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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第二章 不良娘(偽)がこんなに可愛い
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彼は今までの清算をする

 怒涛の4月ともいえる1ヶ月を過ごした。入学して、運命と出会い、部活に入り、授業を受け、初めての全校行事を経験した。普通の一年生でもまだ新しい生活に慣れず大変だというのに、オレは群を抜いて大変だったように思える。特に足が鍛えられた。しかしそんな4月も無事乗り越え、5月第1週つまりはゴールデンウィークに突入した。


 …………そうなればどんなによかったことか。現実はそう問屋はおろさない。時間というのは早く進んでほしい日に限って長く感じるものだ。バイトでも早く帰って今日のアニメを見たいとか考えていると全然終わらない。


 オレはこれからアリアに謝罪をしなければならないのだ。しかもオレが一方的に悪い。泣かれるかもしれない。もしそうなったらきっとオレは自責の念に耐え切れず内側からはじけ飛ぶだろう。そして伊万里さんはきっとはじけ飛んだオレを集めて組み立て、殴り飛ばすだろう。


 おかしい。何だかきれいにまとまったような気がしたのになんでオレはこんな窮地に陥ってるのだろう。普通章が変わったら、時間も飛んでいるもんだろう。章ってなんだ。


 逃げ出したい。シリアス嫌いでこういう話題は避けてきた人生だったが、当事者になってしまっては逃げられない。そんなことをしたらもうハッピーエンド厨とか言ってられない。まあ逃げ出すも何もさっきから伊万里さんがオレの手を掴んで離さないわけだが。オレを引っ張ったまま学校を歩いている。


 「あの伊万里さん」


 「竜胆でいいわ」


 「はい?」


 「私、姉がいるのよ。あなた姉のことをなんて呼ぶつもり」


 「おそらく会うことはないんじゃ」


 「そう同じ伊万里さんだと困るでしょう?紛らわらしいから竜胆でいいわ」


 「聞いてる?聞いてないね。はいもう何でもいいです」


 すぐに引くこと。それがオレの処世術である。


 「竜胆?」


 「っ!んん!何?」


 「これどこに向かってんの?」


 「言ってなかったかしら。学校近くのファミレスよ」


「そこにアリアと海神先輩がいると?」


 「ええ」


 ちなみにいうと、オレはファミレスに家族ともしくは一人で以外に入ったことがない。知り合いと一緒にいるときの作法とか知らないんだけど。どこに座るべきなのか。ドリンクバーにはどのタイミングで行けばいいのか。料理は自分の好きなものを頼んでいいのか。それともシェアすることを考えて頼むべきなのか。サラダはオレが取り分けるのか。それとも誰かのサラダアピール(サラダを取り分けることで気を使える人物であることを示すこと)のために残すべきなのか。


 家では簡単だ、全部姉ちゃんの命令通りにすればいい。全くひどい姉だ。命令することでオレを指示待ち人間にして、オレから思考の機会を奪っていたなんて。今度からは自分からサラダを取り分け、姉が食べたいと迷ってそうな料理を選び、グラスが空いたら注ぎにいかなければ。ふぅ。これで安心。指示待ち人間から脱却したぞ。社会に出てもやっていけるだろう。自分の有能さが恐ろしい。


 学校の割と近くにファミレスは位置する。放課後にはたいそううちの生徒のたまり場になっていることだろう。前にも言ったと思うが、うちの高校では昼食は自由なのだ。つまり昼食でこのファミレスにきていいわけだが、お昼時のファミレスは戦場以外の何物でもない。大量の一般客の皆様が押し寄せ、比較的すぐに料理がでてくるファミレスでもお昼時となれば時間がかかる。しかし特攻する人が後を絶たずに授業に遅れる人がちらほらと出る。このファミレスにはそういった戦士たちの幾多の屍が積み上げられたとかなんとか。


 そんなヴァルハラも今は静かなもんで、人はまばらにいるだけだ。


 海神先輩が手を振ってオレたちを呼んでいた。あ、どもども店員さん。連れが先に入ってるんですー。四人掛けの席に海神先輩が一人で座っていた。アリアはドリンクバーに行ってるようだ。竜胆もそちらへ行っている。流石です。


 オレは先輩の隣の席に着席した。


 「海神先輩」


 「ん」


 「調子がいいことを言ってるのはわかってるんですけど、オレをまた総合家庭科部に入れてくれませんか?」


 海神先輩は何も答えずコップを傾けた。そして一拍。


 「後輩くん。野菜ジュース」


 「店員さーん!ドリンクバー二つ追加でお願いしまーす!」


 すぐにお持ちします。


 オレは自分用にメロンソーダを注ぎ、先輩の野菜ジュースを持って、3人で帰還する。


 「どうぞ」


 「ありがと。悪いね」


 「お気になさらず」


 我あなたに従うのみなんで。何?指示待ち人間?馬鹿野郎!勝手な行動をして先輩の気分を損ねたらどうするつもりだ!


 「そもそもだけど。君は退部していない」


 「は?」


 「当たり前だろう。口頭で退部できるわけないじゃないか。退部には退部届が必要なんだよ。生徒手帳を開いたことがないのか?ちゃんと校則にも書いてある」


 「じゃあなんで野菜ジュースを持ってこさせたんですか」


 「あれは君が自主的にやったことだろう?持ってきてなんて、私は一言も言ってない」


 なんだそれは。はぁ、オレを脱力して机にへばりつく。つまりは何事もなかったかのように部活へと参加していいと。


 「まあ、それでも君が罪悪感を覚えるというなら、そうだな、一週間部室では女装して過ごすとかどうだろうか。私が嬉しい」


 「じゃあそれで」


 本当に優しい先輩だこと。


 あとは、


 「アリア」


 「うん」


 「勝手に関係を解消してすみませんでした」


 「うん」


 「オレの言動でもしかしたらアリアが傷ついたかもしれません」


 「……かも?」


 つい自分がそこまでアリアに影響を与える存在だとはまだ思えないから、自然とついちゃったんだよ。


 「傷つけました。オレがバカをやりました。本当にすみませんでした」


 オレは机に頭を付けた。


 「何か傍から見たら修羅場っぽくみえない?あの浮気男も今こんな状況かね?」


 先輩、今真面目なところだから。


 「宗介くん」


 「はい」


 「私にはお詫びの印はないの?」


 アリアはそんなことを笑顔で言った。あれですね。誠意を見せろってやつですね。金色のまんじゅうですか?お主も悪よのう。


 「教室でも女装のままでいろと。ふむ、やぶさかではない」


 「なんでよ。抵抗ありなさいよ」


 キョンシーの格好をしていたやつが今更じゃない。あれは人間から化物のコスプレをしていたけど、今度は人間から人間のコスプレをするだけだ。ほぼ同値。


 「あはは、そんなこと言わないよ。でもマラソン大会の日も今日もりんちゃんと随分仲良く遊んでたみたいだね」


 「別に仲良くないわよ………」


 竜胆が何かぽつりと言った。


 「そうでもなかった」


 竜胆そのフォークをどうするつもりだ。


 「だから宗介くん。私ともデートしようか?」


 「アリア!?」


 「初デートの相手が、アリアか。悪くない」


 「あなたはもっと謙虚になりなさい。そしてアリアを崇め奉りなさい」


 やだなー冗談じゃないですかー


 だからそのナイフとフォークを置いてください。ふぇぇ、アリア教の信者怖い。


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