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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
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彼らはお菓子を作る

 「君の中学の時のクラスメイトねぇ」


 「はい。それで真なるオレを解放するべく活動するようですよ」


 「真なる?え?君ってその性格の裏にもっとエグいもの隠してたの?」


 「今がすでにエグいみたいな言い方はおかしいでしょ」


 「え?かなりキツイよ。私が菩薩並みの心の広さがなかったらとっくに付き合いをやめてるレベルだ」


 「あんたにだけは言われたくなぁい」


 「あんた?」


 「すみません」


 菩薩心狭いぞ。


 「今もかっこいいけど真のそーくんはもっとカッコよくなる」


 唯織がそんなことを言う。そんなにストレートに褒められると照れる。まあ、なんだ唯織もこっち側の住人だったということだな。かっこよさの基準は中二度。おそらく敏感にオレの中二度が下がったことを感じ取ってる。


 じっと両側から視線を感じる。何?そんなにオレのイケメンフェイスを見てどうしたんだい?


 「そのために、その女の呪縛をとく」


 唯織がアリアを見ていった。


 「だから私と宗介くんは好きあっても付き合ってもないんだって」


 「そうだぞ。アリアには竜胆という心に決めた人がいるんだ」


 「宗介くん黙って」


 「……二股」


 「ほらぁ」


 「よしじゃあ、ここに竜胆を呼んで関係性を明確にしよう」


 「宗介くん。そろそろ私も手が出そうだよ」


 えっと、散々ハリセンで叩かれたのは?ツッコミは無効ですよねわかります。


 「唯織だってそーくんがそんな付き合うなんてバカなことしているなんて信じたくなかった」


 アリアが微妙な顔をする。そりゃそうだ。自分と付き合うことをバカなことと言われたら誰でもこんな顔をするだろう。


 「でも付き合っていないなら、そーくんがこの部活にいる理由がわからない」


 え?オレがここにいる理由は先輩たちが日々尊い光景を繰り広げているからだけど……


 まあ、そんなことを聞いているんじゃないだろうな。同じ中学の人には必ず聞かれる。何でテニス部に入っていないのか。だけどテニス部にだってゆるそうな部活を想像して入ったから、もともと手違いみたいなもんなんだよな。テニス自体は結構楽しかったから、やめる理由もなく3年間続けたけど。


 オレは目を瞑り思い出す。あの灼熱のテニスコートを。砂にまみれて戦った日々を。そして県大会の決勝を。ああ、そうかオレはきっとあの時満足したんだろう。オレのテニスはあの時に満たされてしまった。もっとももしかしたら上を目指せる自信がなかったのかもしれない。自分の才能の限界を感じたのかもしれない。これ以上続けたらテニスを嫌いになりそうだったかもしれない。あるいはそれ全部。だから……オレはテニスをやめた……


 そんなカッコいい理由があればどんなによかったか。


 そもそもテニス自体はやめてないし。最近だって神楽坂姉妹にテニスに誘われている。えぐ。妹バフがかかった状態で神楽坂姉と同じ戦場に立つとか自殺行為じゃん。


 それはともかく。ちらりと唯織を見る。とても真剣な瞳をオレに向けている。オレは女子高生がゆるふわな活動をしている部活に入りたかったんだ。だからこの部活に入った。このまなざしの前でそんなことが言えるだろうか。いや、言えるない。


 「そうだな………こんなんでも、テニス部に入れば何かできたかもしれないな」


 オレは伏目がちで右肘を抑えながらそう言った。


 「そーくん……」


 「そんな顔するな唯織。オレに悔いはない。やりきったからな」


 「そっか……あれはそーくんにとって刹那の輝き。だからあんなにも激しく眩く輝いていた」


 二人で窓の外に目を向ける。丁度去年の今頃、走り終えた時を思い出しながら。




 「今、後輩くん、ふわっとしたことしか言ってなかったよね」


 「はい。それに私がいうのも何ですけど、付き合ってるから宗介くんはこの部活にいるんじゃないの?という本来の質問の答えは出てないです」


 「でも二人とも満足気だ」


 「はい、満足気です」


 「これはどっちが悪いと思う?」


 「宗介くん一択」


 そこの二人、こそこそうるさいですよ。



 ***

 

 「えっと唯織ちゃんだっけ?後輩くんに近づくためにこの部活に入部したんだろうけど、真面目に活動する気はあるのかな?」


 「肯定。そーくんに私の実力を見せるチャンス」


 ぐっと両手を握りしめ、やる気を示す。


 「ふっ、家事で培ったオレの実力を超えられるかな?」


 「今のはたぶん、そういうことじゃないと思う……」


 こちとら伊達に毎日家事をやってきたわけではない。唯織の実力がどんなものかは知らないが、簡単に認めると思ったら大間違いだ。


 「わかった。じゃあ今日は唯織ちゃんの歓迎会も兼ねてお菓子作りを計画していたんだが、どうだろうか?」


 3人を見回して先輩は言う。オレたちはうなずいて肯定を示す。お菓子作りか。オレはあんまりやったことないんだよな。強いていうならバレンタインデーのたびに姉ちゃんに手伝わされていたぐらいだ。労力の割合的にはオレが主導で姉ちゃんが手伝いだったけど。姉ちゃんの友達はそのことを知っていたのだろうか。待って。彼氏がいた年でも同じ感じだった気がする。今はなき彼氏に合掌。


 よく考えたらお菓子は4月に作ったな。チョコ春巻き。全部先輩に食べられたから印象に残ってなかったわ。お茶会のことと含めて許すまじ。でもそのあといいものを見せてもらったんだよな。くっ、こんなにオレの感情を揺さぶって、先輩はオレをどうする気なの!


 「さて問題は何を作るかだ。ある程度の材料はあらかじめ調理室の冷蔵庫にぶち込んでおいたから基本的なものなら作れるよ。君たちの好きなお菓子はなんだい?」


 「グミ」

 

 「クロカンブッシュ」


 「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ」


 「……うん。聞き方が悪かった。作れるお菓子を言ってくれ。そして私はグミは嫌いだ」


 なんでよ。美味しいよグミ。


 ちなみには発言は順にオレ、アリア、唯織だ。あと一応全部作れるよ。でも確かにこういう時に作ろうとするもんではないかも。あと唯織のそれは名前が好きなんじゃない?


 オレの名前が好きなお菓子はイル・フロッタント。食べたことはない。最初に短く、後に長いというこのバランスがいい味をだしてますよね。お菓子だけに。はっはっはっ。

 

 「ではクッキーとかはどうでしょう?」


 「クッキーかいいんじゃないかい」


 ああなんか定番ぽいな。


 クッキーを提案したアリアはなんだか少しうきうきしている。


 「なんか嬉しそうだな」


 「うん。こう見えてお菓子は大好きだし、お菓子作りは得意なんだよ」


 まあお菓子好きなのは知ってたけど。いつも部室で食べているし。でも自分でも作るのか。


 「唯織だって得意」


 「うむ。誰彼構わず戦いを挑むそのスタイルは嫌いじゃない」


 「つまりは好き?」


 「え?ああ、まあ好き?」


 「そう」


 ふんすと唯織は全然似合っていないファイティングポーズをとる。うん、ぎこちなくて可愛い。そしてアリアはなんだか微妙な表情でこちらを見てくる。気分の上がり下がり激しいですね。


 そこで海神先輩が言う。


 「つまりは誰が一番美味しいものを作れるかという勝負ということだね。よしわかった。じゃあ私が審査員を務めようじゃないか」


 「それって先輩が美味しいもの食べたいだけじゃ」


 「わかりました」


 「望むところ」


 オレの声も届かず、3人はずんずんと調理室へと進撃を開始した。やっぱり女の子って甘いものが好きなんだね身体の構成物資だししょうがないね。ん?違ったっけ?


 確か女の子は砂糖とスパイスと素敵なものとケミカルXでできてるんだっけか。え?異物が混入している?わかる。オレもスパイスはいらないだろってずっと思ってた。スパイスなんて曖昧な言葉で書くからシナモンの代わりにブラックペッパーを入れてしまった姉ちゃんみたいな激辛な女の子ができるんだぞ。

 

 



 そしてお菓子が完成した。先輩の前に二つのお皿が並べられる。


 では、実食!


 「アリアちゃんのはこれはソフトクッキーだね」


 「はい、最近ハマってて」


 アリアが作ったのはチョコチップ入りのソフトクッキー。しっとりとしていて大変美味である。オレはどちらかというとサクサクしたクッキーが好きなのだが、これはこれで大変美味。生地の優しい甘さとチョコの相性が良い。やっぱりチョコチップが神だよね。うん。それは市販品。


 「唯織ちゃんのはこれはマシュマロをクッキーで挟み込んであるんだね」


 こくり。唯織は頷く。


 唯織が作ったのはシンプルなクッキーでマシュマロをサンドしたもの。挙句の果てにチョコもトッピングしてあるというカロリーのお化けだ。だがうまい。だからうまい。くどくなりそうな甘さをクッキーが調整していた。あとやっぱりマシュマロが神だよね。うん。これも市販品。


 どうやら二人ともお砂糖と塩を間違えちゃった!てへ!みたいなドジっ子属性やあれ?レシピ通り作ったのに(作ってない)黒い物体ができちゃった!といったメシマズ属性は持っていないようだ。


 あんなのフィクションの産物だよね。


 ふと姉ちゃんが作ったほのかに天ぷらの香りがする油ぎとぎとのクッキーを思い出す。オレは頭を振ってあのブラックペッパーのことは忘れる。


 海神先輩は二人のクッキーをゆっくりと味わい、食べ終える。


 「うむ。みんなのお菓子はどれも美味しかったよ」


 オレも横で頷く。


 二人は真剣な顔で海神先輩を見つめる。次の言葉が気になってしょうがない様子だ。


 「では、今日一番美味しかったお菓子は……」


 「どろろぉろろぉぉろっぉろ」


 「宗介くん。できないならやらないで」


 「すみません」


 おかしいな。中学の時はドラムロールを口でできたんだけどな。ついでに同じ時に口笛、指笛、指パッチン、それにボイパも練習してた。ええ、もう役満ですよ。一体オレはなんであんなに音を出すことに執着していたんだろう。


 「では、改めて一番美味しかったお菓子は……」


 緊張の一瞬。そして、先輩は机の影から何かを取り出しながら言った。


 「後輩くんが作ったプリンです!」


 「あざーす!」


 「ちょっと」


 「すごい。そーくん」


 オレが唯織の拍手を一身に受ける中で、アリアはオレに詰め寄る。


 「何をやってるのかな?宗介くんは」


 「いや、同じ部員なんだし。そりゃ作るよお菓子」


 「まあそれは百歩譲っていいとして、クッキーは何処へ行ったのかな?」


 「これには深い事情があるんだ」


 「作り方を知らないとか?」


 「いや、先輩がプリン好き」


 「ごりごりに審査員に媚びていくスタイル!」


 アリアが信じられないものを見るような目で海神先輩は見る。海神先輩はふいっと目を逸らした。


 ふっ、アリアたちは甘いんだよ。戦いは戦い始める前から始まっているんだ。オレがまずしたことは、ほかの先輩たちに海神先輩の好物を聞くということだ。


 それにもしプリンを作ってもプリン好きだからこそ厳しく採点をするかもしれないというデメリットもある。だがオレは賭けに勝った。


 「アリア」


 「……なに?」


 「食べてもらう相手を思いやる真心こそ料理には大切なんだよ」


 オレはドヤ顔でそう言った。


 この後アリアからオレだけに素敵なお菓子をプレゼントされた。その名も一人ロシアンルーレットクッキー。わー聞いたことない名前ー。一体どんなお菓子なんだろうなー。



 かん……しょく……した……よ……

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