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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第二章 不良娘(偽)がこんなに可愛い
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姉は不良娘を可愛がる

 「すごっ!髪もサラサラだ!何かお手入れとかしてる感じ?」


 「普通にシャンプーで洗ってるだけだ」


 「へぇ~じゃあ元がいいんだ」


 「でも空の髪もすごいさらさらだぞ」


 「私はすごいお手入れ頑張っているからなー」


 「あ、でも最近は髪を巻いている」


 「おっ、高校生になっておしゃれに目覚めちゃった?」


 「ううん。不良っぽいから」


 「え?」


 あれは誰だ?


 オレが体を丸めた防御の体勢から復帰すると、華恋は姉ちゃんにリビングでドライヤーをされていた。いや、日本語はただしく使うべきだ。姉ちゃんらしきものが華恋の髪をドライヤーで乾かしていた。これが正しい。もう一度問おう。あれは誰だ。笑顔を浮かべ高めのトーンで喋るあの生き物は一体誰なんだ。


 オレが丸まっていた時、「邪魔」といつもの声で蹴り飛ばされたのは覚えている。その時に確かに姉ちゃんはここにいたというのに。世界は不思議に満ち溢れているな。


 なお空というのは姉ちゃんの名前だ。なんでオレは宗介なんだ。別に文句はないが、普通は海とか大地とか星とか関連する名前を付けるものではないか。


 「あーあ。私もこんな可愛い妹が欲しかったなー。私なんか気持ち悪い弟しかいないのに」


 「ええー奇遇ーオレもこんな可愛い妹が欲しかったー。オレなんか凶暴な姉しかいないのに」


 「「……………。こいつ!」」


 オレは姉につかみかかった。制圧された!


 「さあ言いなさい。素敵で綺麗な優しいお姉ちゃんがいて嬉しいと」


 「そんな姉などいない!」


 「いなくなるのはあんたよ」


 ごふっ!


 あ、心配しないでください姉弟のじゃれあいというやつです。全然暴力的なコンテンツとかではないですから。甘噛み程度ですよ。がはっ!


 「そっちこそ言ってみろ。家庭的でイケメンな優しい弟がいて嬉しいと!」


 「イケメンとかおこがましいわ。あとあんたは優しいでのはなく流されやすいだけ」


 「なんてこというんだ」


 家庭的はいいんですね。現状家事のほとんどをオレがやっている中でそれを否定するのはやめたようだ。珍しいいつもなら事実を否定して自分の意見を通すというのに。


 そうだ!見てくれ華恋。これが本当の姉の姿だ。さっきのはまやかしだったんだ。


 「かわいい。えへへ」


 どんなところで止まってるんだ。それはもうはるか昔に通り過ぎたところなんだよ。姉弟ケンカは鮮度が命なんだぞ。もし時間が経ってしまったら飽きる。一緒に過ごしているのにそんなくだらないことで毎回ケンカしてられない。


 「何をやってるんだ二人とも?プロレス?」


 「違うよ。弟がボケたからこうしてツッコんでるの」


 「違うぞ。これは教育でありまたの名をちょう「もうバカなことばっか言ってー」 こつん。


 ドウン!息ができない。なんだ今のは。音はそんなに重い音がならなかったが、衝撃は確かなものが体を貫いた。まさか姉ちゃんよ。オレが中学生時代何度も挑戦してできなかった技を習得しているというのか……そう発勁を……


 「そうか。姉弟ではお笑い芸人の真似をして遊ぶんだな」


 「そうそう。宗介なんてこの遊びが大好きで」


 う、そ、だ。がくっ。




 「どうぞ。粗茶ですが」


 「ありがとう宗介。あったかーい」


 セーラー服が乾くまでもう少しだけ華恋にはこの家に逗留してもらうことにした。3人でダイニングの机についてお茶と羊羹を囲む。羊羹うまっ!


 「そういえば宗介。華恋ちゃんとはどういう関係なの。あのセーラー服だって泉女子高のものであんたのところのじゃないし、あんたまさか攫ってきたの?ぐっじょぶ」


 「グッジョブじゃない。誘拐を止めろ身内なら」


 「でもあんたが捕まるだけでこんなに可愛い妹が手に入るんでしょ?別にいいじゃない」


 「そんなわけあるか」


 おそらくその場合姉も共犯として捕まるのでは。


 「あの、宗介はわたしを無理矢理連れてきたとかとかじゃない。わたしが自主的についてきたんだ」


 「華恋の姉とクラスメイトなんだよその縁で」


 「妙ね。それぐらいの関係だったら宗介が声をかけるはずがないのに」


 雨に濡れてたんだぞ。誰だって助けるわ。


 たとえそれが見知らぬ女子高生だろうと男子高生だろうと……助けるかなぁ?女子高生だったらまあ追いかけて傘は渡すかもしれんがそれで別れる。男子高生だったらバカだなーでおしまい。


 「オレはなんて煩悩にまみれた最低な人間なんだ」


 「そうよ悔い改めな」


 まず何でそう思ったかを聞きな。答えが早いぞ。


 「違う!宗介はすごい優しくしてくれたし、全然最低なんかじゃないぞ!」


 「華恋……」


 華恋は立ち上がると必死にオレの最低発言を慰めてくれた。ありがとう。だけどごめん。自虐ボケなんだ。たいへんやりにくい。さっさと話をまとめよう


 「華恋のお姉ちゃんはな、とてつもないシスコンなんだ」


 「ああだったら納得だわ。あんたがそんな美味しい状況を逃すわけがない」


 おいしい状況とか言わないでくれます?


 

 ***


 雨はまだザーザーと降り続いている。オレは立ち上がるとセーラー服の状態を確認しに行く。まだ湿っているが、まあ大丈夫かな。帰るときも多分濡れるし、このぐらいでも。


 「そういえば華恋ちゃん竹刀ケース持っていたけど、剣道部なの?」


 「あれは学校の備品だ。借りたんだ」


 「なんで?」


 「わたしは不良だからな。竹刀は必需品だ!」


 今度は言えた!華恋は少し胸を張り気味にそういった。


 「不良、ね」


 「姉ちゃん不良の流儀教えてあげれば?高校の時ふりょう「もう冗談ばっかりー」 こつん


 どうん!


 ………………。


 「ねぇ。華恋ちゃんはなんで不良になったの?」


 「私は強い女になりたいんだ。そして」


 「そして?」


 「姉離れをするんだ」


 「そっか……華恋ちゃん。強い女にならなくても姉離れはできるの」


 「そうなのか?」


 「そう。強い人にならなければ耐えられないほどお姉ちゃんが好きなんだとは思うけどさ」


 こくん。


 「でも不良になることでお姉ちゃんは多分心配しちゃってもっと構ってきちゃう」


 「うん」


 「だからちょっとずつ自然に変わっていこう」


 「自然に?」


 「そう。一緒にお風呂に入っているなら日数を減らしていくとか。お姉ちゃんにやってもらっていることがあるなら自分でやってみるようにするとか。少しずつ。そっちの方がきっと簡単に姉離れできるわ。だから不良なんかもうやめなさい」


 「……そうか。そうだな。わかった」


 「よかった」


 「うん、少しずつ頑張ってみる」


 「それがいいわ。お姉ちゃんのためにも」


 「じゃあ竹刀かえしてこないと。ヨーヨーも」


 「ヨーヨー?」


 ヨーヨーもなんだよ。困ったことにね。オレは倒れ伏しながらそんな話を聞いていた。いや聞こえていたの方が正しいか。痛みでそれどころじゃなかったからな。


 「姉ちゃん」


 「何よ。柄にもなくとかいわないでよ」


 姉ちゃんは自分でそう思っているのか、顔を赤くしてそっぽを向いている。そんなこと言わないよ。


 「弟離れできてない状態でよく言えたね?」


 なんで家事の分担オレに偏ってるの?正確にはオレと母さんしかやってない。なんでいつのまにか姉ちゃんの分担がオレに組み込まれているんで、ぐふぅ!


 「あんた空気読みなさい」


 だからこのタイミングしかないと。


 ***


 「ありがとう。送ってもらっちゃって」


 「バス停までだけどな。それにあの折りたたみ傘じゃこの雨だとまた濡れちゃうだろ」


 オレと華恋は雨の中を歩いていた。雨は少しだけ弱まっていた。だけど大きな傘を華恋にかして、オレは少し小ぶりな傘をさしてその横を歩く。


 「今日は悪い日かと思ったが、なかなか良い日だった」


 「オレは痛い日だったなぁ」


 「私が言ってやろうか?宗介は軟弱だから、もっとツッコミは弱めないとだめだぞって」


 「はっはー結構です」


 ねぇ軟弱だという判断はどこでしたの?あのコツンのツッコミ?あれ姉の妙技だからね。多分瓦割れるよ。


 「空のおかげでわたしも不良から卒業をすることができたし」


 「あれは卒業なのか」


 「卒業だ。空はさしずめ熱血教師だな」


 「似合わなーい」


 どっちかというとグレートなティーチャーの方が似合っている。あれもまあ熱血教師と言えば熱血教師なのか。


 「あ、でもゾンビをバババババって撃つ奴は楽しかったな。あれができなくなるのは少し残念だ」


 「あれは別に不良の必需品じゃないから禁止しなくても大丈夫だぞ」


 ついでにいえば別にヨーヨーも竹刀も不良の必需品じゃない。


 「そうなのか。じゃあまた行かなきゃな」


 今度は姉ちゃんも一緒にな。やたら銃さばきがうまいと思うぞ。きっと素人ではない。


 バス停に到着し並んで二人でバスを待つ。雨はさらに弱まっていた。


 「宗介は」


 「ん?」


 「宗介は軟弱で変な奴だけど、いいやつだ。わたしは好きだぞ」


 華恋は突然道路の方を向きながらそんなことを言った。もしかしたら姉へのオレへの扱いを心配していたのかもしれない。これが姉弟だと言われていても、オレを心配してくれた華恋は優しい。


 「まあ、オレの方がオレを大好きだけどな」


 「ぷっ、なんだそれ」


 心配無用ってことだ。


 バスが来る。オレは華恋から傘を受け取る。


 「何から何までありがとう。またな」


 「ああ、じゃあな」


 バスのドアがプシューと閉まり出発する。雨はまだやんでないが、オレは少し気分よく家へと向かって歩き出した。


 


 


 あ。華恋に神楽坂さんへの口止めを忘れた。今日のことがすべて神楽坂さんに伝わったらオレは滅されてしまうのではないだろうか……。


 

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