表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
59/142

彼は寝込みを襲われる

 「あれ、わたしたち……」


 「……。」


 「やっと正気に戻ったようだな」


 全く世話をやかせるぜ。あのお目ぐるぐるの状態のままだったらどうにかなってしまいそうだったからな。オレが。


 それはともかく。


 「とりあえずこの拘束を解いてくれ」


 まあオレをしっかりと拘束し終わってるんですけどね。


 「「…………。」」


 地べたでのたうち回るオレを無言で見下ろす二人。何でだよ。


 ちなみに姉ちゃんはオレの手と足を手早く縛って部屋に転がすとさっさと友達の家に行ってしまった。あの手早さは人を縛ったことがある人のものだった。一体どこでそんなことを。


 そしてそんなオレを一生懸命二人は寝袋に詰めたわけだ。抵抗することもできたが、無理に動いて二人を傷つけるわけにもいかないのでされるがままだった。でも知ってるか。優しさって身を滅ぼすんだぜ。あっついよ。これ冬のキャンプでも使えるやつだろ。今何月だと思ってんだ。


 「宗介。どうしよう」


 「いや普通にまずは寝袋から出してくれ。これは熱くて死ねる」


 「何の抵抗もできない宗介が地面で跳ねてるのを見てると、なんだかこう胸がドキドキしてきた」


 「よし、唯織助けてくれ」


 なんてこった。正気に戻ってない。いや、華恋も神楽坂さんの血筋だと言うことを忘れてた。まさか目醒めたというのか。神楽坂家の血が。


 「任せて。そーくん」


 「唯織……」


 「待ってて。今から郵送のための送り状を書いてくるから」


 「どこに送るつもりだ」


 そして生き物は郵送では送れないぞ。そしてあまりにも重い物は送れない。人なんてバラバラにでもしない限り送れない。え?バラバラ?


 「そーくんの安寧の地へ」


 「母さーーーーん!ヘルプミーーーー!」


 いつ以来だろうか。こんなことをするのは。もしかしたらこんなことはしたことないかもしれない。男子高校生がなりふり構わず母親に助けを求める姿がそこにはあった。


 唯織に永遠のいとまを与えられてしまう……!


 「口を塞ぐんだ!」


 「了解」


 君たちそんなに仲が良かったでしたっけ。


 「もう騒がしいわね」


 救いの神が現れた。


 地面に転がされるオレとそれを押さえつける華恋。そしてガムテープを手に取る唯織。犯行の決定的瞬間だ。


 「あらあら楽しそうな遊びをしてるのね」


 これが遊んでいるという感性が怖い。さては貴様、姉ちゃんの母親だな。


 「そういえばどうしてわたしたちこんなことしてるんだっけか」


 「ええ、こわぁ」


 今日怖いこと起きすぎじゃね。理由もなく人を拘束するとかやばい人じゃん。これも全部ホラー映画が悪い。ぜんぶ妖怪のせいだ。


 華恋は母さんにここに至るまでの流れを説明し始めた。


 「そうなの……じゃあ宗くんを縛っちゃいましょうか」


 あれデジャブ?どうしてその結論に至ったの。あとどっから出したのその縄は。それをどうするつもりなの。


 「私も流石に年頃の男女が一つ屋根の下で寝るのは認められないけど、宗くんを縛っちゃえば大丈夫。そうしたらもうただの人形だからね」


 「「なるほど」」


 「なるほどかなぁ〜?」


 「あ、でも汗臭くなるから寝袋からは出してあげましょうか」


 「「わかった」」


 「……。」


 オレの身の心配は?という言葉をグッと飲み込み寝袋から出される。ここで余計なことを言ってまた寝袋に収納されてしまうことの方が問題だ。


 あ。


 「というか姉ちゃんの部屋は鍵がかかるんだし、そこで唯織と華恋が一緒に寝れば、オレを縛る必要もないんじゃね」


 「そうね……」


 でしょ?


 「二人ともちゃんとうちの人には連絡するのよ」


 「「わかった」」


 「オレの言葉もしかして届いてない?」


 「さ、それじゃあ一緒に夕飯でも食べましょうか。今日はね丁度急に二人分の夕飯がいらなくなったから、余ってるのよ」


 「「ありがとうございます」」


 「え?それって姉ちゃんと父さんの分だよね。まさか姉ちゃんとオレの分じゃないよね。だってオレここにいるもんね」


 バタン。


 シーン。


 「……。」


 オレは余っていたポップコーンを貪り食った。



 ***



 「はい、あーん」


 「あーん」


 「あむあむ、うん食べづらい。縄を解いてくれませんかね」


 「今度はどれが食べたい?」


 「色々あるぞ。卵にすき焼き、唐揚げ、おかか」


 「全部ふりかけの種類じゃん。同じおにぎりなんだからどれでもいいぞ。とりあえず縄を」


 「「あーん」」


 「うん。二人同時に口に押しつけてくるのだけはやめてね」



 ***



 「まあ待て待て。そのDVDをどうする気だ」


 「え?折角借りたんだから見ようと」


 「いやいや、今どうしてオレがこういう状況になったのか忘れたのか?」


 「でももうどれだけ見ても状況は変わらないからいいかなって」


 「望むところ」


 「唯織、めちゃくちゃ震えてるぞ。というか華恋は実はホラー映画怖くないのか」


 「何言ってんだ!怖いに決まってるだろ!」


 「ええ……どういう感情で見るんだよ」


 「これも全ては文化祭のためなんだ」


 「たぶん役に立ってないんだよなぁ」



 ***



 「ふぅ。お風呂いただいたぞ」


 「命の洗濯」


 「いいですねーツヤツヤしていて」


 「そんな褒めるなよ」


 「照れる」


 「うん、もちろん皮肉だぞー」


 「うん、わたしたちも宗介には迷惑をかけてると思ってるんだ」


 「だから、ほら」


 「……それは?」


 「「濡れタオル」」


 「わかった。オレが悪かった。落ち着け」


 「大丈夫。丁寧に扱うからな」


 「そーくんは身を任せればいいよ。はぁはぁ」


 「本当に勘弁してください」



 ***



 ふぅ。やっと怒涛の一日が終わる。今日は放課後から密度がすごかったな。


 もう二人ともオレのベッドで一緒に寝てる。オレは床に転がされている。まあタオルケットをかけてもらってるだけましか。


 「む〜」


 誰かがうめく声がした。


 オレは恐る恐る身体をおこして辺りを見回す。


 「あつい……」


 うん。唯織が華恋に抱きつかれて呻いてるだけだった。ほっこりとした。うむ今日は良い気持ちでよく眠れそうだ。


 オレは安心して床に転がる。


 チッチッチッチッ


 時計の針の音が響く部屋の中でオレは目を瞑りまどろむ。


 ガチャリ。


 ドアが開く音がした気がした。誰かがトイレにでも行ったのだろうか。


 ズシン。


 身体に重さがかかる。もしかしてこれは金縛り……オレは今日見たホラー映画のシーンがフラッシュバックする。


 カチカチカチカチ


 奇妙な音も聞こえる。ラップ音というやつだろうか。

 

 どうする。どうするこの状況。オレは生唾を飲み込むと、真実を確かめようとゆっくりと目を開けた。


 誰かがオレの上にのっている。誰だ。この顔は、華恋?オレは安心する。なんだ華恋か。寝ているオレにいたずらでもしようというのか。油性マジックでおでこに肉とでも書こうというのか。


 いや違う。


 止まらない動悸。カラカラと口の中が乾く。警報を鳴らす第六感。これは。


 「かぐ、ら、ざかさん」


 「ねぇ日下部くん。これはどういうことかな」


 ギラリと神楽坂さんの手に持つカッターが月明かりに照らされ光る。


 「この状況がどういうことかな」


 「これは山より高く海より深い事情が」


 「そう。じゃあ詳しくお話ししないとね」


 そう言って神楽坂さんはカッターを振り上げた。


 お話とは?


 そしてカッターは振り下ろされた。



 キャァァァァァァァァァァァァ!

 

 

夢か現か……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] とりあえず主人公を酷い目に遭わせておけば、笑いが取れるんでしょ? と言わんばかりの安直な展開が、最近少し多くて鼻につきます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ