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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第三章 中二病少女がこんなに可愛い
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彼は面白い話をする

 最近やたらカタカナを使う人が多くなった気がする。特にビジネス用語だろうか。いわゆる意識高い系とネタにされるようになるほど、その侵食率はすさまじいものである。使う人が多くなった理由としては、まず日本語で正しい表現をすることができない外来語であること。これは中々真っ当な理由だ。専門用語とかはこういうのが多いだろう。


 そして二つ目はかっこいいから。単純だがとてもわかりやすい理由だ。みんなだってこの気持ちは否定できないはずだ。なんのために高いお金を払って美容室に行ったり、服を買ったりする?カッコいい自分になりたいからだろう。まあ言葉は相手に伝わらなければ意味ないから、カッコいいだけではダメなのだけど。


 カタカナ語といえば、うちの高校では学級委員長のことをクラスリーダーと呼ぶ。おそらく学校側は進学校として何か他とは違うアピールをしたかったのだろが、大失敗と言わざるを得ないだろう。学級委員長のことだと伝わらないし、リーダーにクラスがくっつくだけでこんなにかっこよくないものかと驚いたほどだ。というかリーダーと言うたびに別の人の顔がちらついて仕方がない。米を作ったり、無人島を開拓したりする人だ。あと副業でアイドルをやっている。うん、これリーダーと聞いて誰を思い浮かべるかでだいぶ世代がわかるな。


 何よりもクラスリーダーという呼称で問題なのは、学級委員長というキャラが死ぬこと。三つ編みでメガネで大人しくて、でもしっかりしている女の子を委員長と言えないなんて、人類の損失だろ……!委員長というのはその言葉だけでオレたちに色々な思い出を想起させてくれる。それだけで一つの世界が完成しているといってもいい言葉なのだ。


 それにリーダーという呼称だったらこんな会話もできなくなる。


 「ねぇ、委員長。今日のホームルームのことなんだけど」


 「もう涼白さん、委員長では堅苦しいから名前で呼んでって言ったでしょ」


 「あ、ごめんね。えっと……伊万里さん」


 「ううん。じゃなくて、下の名前で呼んでほしいの」


 「え?」


 「あなたには名前で呼んでほしい。ダメ?」


 「そんなことないよ。私もずっと呼びたかった…………りんどうちゃん」


 「うん、アリア」


 お幸せに。


 うん。うん。これが委員長という言葉の力だ。


 え?リーダーでも今の会話はできる?情緒がわからない人は黙っていてください。


 え?委員長って使わなくなってるじゃん?二人の少女の前には委員長もまた引き立て役になってしまうということだな。


 何の話してたんだっけ?


 ああ、そうだカタカナ語の話だ。カタカナ語をかっこいいと思って使っている人たちに一つ言いたいことがあったんだ。それは遅れているということだ。オレたちはとっくにカタカナ語の可能性に気が付いていたからな。オレは中学二年生のときにはそういった言葉を使い始めていた。さすがは時代の最先端を行く男。他にもオレはこの時には黒いマスクや柄物のマスクを使用したりしていたからな。本当にみんなオレのもとにたどり着くのが遅いよ。


 そしてまたすでにオレは先に進んでいる。今見ているのは残像だ。今は、あれ日本語の方がかっこよくね?という段階だ。インフェルノ・イヤーと地獄耳どっちがかっこいいかと聞かれたら今のオレはすぐに地獄耳と答えるだろう。昔はインフェルノ・イヤーに迷わず飛びついていただろうが。何?インフェルノ・イヤーを知らない?地獄耳の英訳でしょ?(違います)


 だから宣言しよう次に流行するのはいかに日本語で美しく表現できるかだ。


 まあ、色々言ってきたが、つまりは何が言いたいかというと。


 

 「今降っている雨、なんて表現すれば美しいと思う?夕立?甘雨?翠雨?白雨?字ずらだけでみれば翠雨なんだが、シンプルな白雨も捨てがたいよな。どう思う?アリア」


 「意味が大事だと思う」


 アリアがバッサリとオレの言葉を切り捨てる。ひどい。ここまで語らせおいて、その一言だけで済ませようとするなんて。正論なんて嫌いだ。


 ザーザーと突然降り出した雨は勢いおさまらず降り続けている。オレたちは部室からそんな光景を見ていた。少しだけ居残って活動していたら突然の雨で足止めを食らったのだ。先輩たちは無事、バスや電車までたどり着けただろうか。


 アリアは優雅にお菓子を食べながらため息をつく。どうしたのそのお菓子は好みじゃなかったの?


 「本当にどうでもいいことを話してたね。最初は少しは実りのある話なのかと思った私がバカみたいだよ」


 「竜胆はバカなアリアも変わらず好きでいてくれるよ」


 「そんな心配はしてないよ」


 そんなことは当たり前だってことですね。良きです。


 「なんか面白い話をしてっていうフリに堂々とこんな話をできるなんて、宗介くんだなって感じ。あ、褒めてないよ」


 「わざわざ付け足すことか、それ」


 そりゃ面白い話をしているんだから堂々と話すだろ。


 「というか途中、私とりんちゃんを使って変な妄想をしてなかった?」


 「妄想じゃない!違う世界線の話だ!」


 「それ妄想じゃないの?」


 違うよ。違う世界線では事実だから。



 ***


 「雨上がって良かったね」


 「そうだな。風邪なんか引いたら大変だ」


 あの後雨はすぐに上がった。どうやら夕立……白雨だったようだ。やっと学校を出てアリアと一緒に下校する。


 ちなみに竜胆は今日は室内のテニスコートに部活で行っている。なんとダブルスで県大会出場を決めたのだ。そのため一年生の中では二人だけその練習に参加することができる。すごいな竜胆と神楽坂さんは。ドクンドクン。高鳴る胸の鼓動。なんだ神楽坂さんの名前を出すだけで動悸が止まらない。まさか、これって。


 神楽坂さん。家。地下室。拷問。誓約。


 おかしい。頭に単語が浮かんでは消えていく。頭が……。


 「そういえば、中学の時の宗介くんってどんな感じだったの?」

 

 オレがオレの知らない記憶と戦っていると不意にアリアがそんなことを聞いてきた。


 「突然どうした?」


 「さっきも中学時代の話が出てきたし、ちょっと気になってね」


 「ん〜今のオレから謙虚さを引いて自由をくっつけた感じかな」


 「ええ……」


 もしかして引いてる?


 「今より自由って……それに今の宗介くんのどのあたりに謙虚さがあるの?」


 「謙虚だよ。一汁三菜を基本としているし」


 「それただのバランスの良い食事だよ」


 「授業中もわかっているけど手を挙げないし」


 「ちゃんと授業は受けようね」


 「今も見て、アリアの3歩後ろを歩いている!」


 「中途半端な謙虚さだね」


 「まあ、当社比だから」


 「それを言われたら何もいえないよ」


 そうそう。たとえマイナスからゼロになったとしてもプラスはプラス。って誰が謙虚さゼロだーい。


 「今よりもっと自由で大胆で暴走している宗介くんかぁ……」


 暴走は言ってないよ。中学も今も常に平常運転だよ。


 「そんなで仲良い人いたの?」


 まるでいないかのような聞き方だ。まあ実際も似たようなものだけど。


 「仲良い人か……同じ部活の人たちとはそれなりに話していたが、特別仲の良い人もいなかったなぁ」


 中学時代のことを思い出す。割と自分では楽しかったが、側から見たらボッチでかわいそうなやつだと思われていたかもしれない。


 そんなことを考えながら校門に差し掛かったとき、その声は聞こえた。


 「見つけた」


 その女の子の声はアリアのものではない。もっと幼い声だ。


 そう言って校門の影から飛び出してきたのは違う高校の制服をきた女の子だ。黒髪をツインテールにして目には黒い眼帯。右手には白い包帯が巻いてある。


 「会いたかった」


 両手を広げてオレに向かってくる女の子。目を丸くしているアリア。そしてオレは、


 「とうっ!」


 オレは思わず後ろ向きに回転して避けていた。ズザザァっと低い姿勢で着地する。目の前には両手を空振った少女。


 なぜか誰も喋らない。今の回転には拍手ぐらいくれてもいい出来だったような気がする。


 少ししてアリアが恐る恐る口を開く。


 「ええっと。宗介くん。今の避けても良かったのかなーなんて。いや、受け止めろっていうんじゃないけど、そんなに激しく避ける必要があったのかなーなんて。その子が少し可哀想じゃない?」


 「すごい。咄嗟にあんな動きができるなんて。さすがはそーくん」


 「……あ、絶対宗介くんの知り合いだよ」


 今、何をもってそう判断した?


 「いや、違う。これは身体が勝手に……」


 キーン。耳鳴り。そして幻聴。


 

 『華恋が抱きついたから悪いの?華恋が悪いわけないでしょ?抱きつかれた方が悪いに決まってるよね。復唱して。女の子には抱きつかれません。はい』


 

 「くっ、知らない記憶が溢れ出してくる……」


 オレは地面に這いつくばりながら頭を押さえる。


 「大丈夫。そーくんならわかるよ。何が真実かを。あなたはもうそのカケラを手に入れている。そして思い出して本当の自分を」


 「私先帰るよー」


 苦しんでいる人を放置して帰ろうとするアリアはすごい冷たいなぁと思いました。


 あ、やだ、地面濡れてて冷たい。


こんな感じの第3章です。よろしくお願いします。

あと、誤字報告ありがとうございます。

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