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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
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中二病少女はこうして今に至る(後編)

2話同時投稿2話目です。1話目を呼んでない人は前の話へ


今日の分の投稿だけど前後編だから同時に投稿してます。

 中学3年生になった。


 私と日下部くんとの交流は激減した。理由は2つ。一つ目の理由としては最低限のコミュニケーションをとれるようになった私に女子の知り合いができたこと。今までクラスの空気に流されるままだった大人しめの女子が私に構ってくるようになったこと。きっと彼女たちはいい人なのだろう。


 二つ目としては日下部くんが少しだけ他の人に話しかけられるようになったこと。中学3年生になって日下部くんはあの特徴的な服装をやめたことが大きな原因だと思う。あの格好はどうやらみんなには不評だったようだ。かっこよかったのにあの格好。包帯で巻かれ、細さが強調された指とか私好きだったのにな。それと日下部くんのテニスの実力がばれたことも原因だと思う。


 最初に余計なことを言ったのは女子テニスの人だっただろうか。でも彼意外に上手いんだよねテニスは……と。私は舌打ちをした。そんなの私はとっくに知っていた。2年生の時だってあんな格好ではいたがテニス自体には真剣に取り組んでいた。それが格好が変わったぐらいで急に女テニの人たちが練習中にちらちら見始めて、あまつさえそのことをクラスでも言うなんて。全く度し難い。


 交流は減ったが、私の日下部くんへの想いは減るどころか、急激に膨れ上がっていくようだった。会えない時間が想いを強くするというやつだろうか。



 ***



 「しゃぁ!」


 彼が吠える。今までに見たことないような真剣で必死な表情の彼がそこにはいた。


 彼の大会の日程を把握した私は彼の応援に来た。テニス場の彼は色々な人に話しかけられていて私が話しかけるタイミングはなかったけど。でもこっそり彼の荷物に差し入れは入れられたし良しとしよう。


 彼のテニスはあまりテニスに詳しくない私でもわかるぐらいに泥臭かった。ただただ彼は走り続けボールに食らいついていた。長い長い試合時間で彼より走っていない相手が根負けするぐらいだ。でもどんな姿の彼もカッコいい。


 そして彼は決勝まで勝ち上がった。同じ中学の人たちは興奮しながら彼の決勝戦を見学する。のーしーど?からここまで来たらしい。


 彼は惜しくも負けてしまった。でもなんと県で2位だ。次の大会にも進めるらしい。やっぱり彼はすごい。彼はすっきりとした顔でテニスコートから引きあげていた。


 勇気をだして声をかけようかな。そう考えたとき、するりと話し声が耳に入ってきた。


 

 「おしかったねー」


 「うん、惜しかった。でもかっこよかったよね」


 「わかる。本当に日下部くんって喋らなければかっこいいのに」


 「ね。顔も悪くないし」


 「本当にあの喋り方と挙動がねー」


 姦しくうるさく騒々しく彼女たちは彼について話していた。何様のつもりで彼女たちは日下部くんを評価しているのだろうか。


 

 そして私の思い出も汚された気がした。私の中の日下部くんはいつも楽しそうに喋っていた。それを否定することは誰にも許されない。あなたたちが日下部くんの何を知っているのか。テニスがうまいことなど、ほんの彼の一部分でしかないのに。


 

 ああ、そっか。


 

 私のことをわかってくれるのが日下部くんだけ。同じように日下部くんのことをわかっているのも私だけなんだ。


 


 そんな人たちを日下部くんに近づかせちゃいけない。それで私みたいに喋れなくなったらどうするつもりなんだろう?日下部くんは私が守らなくちゃ。


 女子から守るのは簡単だ。スマホのホーム画面を日下部くんとのツーショット(合成)にすればいいだけ。そうしたらそれを見た人が何も言わなくても広めてくれる。全く本当に彼女たちはいい人。


 あとは、日下部くんの話をする時には名前で呼んだらそれっぽいだろう。宗介くん……そーくん。うんこっちの方がそれっぽい。


 練習しておこう。つい出ちゃった風に見えるように。そーくん。そーくん。そーくん。そーくん。そーくん。


 それでもそーくんに近づくような人にはお話しなくちゃ。


 最近気づいたことがある。そーくんを感じたくて前のそーくんみたいに手や頭に包帯を巻いて、眼帯をしてみた。すると声がでるようになる。そーくんに守られているようで、そーくんから勇気をもらえるようで、会話をすることができる。口調がそーくんっぽくなるのは愛ゆえ。


 その姿でお話しをするとみんなすぐにわかってくれた。やっぱりそーくんはすごい。

 

 これで、あとはどうすればいいだろう?


 以心伝心具合からしてそーくんと相思相愛なのは疑いようもない。わざわざ言葉に出す必要もない。


 ふと何の手入れもしてない伸ばしっぱなしの髪が目に入る。


 そうだ。そーくんと並んでも見劣りしないようにしなくちゃ。髪を整えて、ママがうるさく言ってくるお肌の手入れもちゃんとしよう。


 でもそんな直ぐに効果って出るのかな?


 やっぱりこういうのは衝撃が大事だよね。受験真っ只中でやっても薄れてしまうかも。よし高校でお披露目にしよう。可愛くなった私を見せよう。そしたらそーくんはもっと惚れ直してくれる。


 もしかしたら誰かわからないかも。それぐらいを目指そう。でもそーくんの愛ならすぐにわかってくれるよね。



 ***


 

 「嘘……」


 そーくんが梓山西高校にいなかった。この高校に来ると思ってたのに。どうしよう進路届は第二希望までしか盗み見れなかったからどこの高校に行ったかわからない。


 そーくんのテストも見たことないからどれぐらい頭がいいかもわからないし。


 中学二年生の時は、テストを貰う。一瞥する。片手でくしゃくしゃにしてポケットに突っ込む。先生に怒られるまでが一連の流れだったから、そーくんのテストは見たことがなかった。でも会話している感じではそんなに頭は悪くない……はず。ちょっと抜けてるところもあったからなそーくん。そこがまた可愛いんだけど。


 同じ中学の人に聞いたけど誰も知らなかった。ミステリアスなところもあるなんて、また新たな魅力を見つけてしまった。


 何の情報もなかったある日、クラスメイトから有力な情報を入手した。良い情報と悪い情報だ。良い情報は今そーくんが梓山高校に通っていること。この高校からバスで15分ほどの進学校だ。灯台下暗しとはこのことだ。そーくんは軽々と私の想定を超えてくる。


 悪い情報はそーくんに彼女がいたこと。ふぅ。やっぱり私が守ってあげなくちゃだめだ。すぐに騙されちゃうから。私以外にそーくんをわかってあげられる人なんていないから。もうすでに悪影響が出ていたらどうしよう。


 すぐに行動しなくちゃ。綺麗に整えられた髪をツインテールに結んでいく。そーくんがつけていたストラップの女の子がしていた髪型だ。わかってるよ。そーくんは、この髪型が好きなんだよね。そーくんに会いにいく時はこれにするって決めていた。


 最後の授業をサボり、梓山高校まで行く。そして校門で待つ。待ち続ける。途中雨が降ってきたが、傘の準備はもちろんしてきている。校門から離れず油断はしない。雨の中、校庭で高笑いを上げていたことがあるから、そーくんの行動に天候は関係ない。


 夕立はすぐに止んだ。そしてすぐにそーくんは出てきた。中学と同じように学ランをきたそーくんだ。カバンも中学から変わっていない。見間違うはずがないそーくんだ。


 私は衝動のままに走り出した。


 待っててね。そーくん。今度は私が助けてあげるから。


 中学2年生の時はすごい幸せな時間だった。そして長い雌伏の時を超えて、私たちはまた幸せな時間を一緒に過ごす。


明日からはちゃんと主人公視点のコメディー中心に戻ります。


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