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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
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彼らはホラー映画を視聴する

 学校はテスト前の一週間に入り部活禁止期間となった。


 高校になって2回目のテストになるが、やはり中学と違い授業を聞いてるだけでは中々厳しいことがわかった。これは本気でテスト勉強に取り組まないといけないな。やっぱりオレは根が真面目だな。この高校に入学して、バイトを始めた今、もう勉強する理由などないというのに。


 「あれ?唯織?」


 下校しようと昇降口に向かっていたところ、廊下で唯織に遭遇した。


 「えっと、テスト期間に入って部活が禁止になってるって海神先輩に聞いてないか」


 こくりと唯織は頷く。


 あの先輩はまた人に連絡を忘れたのか。いや、オレも唯織に言わなかったわけだし同罪かもしれない。


 しかしどうするか。オレたち二人で部活をするわけにもいかないし。


 「あーうち来る?」


 「え?」


 そこは行く行く!だぞ。

  

 「いや冗談だ。部室でも開けるかなぁ」


 「行く」


 え?まじ?


 

 ***



 ということで帰ってきました自分の家へ、唯織を連れて。


 「ただいま」


 「おじゃまします」


 「おかえりなさーい」


 リビングから母さんの声が聞こえてくる。そしてひょこっとリビングから顔を出す。なんぞ?いつもそんなことしないのに。


 「あらあらまた可愛い子を連れこんじゃってこの子は」


 「そういうイジリはやめてね」


 「また……」


 そんな母さんみたいな反応されると対応に困る。いや、まあ紛うことなく母さんなんですけど。もしかしたら橋の下で拾ってきたのかもしれんけど。なんで子どもを捨てる、拾う定番が橋の下なんだろうか。


 オレは母さんを再びリビングに封印し、自分の部屋へと唯織を通す。よく眠れよ母さん。母さんがいなかったらリビングに通してもよかったんだが、唯織も母さんがいたら気まずいだろう。

 

 「ここがオレの部屋だ入ってくれ」


 「ここがそーくんの安寧の地」


 「ふっ、安寧とはほど遠いがな」


 「つまりそーくんは常在戦場……!」


 本当にな。せめて鍵が付いてたら姉ちゃんの進撃を止めれたのかもしれないのにな。オレは常に巨人の脅威に晒されている。


 「あ、おかえり〜」


 華恋がいた。いつも通りまるで我が家のようにベッドに寝転がって漫画を読んでいる。


 「そーくんのお姉ちゃん?」


 「いや、違うな。みんなの妹だ」


 これも違うけど。


 「あーーーーー!」


 うるさい。華恋がこちらを見て突然大声を出した。


 「また宗介が違う女の子を連れてる!」


 うん。そういう言い方はやめようね。合ってはいるけど、なんかそれだとオレが女の子を取っ替え引っ替えして遊んでいる男みたいじゃないか。全くやれやれ誤解だぜ。


 「そーくん。この女、誰?」


 唯織ものらなくていいぞ。


 華恋がベッドから跳ね起き。こちらへとずんずん向かってきて、そして唯織を思いっきり抱きしめた。


 「でも、ちょー可愛い!」


 自己紹介かな?


 「すごい髪もサラサラで肌ももちもちで小ちゃくてお人形さんみたいだ」


 「離して」


 「あ、ごめんケガしてるのか」


 おい、やめろその包帯に触れるんじゃない。


 「ケガじゃない」


 「そうなのか?じゃあ何で包帯をしているんだ?」


 「包帯ではない。護符」


 それは無理がある。


 「ほえー、何かかっこいいな」


 それもおかしい。そしたら護符だらけの神社とかはどうなる。めちゃくちゃカッコいいことになるぞ。


 いや、神社はかっこいいな。外界と切り離された特殊な空間。数多の異能バトルで戦闘の舞台に選ばれるだけのことはある。悪かった華恋。護符は何かかっこいい。


 「で、華恋は何をしに来たんだ?お菓子作りでも習いにきたのか?」


 あと唯織を解放してあげて。触れ続けると弱っちゃうから。前も森川先輩に生気を吸われてたわけだからそれぐらいで勘弁してくれ。


 「今日はそのことじゃないんだ。実は今度の文化祭でわたしのクラスはお化け屋敷をすることになってな」


 華恋はごそごそと自分のカバンをあさる。


 「それでオレにお化け屋敷の意見でも出して欲しいのか」


 「そうだ。ちゃんと教材も持ってきた」


 華恋がカバンから取り出したのは、レンタルしてきたであろうホラー映画たち。


 「「…………。」」


 思わず黙るオレと唯織。華恋はなんだか自慢げだ。なんでだ?一人でDVDをレンタルできたのがそんなに嬉しかったのか。


 オレはDVDを手に取って見る。テレビから出てくる日本のお化けのやつや、名前ぐらいは皆知ってる殺人鬼が出てくる海外の映画。などなど有名どころのホラー映画が揃っている。


 これを全部見るとか死ぬ気なのか?


 「華恋はホラー映画とか見たことあるのか?」


 このベタなラインナップで見たことあるとは思えないけど一応聞いてみる。


 「見たことはないけど所詮は作り物だろ?大丈夫。大丈夫。それに宗介がいるしな」


 ホラー映画を舐めすぎだ。

 

 「いや、オレはホラー映画見たことないから得意かどうかわからんぞ」


 「え……」


 いや、そんなに驚かれても。華恋はオレはなんだと思っているのだろうか。オレは日常系を愛するオタクだぞ。ホラー映画なんて対極にあるぞ。オレが見れるのはバトルが主のホラー風味アニメぐらいだ。ガチホラーアニメはそもそも見たことないから得意かどうかわからない。


 因みに姉ちゃんは多分得意だ。前リビングでスプラッタ映画を含み笑いを浮かべながら見てたからな。姉ちゃんが怖いよ。


 「というか神楽坂さんと一緒に見れば良かったんじゃないか?」


 あの人も姉ちゃんと同じタイプだろ。神楽坂さん自体が怖い。


 「いや、お姉ちゃんは怖いのダメなんだ」


 あれま。それは意外だ。


 「前に遊園地のお化け屋敷に入った時、わたしは全然怖くなかったんだが、お姉ちゃんはずっとキャーキャー言いながらわたしに抱きついてきたからな」


 「そうか……神楽坂さんと一緒に見れば良いんじゃないか」


 「話聞いてたのか!?」


 聞いてたよ。でもそれきっとダウトだから。あの人がそんなまともな感性しているわけないだろう。


 「でも今日はダメだぞ。唯織が遊びに来てるからな」


 「そうか。そうだよな。わかった。今度また二人の時に見ような」


 「今日見る」


 「「え」」


 華恋を警戒してオレの後ろに隠れていた唯織がそう主張した。


 「私は構わない。二人きりの時こそ危ない。今日見れば良い。むしろ今日しかない」


 「今日しかないことはないだろ」


 別にハロウィンでもないし。


 「そうか!」


 華恋は嬉しそうに折りたたみ式の座卓を組み立て、カバンから2リットルサイズのコーラとポップコーンを取り出した。そしていそいそとオレのパソコンを持ってきて起動させる。


 ちょっと待て。なんでオレのパソコンのパスワードを知っている。華恋の前でパソコンを起動したことはない。つまり、家族の中にパスワードを知っているやつがいる……!


 「というか唯織は怖いの大丈夫なのか」


 「大丈夫。私にはハデスの加護がある」


 それなのに護符なんてしてるんですね。加護弱くない?


 オレはとりあえずコーラ用のコップを持ってこようと立ち上がった。



 ***



 一本目を見終わった。


 「「「…………。」」」


 誰も喋らない。


 もう日が落ちて電気が必要な環境なのに誰も動かない。パソコンの前で身を寄せ合い動けないでいる。


 「な、なあ宗介、電気をつけてくれないか」


 「じゃあ動けないからまずはその抱えてる腕を離してくれ」


 「なにをバカなことを言ってるんだ!」


 至極真っ当なことを言ったぞオレは。


 「そ、そーくん。灯火を……」


 「じゃあまずその握りしめた手を離してくれ」


 「そんなことしたら冥界に引き込まれる」


 それを唯織が防いでるわけですね。さすがはハデスの加護者。


 ほら。言わんこっちゃない。二人とも怖かったんでしょ?


 オレ?オレはそこまでだったかな。バッドエンドになることが既定路線の作品は割と大丈夫なことに気がついた。主人公の仲間が死んでも全然愛着がないから大丈夫だったし。うん全然大丈夫だった。本当本当。ちょっと吐き気がするぐらい。


 ガチャリ。


 そのドアを開ける音に3人ビクッと反応する。


 パチっと電気がついた。


 「あんたたち電気も付けずに何してんの?」


 「姉ちゃん!」


 「空!」

 

 「……!」


 オレたち3人は一斉に姉ちゃんの元へ殺到した。


 「キモい」


 そしてオレだけ蹴り飛ばされた。ですよねー。


 「いらっしゃい華恋ちゃん。それに、わぁお、また私の可愛い妹が増えた」


 言っとくが一度たりとも妹が増えたことはないぞ。


 「なぁなぁ空!今日泊まってってもいいか?」


 華恋は姉ちゃんに縋りつきながらそんなことを言う。


 「もちろん!と言いたいところだけどごめんね。今日私も友達の家に泊まりに行っちゃうんだ。今も行く前に華恋ちゃんに顔を見せにきただけだから」


 「そんなぁ」


 ふざけんな姉ちゃん。こういう時ぐらいかわいい弟の役に立てよ。今日は一緒にアニメ見てオールしようぜ。


 「宗介ぇ」


 「ちゃんと家まで送ってやるから」


 「ダメなんだ。家に帰っても姉ちゃんはいるが、今日は一人で寝る日だから。怖くて死んじゃう」


 「……うん。一緒に寝てって頼めばいいんじゃない?オレの家に泊まって姉ちゃんと一緒に寝ることと対して違いはなくない?」


 「お泊まり会で一緒に寝るのは普通だ!」


 うん。まあね。しかし今日はまずい。姉ちゃんがいればそれでもよかったんだが。うちの母さんと一緒に寝る?


 「そーくん」


 とことこと唯織はオレに近づいてくる。


 「今日、家に誰もいないの。だから、その、私も」


 ええ……


 「姉ちゃん」


 「わかったわ」


 オレが目線で助けを求めると姉ちゃんはため息をついて部屋を出ていった。


 たぶん友達に断りの電話を入れてくれるのだろう。姉ちゃんはやっぱり頼りになるなぁ。


 しばらくして姉ちゃんは帰ってきた。


 寝袋とガムテープを持って。


 「今から宗介をこれに入れて梱包するわ」


 「おい、ふざけんなよ」


 これだから姉ちゃんは全然役に立たない。


 しかもそれ冬用の寝袋じゃねぇか。殺す気か。


 あの華恋と唯織もふらふらと寝袋とガムテープに近づくのやめてもらって良いか。あ、目がぐるぐるしてらっしゃる。正常な判断がもうできてないや。


 ちょっ、待て、やめ……




 次回、宗介死す。デュエルスタンバイ!

 

 

 

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