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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
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彼だってテスト勉強をする

 明日から4日間連続でテストが始まる月曜日。オレは部室にいた。もちろん部活をしているわけではない。テスト前最後の追い込みである。


 最初は図書館や自習室に行くつもりであったが、どこもかしこもテスト前に慌てた生徒だらけだった。やれやれこれだから、コツコツと計画的に勉強しない生徒は。


 ということで流浪の民となったオレは最終的に部室へと辿り着いたのであった。顧問の先生に事情を話したら鍵も貸してくれた。


 家?いや家はほら。いつ姉ちゃんにパシられるかわからないから。私とテストどっちが大事なの?とわけわからんこと聞いてくるから。「テストに決まってるだろ」と言うと、「そう、つまらない男になったわね」「なんだと!」と言ってパシリを引き受けるまでが一連の流れだ。なんでそこまでわかってて回避できないのか。姉ちゃんにだけは舐められちゃいけないと本能的にわかっているからだろう。


 え?舐められてる?そんなバカな。


 そんなことより明日のテスト教科は。


 ガラガラ


 「おっ」


 「「あっ」」


 入ってきたのはアリアと竜胆。


 「あなたもここにいたのね」


 「おう」


 「もうひどいよ宗介くん!何でそんなことするの?」


 「突然どうした」


 アリアは何故か半泣きでこちらに詰め寄ってきた。オレは今日は本当に何もやっていない。


 「はぁ。気にしないで日下部くん。アリアは勉強をしたくなくて駄々をこねてるだけだから」


 「高校生がそんなことある?」


 「どこにも勉強する所がなかったら帰ろうってアリアは言ってたんだけど、日下部くんが部室を空けておいてくれたおかげでアリアは勉強しなくちゃいけなくなったわけよ」


 「勉強なんて嫌い」


 「よくそれでこの学校に入れたな」


 「それは……」


 よく考えたらオレも別に勉強は好きなわけじゃなかったな。目的のために頑張っただけで。


 「なるほどな。竜胆と同じ高校に入りたいがために頑張ったんだな」


 「「…………。」」


 ふぅ〜⤴︎


 顔真っ赤にしちゃって〜


 「ごほん、前回のテストではもう高校生なんだから大丈夫と思って放っておいたんだけど、案の定ね」


 「ほー」


 「ねぇねぇ日下部くんは前回のテスト何位だったの?」


 アリアが仲間を欲しそうな目でこちらを見ている。甘いな。オレがこうして真面目に勉強しているの見えてないんか。あとたとえオレが仲間でも勉強をしない理由にはならないからね。


 「48位」

 

 「あら」


 「うそ……」


 残念。実は上位20%に入ってるんでした!まあ最初のテストだから。ここからたぶん上下はするけどね。


 「ちなみに私は19位」


 「わーお。いいドヤ顔」


 なおもっと知り合いの順位を言うならば小島が125位で、神楽坂さんは2位らしい。2位って。華恋が自慢をしていた。あの人は本当に妹が絡まなければすごい人なんだが。いや、妹がいるからこその結果なのか。人生というのはままならないものだ。


 「で、アリアは何位だったん?」


 人に聞いたんだから当然自分は答えてくれるんだろうな。

 

 「……230位」


 「おおう」


 200番代の選ばれしものでしたか。希少価値はオレよりあるぞ。


 「私、宗介くんよりバカ……」


 「そうよアリア。だから勉強頑張んなきゃ」


 「別に気にすることないだろ。まだ高校生活は始まったばかりだぞ。これからこれから」


 「ぐぬぬ」


 そんな上から物を言いやがってみたいな顔をされても。この話題に関しては数字上は上なんだから仕方ないでしょうが。


 「それにアリア。私はアリアと一緒の大学に行きたいわ」


 「りんちゃん……」


 「ほら竜胆もこう言ってることだし、勉強頑張りましょう。オレも協力は惜しまないから」


 アリアと竜胆の幸せなキャンパスライフのためならどんなことでもしようじゃないか。とりあえずお菓子とジュースでも用意しますかね。やっぱり勉強には糖分だよね。



 ***



 「うにゃーん」


 アリアは奇妙な声をあげて机につぶれる。休憩を挟みながらもおよそ3時間ほど勉強しただろうか。


 「お疲れ様」


 竜胆がそう言ってアリアの頭を撫でる。竜胆こそお疲れ様だろう。時に厳しく時に甘くアリアを宥めすかして勉強をする様に仕向けていた。


 アリアも勉強の様子を見るに理解力がないわけではない。ただ本当に勉強することが嫌いなのだろう。それでも頑張るのはやはり竜胆と同じ大学に行きたいから。うむ。素晴らしいことだな。


 オレはお菓子のゴミを片付けて、ジュースを飲んだコップを洗う。


 「悪いわね」


 「一人分洗うのも三人分洗うのも一緒だからな」


 水道で洗っていると竜胆がこちらに来た。三人分のコップを持って部室から出たオレを気を使って追いかけてきたのだろう。自分たちが口をつけたコップをオレがどうするか気になったのではない筈だ。それぐらいの信用はあるよね?あるかなぁ?自分の行動を思い返してみても自信はなかった。


 「そういや、残念だったな県大会」


 「一年生でそこまで進めたのも奇跡みたいなものだけどね。秋の大会ではもっと上を目指すつもりよ」


 竜胆の県大会の結果は一回戦敗退だったそうな。いつものテニスコートではなくここから遠い所のテニスコートでやっていたので観戦には行かなかった。


 次の大会は多くの一年生が出場する新人戦だろうか。テニスなどの個人競技ではレギュラーなどがないためルールを覚え審判ができるようになれば誰でも試合に出ることができる。それだけトーナメントも大きくなるわけだが。まあテニスにも団体戦はあるけどね。


 「そういえばあなたってもしかして中学の時、県大会で2位だった?」


 「そうだよ。よく知ってるな」


 「ええ。対戦相手の戦績を調べている時に偶然ね。そう……同姓同名の別人ではなかったのね」


 「日下部なんて名字もそうあるもんじゃないしな」


 少なくともオレはまだ自分の家族以外では会ったことがない。


 「だったら、その、一緒に」


 「?」


 一緒に何?なぜかそこで口籠った。


 「……やっぱりなんでもないわ」


 何を言おうとしたのだろうか。話の流れ的には一緒にテニスをやろうだが、それだと口籠る意味がわからない。んー。わからん。まあいいか。話したかったら話すだろう。


 部室に戻るとまだアリアは机にへばりついていた。金髪が机に広がっている。なんかクラゲみたい。


 「ほらアリア帰るわよ」


 「んーりんちゃーん。勉強しすぎたー熱出るー」


 「はいはい」


 勉強しすぎたってことはない。あとそれで熱も出ない。


 そんなアリアの戯言も竜胆は慣れているのかさらっと流してアリアのカバンを持つ。アリアもふらふらしながら部室から出ていった。


 「じゃあオレ鍵を返しに行くから先帰ってていいぞ」


 「はぁ、そんなことしないわ。帰る方向が一緒なんだから待ってるわよ」


 「了解。じゃあ昇降口で」


 「あの鍵が私が勉強した元凶。ちょっと貸して宗介くん」


 何をする気だよ。八つ当たりの対象がおかしい。オレは竜胆に掴まれあうあう言っているアリアを尻目に職員室へと向かった。


 少し勉強しただけでああなるなんて、アリアは日々の勉強をどうしていたんだろうか。



 ***



 そして怒涛のテスト期間も無事終了して、休み明けの月曜日。


 アリアは風邪をひいて学校を休んだ。


 ええ……本当に熱出た……

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