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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第二章 不良娘(偽)がこんなに可愛い
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彼は断罪から逃げのびる

 生き延びた。現状では。


 姉ちゃんが華恋と連絡先を交換していて助かった。ひとまず今日のことでオレの名前を出すのを避けてもらい、優しい(笑)お姉さん空に助けてもらったことにした。ついでに日下部のほうも口止めをした。そんなに珍苗字というほどではないが、全国におよそ2万人。うむ。勘付かれる可能性は十分にあるな。


 それらのことを華恋に伝えてもらうと(●`ε´●) むー、と返ってきた。何で不満気なんだよ。


 オレはいつかバレるかもしれないという恐怖に苛まれながらも生存勝ち取ったのだ。


 


 「ねぇ、日下部くん。また相談したいことがあるんだけど、いいかな?」


 ポロリと箸から卵焼きが落ちた。煮物の上に着陸する。もう恐怖も薄れてきたオレは調子に乗って朝から卵焼きを巻き巻きしたのだ。これは調子に乗るなという暗示だろうか。いや、卵はなんにでも合うから大丈夫。


 あれから数日後の昼休み神楽坂さんが話しかけてきた。ついについにオレの関与がばれたのか。いやしかし殺意は感じられない。本当に困っているような顔だ。あの困ったちゃんがまた何かやったのだろうか。


 「ありがとう。また放課後ね」


 何も答えないオレをしり目に神楽坂さんは自分の席に戻っていく。神楽坂さんは沈黙も肯定と見なす派の人のようだ。そんなことあるかね。あれは脅しのテクニックであって実際の会話に適用するものではない。


 「竜胆とアリアも一緒にどうだ?」


 殺意を感じないとはいえ保険として二人も誘っておく。パニック映画の基本だ。安易に一人になったやつから殺されていく。


 「「いかない」」


 なんでだよ。


 「そんな神楽坂さんに気をつかわなくていいのに」


 「それはあなたがいうことじゃないでしょ……」


 「前のやつで私たちは役に立たないってことがわかったし、今回は遠慮しとくよ」


 「いやいや、遠慮します」


 「あなた日本語おかしいわよ」


 その後も二人の意志は固く、秘儀捨てられた子犬の目をしてもだめだった。なんだ二人は猫派か。



 放課後、再びオレは神楽坂さんと向き合っていた。神楽坂さんはとても深刻な顔をしている。


 「で、どうしたんだ?もう泉女子高に侵入していじめの証拠でも掴んだのか」


 まずはそんなわけがないことを聞いて、相手の様子を伺う。


 「ううん、それはまだ。前の雨の日に制服が濡れちゃって匂いが落ちちゃったから意味ないしね」


 「本来の目的の方を忘れてね?」


 「はっ、そうだよね。私ったらなにを」


 「だよね、だよね」


 「華恋ちゃんが着ていたという事実だけで私は飛び立てる!」


 どうやら本来の目的は制服でキメる方だったらしい。だから制服をキメるってなに?


 「そんなことは今はよくて。なんと華恋ちゃんが不良をやめました」


 やっと本題に入りそうだ。華恋はあの後ちゃんと不良をやめたらしい。実物は不良と呼ぶのもおこがましい存在であったが。


 「おお、良かったな」


 「でもおかしいの」


 「なにが?」


 「不良をやめたのにいつもの華恋ちゃんに戻らないの!」


 姉離れを自然にやる作戦は失敗したのかな。確かに華恋はその辺は不器用そうだ。姉離れをしようとして不良を目指してしまうぐらいだからな。


 「3日前の話なんだけど、私が部活から帰ってきてお風呂に入ったんだよ。いつもはそこに突撃してくる華恋がこなかったの。その前の日には一緒に入っていたのに。私は鼻血をふいて倒れた」


 「ずっとお風呂で待ってたんだな」


 「おとといも、いつものように華恋の髪をとかそうと思ったの。そしたら、もうすでにとかして髪も結んであったわ……ちょっと寝癖が残ってたのがすごくかわいかったわ」


 「え、のろけただけ?」


 「昨日なんて!自分のスカーフを自分でアイロンしていたの!」


 「いい子だねー」


 華恋自然に姉離れできるように頑張ってんなー。ただ手ごわいぞお姉ちゃんが。おそらく妹限定名探偵だからどんな些細な変化も見逃さないぞ。千円札でたばこ一箱買っただけで疑われるぞ。


 「もしかして姉離れというやつかしら」


 神楽坂さんは窓の外を見ながらぽつりと呟いた。


 「そうかもな」


 「姉離れ、姉離れ、あねばなれ、アネバナレ、姉離れ!ああ、華恋ちゃん!お姉ちゃんから離れてどこへ向かおうと言うの!」


 「何処にも向かわないぞー。かれ、神楽坂妹はずっとお前の心の中にいるよー」


 「男」


 ビクッ。神楽坂さんはおどろおどろしい声でそうもらした。どうやら恐れていた事態に突入しそうだ。心情的にはもちろんオレは神楽坂側だ。しかしこの場合処されるのはオレ。何もしてないというのに。いや、何もしてなくはないかもしれないこともあらずだけど。くそっ、なんで姉ちゃんは姉離れなんて進めたんだ。そのせいでオレはこんな自体に陥ってるというのに。


 「私、聞いちゃったの」


 「な、なにを」


 「華恋の部屋を盗聴器で、ごほん、華恋の部屋のドアが少し空いてて聞こえちゃったの」


 盗聴器ってもうはっきり言ってたよ。事実をむりやり捻じ曲げたな。


 「嬉しそうに空って男と電話するところを」


 「よっしゃ」


 うし、ギリギリセーフ。ナイス姉ちゃん信じてたぞ。空と宗介。何の関連性もないこの二つが結びつけられることはない。ありがとうお母さん、お父さん。


 「よっしゃ?」


 「違うよ。おうらっしゃぁ!っていう威嚇の声だよ。オレそいつ許せないっす兄貴ボコボコにしてやりたいっす!」


 「そうだね。私もそう思う。まずはそいつとどこで出会ったのかをつきとめないと」


 「……。」


 華恋はどうやら姉にはあの雨の日のことを話してはいないらしい。話すと思ったから口止めをしたのだが。だから神楽坂さんは空を優しい(笑)お姉さんではなく男と勘違いしているのだろう。


 あの雨の日のすぐ次の日に華恋は母親と一緒にお礼しに来たからてっきり姉にも話しているものだと。ドアを開けたら一緒に母親も立っているもんだから驚いたよね。「今後ともよろしくお願いいたします」と言われた。


 「っていうことで日下部くん。空って名前の男の人を見つけたら私に一報いれてね」


 「それはいいけど。どうすんの」


 「大丈夫。私の姉アイにかかれば華恋の虜になっているかいないかはすぐにわかるから」


 「さいで」


 鏡に映っている顔と似ているとかかな。


 しかしまあ今日もとりあえずオレは雨の日の件を裁かれることなく生き延びたのだ。だがもう一つオレは神楽坂さんに言えない爆弾を新たに抱えているのである。


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[良い点] おもしろい〜、一気読みしました! [気になる点] 27部分の仲良くなりたかったし、のとこ誤字ってた気がしました!
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