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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第一章 クーデレ女子がこんなに可愛い
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きっと彼と彼女の関係は

 退部するのに、退部するために、雑用しなければならないって中々にブラックじゃないですか?


 オレは休日なのに休日なのに休日なのに!部室に呼び出されていた。確かに無理矢理頼み込んで部活に入ったのはオレだ。だけどそもそも無理矢理頼まなければ入れないようにしたのは先輩であって、先輩の責任もあるのではないか。もちろん縦社会精神を植え付けられたオレは諾々と先輩の言うことに従うだけだが。最近ではここに社畜精神まで加わってきて、社会の歯車になる準備は万端だ。


 全く先輩のあの横暴さは誰に似たのやら。ほかの先輩方の優しさを見習ってほしい。爪の垢を煎じて飲むべきじゃないか?先輩なら喜んで飲みそうだな(偏見)。


 ふかふかのソファーにうつ伏せに寝ころびながらそんなことを考えていた。


 ガラガラとドアが開く音がした。


 「先輩。遅いですよ。いつまで待たせるんですか」


 「悪かったわね先輩じゃなくて」


 その声にオレは跳ね起きた。先輩の声じゃない。オレは上体起こしのように顔を上げてドアの方を見る。伊万里さんが立っていた。いつもの涼しげな顔ではない。走ってきたかのように髪は乱れ、汗ばんでいる。


 「涼白さんなら多分今日は部活にこないぞ」


 「知ってるわ。今日はあなたに会いに来たの」


 はっきりとそう伊万里さんは言った。逃がさないと言うように伊万里さんの綺麗な目がオレをとらえて離さない。そして物理的に逃がさないように伊万里さんは部室のドアを閉めガチャンと鍵を閉めた。


 なんだかオレは身の危険を感じて、上履きを履き、ソファーに浅めに座る。密室。男女が二人。つまり刺される。オレの天才的な脳がその答えをはじき出した。きっと伊万里さんが抱えている紙袋の中には凶器が入ってるのだろう。


 「今日はあなたに」


 伊万里さんがこちらに一歩近づく。オレはソファーから立ち上がる。


 「言いたいことがあってきたの」


 伊万里さんはさらにオレに近づいてくる。オレはかさかさと逃げる。


 「だから逃げないでくれるかしら?」


 伊万里さんの射程距離に入ってしまった。オレは壁際追い詰められた。進行方向も手で塞がれている。


 「さて、あなたがすごいこだわっている約束の件だけど」


 約束。その言葉に少しだけドキリとした。オレが二人の元を離れようと思った原因のものだ。


 「あの約束、私は約束だなんて思ってないから。ただ売り言葉に買い言葉。私たちの間ではそれが普通だったでしょう」


 「そうだね。でもオレはこんな簡単な約束を守れないようじゃ、二人には信頼されないし、二人の近くにいさせてもらう資格はないと勝手に思った」


 「それで私を助けるために、それを破って二人から離れていきました。バカね。本末転倒じゃない」


 「そうかもね」


 オレはその約束を守ることを免罪符のように考えていたのかもしれない。それを守ることで二人の近くにいる自分を正当化していた。


 そうなるとアリアには電話でずるい言い方をしてしまったな。自分の勝手を棚に上げて。


 「あなたがそれで私たちに線を引いた時、アリアはすごい傷ついていたわ…………私も」


 伊万里さんは小さい声で付け足した。


 アリアと伊万里さんが傷つく?オレが離れたごときで?ある意味で完成された世界に入り込んだ異物だというのに。


 「不思議そうな顔ね。人から拒絶されれば誰だって傷つくわよ。当たり前じゃない。それは関わる時間が長いほどに、信頼が大きいほどにね」


 信頼?


 「結果的にあなたが約束を守っていたことは無駄じゃ無かったってことよ。あなたが私たちに対して距離を測り、ある程度近づいてこなかったのは無駄じゃなかった。物理的にも精神的にもね。あなた私が男を敬遠していることわかってるでしょ」


 オレは無言でうなずいた。


 「そこに対しても踏み込んでこない。パーソナルスペースには入らない。そして私が困っていれば助けてくれる。その積み重ねは私たちから少しずつ信頼を得たのよ」


 「それは買いかぶりだ。オレはシリアスな話が嫌いなんだよ。自分が嫌な気持ちになるものを態々聞かなかった。それだけの話。それに前も言いましたけど人が困っていればだれでも助けるさ」


 「でも実際に助けてくれたのはあなただった。理由なんてどうでもいいのよ。あってもなくても、どんな理由でも。あなたの行動にこそ意味があるの。そのおかげで」


 伊万里さんは壁についていない方の手でオレの手を掴んだ。指を指と指の間に入れてオレの手を握りしめる。


 「ほら指一本どころじゃない、私からこんなに触れることができる」


 そう言ってふわりと笑った。


 その顔を見てオレは、


 「なんか少し手が湿って、いででででで」


 そう照れ隠しで言っていた。


 さらに伊万里さんに手を握りしめられる。もはや握りつぶされる勢いだ。


 「女の子は汗をかかないから、あなたの手汗でしょ」


 なんでそんな嘘つくの?


 伊万里さんは手を放し、オレから離れる。


 「だから今まで通りでいいってことよ。私とアリアを避けないようにしなさい。それとアリアには謝ること。それが言いたかったの」


 「了解」


 「素直なことね。いつもそれだけ素直ならいいのに」


 伊万里さんはやりきった顔で近くの椅子をひくと座った。オレもソファーに深々と座り込む。伊万里さんは頬杖をついた状態でこちらを向く。


 「あなたに聞きたいことがあったの」


 「なんぞ」


 「海神先輩に聞いたんだけど、あなたあの先輩を彼女と別れさせたみたいね」


 ああ、あの先輩ね。


 「学ランを着た1年生が、教室に乗り込んできて先輩の浮気性を暴露したとか。しかもその男子生徒が口説かれた張本人で証拠の音声つき、重ねるように口説かれた・付き合っていると主張する女子生徒たちも乗り込んできて教室は大騒ぎになったとか。その学年で見境がない獣としてあの先輩は一躍有名人。他の学年に広がるのも時間の問題、と言っていたわ」


 「うん。女子生徒たちを扇動したのは海神先輩だけどね。オレは女装して囮になって音声を入手する役。それがどうしたの」


 「よくやったわ」


 「うむ」


 「それとなんでそんなことをしたの?私たちから離れようとしていたあなたに私のために動くなんて意味ないじゃない。私をマラソン大会の日に助けたのもそうだけど。あなたの行動原理が知りたいの」


 オレの行動原理。


 女友達が欲しかった。いや、目標にはしていたがそれは手段であって目的じゃない。ハッピーエンド厨だから。何でオレはハッピーエンド厨なんだ。好みといってしまえばそれまでだが、考えてみる。みんなが幸せな光景が見たいから?なんだそれは聖人か。先輩を罠にかけたオレには似合わない言葉だ。ならばオレの行動原理はきっと。


 「アリアと伊万里さんが幸せそうに一緒にいるところを見たいから、かな」


 オレはオレが好ましいと思う人たちがたとえそれがフィクションだろうと現実だろうと笑っていてほしいのだろう。きっとそれがオレの幸せなのだ。


 伊万里さんは目をぱちくりさせる。そして楽しげに言った。


 「変態」


 「その通り」


 オレにはきっとそれが似合っている。自虐しているわけでなく。本気で思う。自分に正直であることを誇りに思う。


 「ああ、オレも伊万里さんに聞いておきたいことがあったんだ」


 「何?」


 「オレと伊万里さんの関係ってなんだろうな」


 がたがたっと伊万里さんがなぜか動揺している。変態にそんな質問されたからでしょうか。ほら一応ね。それを目標にしてきたわけだから達成できたのかどうか気になるじゃない。


 「日下部くん」


 伊万里さんは重々しく言う。


 「私は人間関係をきずくのがど下手よ」


 「はぁ」


 突然何の宣言だろうか。


 「だから友達ができたことは一回もないわ」


 「いやアリアは?」


 「何を言ってるの?アリアとは出会った時から無二の親友よ」


 あんたが何を言ってるんだ。


 「だから友達がどういうものか知らない。でも親友のアリアがいるから友達のハードルはどんどん上がっていくわ。ほら友達って親友の一個下みたいなイメージがあるでしょう」


 「まあ」


 「だから、私とあなたの関係は、その、し」


 「し?」


 師弟関係?アリア検定とかの。まあ、ありえるところだと知り合いか。


 でも伊万里さんは予想外なことを言った


 「知り合い以上友達未満」


 「ぷっ」


 思わず吹き出していた。なぜそんな範囲を設定したのか。


 「っ!それだけ!それだけ、私の友達になることは難しいってことよ」


 「アリアのせいで?」


 「アリアのせいで、でも」


 「ん?」


 伊万里さんははそこで言葉を切る。そしてオレの目をしっかりと見て言った。


 「知り合い以上友達未満。その中ではあなたが一番」


 オレはゆったりとソファーに座る。頭を背もたれにのせて上を向いた。伊万里さんから顔を隠すように。


 「それ…………オレ以外にランクインしている人います?ぶふっ!」


 顔に何かが飛んできた。伊万里さんが持ってきた紙袋だ。やはりオレを攻撃する凶器だったか。顔にジャージが降り注ぐ。


 「私にだって知り合いぐらいいるわ。あなたは真面目に話すことができないの?」


 ともすればきついと思える言葉だ。オレは顔にかかるジャージを少しだけあげ、伊万里さんの方を見る。伊万里さんは言葉とは裏腹にこちらをみながら微笑んでいた。


 「本当にバカね」


 その笑みに思わずオレはあげていたジャージを元に戻した。ほうほうこれが伊万里さんの家の洗剤の香りか。それが気になっただけ。他意はない。伊万里さんの笑みにさらされながら、なんだかむずかゆい気持ちになった。今日は伊万里さんがよく笑う。いつもの涼しげな顔もいいけれど笑顔もよく似合う。そんなことは言うつもりはないけれど。


 「ああ、アリアと海神先輩に謝らないとな」


 「その二人なら今頃合流して私たちの帰りを待ってるのではないかしら」


 「何それ恥ずかしい」


 「それじゃあ二人のもとに行きましょうか」


 伊万里さんは立ち上がると、そう言ってオレに向かって手を差し出した。あの日のオレと同じように。今度は伊万里さんから。その手を、


 「ああ」


 オレはしっかりと掴んだ。



 


 



 



 中学の時のオレよ。高校に入学してからまだ少ししかたっていないけど高校は夢見た以上の場所だった。すごい仲の良い二人の女の子はいたし、ゆるふわな雰囲気で活動してる部活もあった。あまつさえその中の端っこに自分の居場所を作ることができた。成果としては大したものであろう。この最初の一ヶ月を総括するならそうだな。知り合い以上友達未満の方がすごくかわいかった?いや。


 女友達がこんなに可愛い(仮)。


 (仮)がとれるようにこれから頑張るとするよ。それが高校での目標だからな。

 

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[気になる点] 「アリアなら多分今日は部活にこないぞ」 の部分が仲直りする前なのに名前呼びに戻ってるのに違和感を感じました。
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