「友達なら普通」


 む。そういえばアリアはいつも竜胆を抱きしめてるな。確かに友達なら普通なのかもしれない。


 唯織ははぁはぁと息を荒げながら、腕を大きく広げる。なんでかオレは背筋に悪寒が走ったので思わず身構える。ジリジリと緊張が二人の間に走る。


 先に動いた方が負ける……!


 「何をやっているんだい?君たちは」


 部室の入り口を見ると呆れたように海神先輩が立っていた。


 「「友達とのじゃれ合い」」


 「それが?友達いたことないの?」


 「ぐふっ」


 「い、唯織ぃぃぃぃぃ!」


 なんてことを言うんだ先輩は!唯織の傷を的確に抉るんじゃない。


 オレは倒れた唯織の上体を起こす。


 「そ、そーくん。私たち友達だよね。今度は私の勘違いじゃないよね」


 「そうだぞ唯織。オレたちは友達だ」


 「……何を見せられてるんだ。私は」


 はぁ〜と随分と深ーいため息をついた。失礼な先輩だ。みんな大好き感動の友情ものだぞ。

 

 「こ、こんにちわ」


 「おお、アリアちゃん。来てくれて助かったよ。この二人の相手は私でも疲れてね。もはや二人の可愛さだけじゃまかないきれないぐらいに」


 海神先輩に続いて、アリアも部室へと訪れた。まだまだ本調子ではないアリアだ。なんせ反応は鈍いし、なんだか顔は赤いし。そんな無理して学校に来ることないのに。


 まあオレは中学入学から今まで皆勤だがな。あまりにも健康すぎる。姉からはやっぱりバカだと風邪ひかないのねと評判だ。なお姉も風邪をひいているのをみたことがない。特大ブーメラン。


 部室に現れたアリアとオレに抱えられている唯織の目がバチっとあった。


 「何してるのかな?宗介くん。黒崎さん」


 「「茶番」」


 「そうじゃあ、そろそろ立ち上がったら?床は汚いじゃないんかな」


 それもそうか。オレは唯織の手を引っ張って立たせてやる。その間も唯織はアリアをずっと見つめていた。


 「私、あなたに聞きたいことがあったの」


 「私に?」


 唯織の言葉にアリアは不思議そうな顔をする。何を聞かれるか想像がつかないんだろう。


 「そーくんにお見舞いに来てもらったんだよね」


 「な、なんで知ってるの!?」


 「……もしかして自分の部屋で二人きり」


 「そ、そうだけど。別にちゃんと家には他に人がいたし」


 「何かあった。そーくんと?」


 「ななな、ないよ!何にもなかったよ!」


 「じゃあなんでずっとそーくんの方を見ないの」


 「それは……」


 唯織が問いかけるたびにアリアの方へと距離を詰めていく。逆にアリアは一歩ずつ下がっていく。


 「で、宗介くん何があったんだい?」


 先輩がこちらに近づいてきて、こそこそと聞いてくる。


 「まあ、色々あったんですよ」


 こそこそ聞いても教えないよ?アリアの尊厳にために。


 アリアは部屋での姿を見られたり、風邪で弱ってつい手を握ってもらったりと、それはもう素に戻ったらベッドの上でのたうち回るぐらいのことはあった。


 むむむむとアリアを見続ける唯織とそれから顔を背け続けるアリア。

 

 その何だか和む攻防は唐突に終わりをむかえる。


 「「「「「こんにちは〜」」」」」


 他の先輩たちの来襲によって。


 入った瞬間目に入るのは壁際で唯織に追い詰められているアリア。


 「「「「「おお〜ごゆっくり〜」」」」」


 感嘆の声を出してそのまま回れ右して出ていく先輩方。良くわかってらっしゃる。オレも先輩を連れてその後ろに並ぶ。ほら先輩も行きますよ。私も追い詰められたいじゃないんですよ。


 「誤解です!宗介くんはわかってるのに出ていかない!」


 シュバっと唯織包囲網から抜け出したアリアがオレの首根っこをつかみながら叫ぶ。


 「なんだ〜」


 「ちょっとどこかで時間つぶさなきゃと思ったよ」


 「でも良かった唯織ちゃんにアリアちゃんを取られないで。なんせアリアちゃんは私ものだからね」


 「あ、ずるい。私もアリアちゃん欲しいよ」


 「ええ、じゃあ半分個ね」


 「何を言ってるんですか!アリアは細胞一個まで竜胆のものです!」


 「宗介くん黙って」


 どこまで本気か、ほっとしたような表情で部室へと戻ってくる先輩方。一気に騒がしくなったな。


 「じゃあ私は唯織ちゃんをもらっちゃおう」


 「私も〜」


 さっきのアリアを詰めた勢いはどこへやら。唯織は流されるがままに先輩に連れていかれてしまった。


 椅子に座らされお菓子を与えられている。


 「はぁはぁ。唯織ちゃんは本当に小さくてかわいい」


 「ちょっとだけその眼帯を外してみない?」


 「いや」


 「「かわいい〜」」


 「私も唯織ちゃんみたいにツインテールにしようかな。唯織ちゃんとおそろい〜」


 その場合、オレともおそろいになりますね。


 唯織は先輩に鬼可愛がりされながら話している。そっけない風だけど、やっぱり楽しそうだった。オレではあんな表情を引き出せないように思う。だからよかった。


 「ねぇ。宗介くん」


 「んー」


 唯織と同じように先輩に絡まれてようとしていたアリアも脱出してオレの横へとくる。


 「黒崎さんと何かあった?黒崎さんの雰囲気もいつもと違う気がする」


 「そうか?」


 「そうだよ」


 オレにはそんな違いがわからないが。まあ別に劇的な何かがあったわけじゃないんだよな。


 「ただ友達になった。それだけ」


 「元からそうだったよね?」


 アリアは不思議そうな顔をする。


 側から見ればそうだったかもしれないな。


 でもオレは詳しく説明する気はなかった。


 なんせこれはオレと唯織の黒歴史なのだから。流石のオレでもこれを人に話すのは恥ずかしかった。オレのカッコ悪いところしか出てこないからな。


 「なんだ、もっと仲良くなったってことだ」


 オレはそう言ってごまかした。


 「ふーん……」


 何だかアリアは納得いってない風だ。でも悪いな。これは昨日のアリアと同じようにお墓まで持っていく話だからな。


 「そういえば、宗介くん。昨日のお礼ちゃんといってなかったよね」


 「おお、なんだ。突然。別にいいよ。アリアは覚えないかもだけどちゃんとお礼言われたし。あと急に声大きくない?」


 隣の人と話す声の大きさじゃないよね。ちょっと部室が静かになっちゃったじゃん。


 「おっとごめんごめん。でもちゃんとお礼を言わせて」


 そう言ってアリアはオレの顔を見る。


 「昨日はお見舞いに来てくれてありがとう。飲み物とかスイーツとか持ってきてくれてありがとう。私の愚痴、みたいなものも聞いてくれてありがとね」


 別にいいさ。誰かに弱音を聞いて欲しい時だってある。だって人間だもの。


 というか何回もありがとうって言われると照れる。


 「あと……」


 「あと?」


 あとオレがしたことといえば。ここで言っていいのかと聞く前にアリアは言葉をつないだ。

 


 

 「私が眠るまで手を握ってそばにいてくれてありがとう。嬉しかった」


 


 部室が黄色い悲鳴ではぜた。

これにて第3章は終わりになります。

次章は楽しい文化祭偏になると思います。よろしければ引き続きお願いします。


感想、ブックマーク、評価、誤字報告、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] おやおやおやおや
[良い点] 激アツ
[良い点] アリアさん………?外堀埋めにかかってる?
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