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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第一章 クーデレ女子がこんなに可愛い
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彼は初日からフルスロットルである

 「よかった〜りんちゃんと一緒のクラスになれて」

 

 「ちょっと、こんなとこで抱きつかないで」


 「ええ~いいじゃん。こんなの外国では普通だよ」


 「嘘。そういって前も騙したじゃない」


 「あの時のりんちゃん可愛かったなぁ」


 「もう、こっちは恥ずかしかったんだからね」

 

 「それじゃあ、二人きりだったらこうして抱き着いても良いの?」

 

 「それなら……」

 

 「もう、可愛すぎる!」


 「だから……全くもう」


 イチャイチャ、キャッキャッ。


 がふっ。


 オレはその場で崩れ落ちた。そうして二人の邪魔をしないようにゆっくりと教室のドアを閉める。


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!


 ドアに縋りつきながら、心の中で絶叫する。なんだあれは?オレを殺しに来てるとしか思えない。廊下を通りかかった人がビクッとしていたが、そんなこたぁどうでもいい。


 一体前はどんなことで恥ずかしかったんですか。はぁはぁ。


 再びドアを少し開けてみる。


 二人の美少女が抱き合っていた。金髪碧眼でおめめがぱっちりとした美少女が黒髪ロングの眼鏡美少女に抱きついていた。


 「これが高校……!」


 あまりのレベルの高さにやっていけるかどうか不安になってきた。中学の担任も「そうか。合格したか……日下部が浮かないか心配だよ」と言っていたが、こういうことだったのか。体と心がなんだかふわふわしていて今にもどこかへ飛んで行ってしまいそうだ。


 とりあえず廊下に両膝と両肘をつけて、あの光景を生み出した全ての人にモノに最大限の感謝を捧げる。ありがとう(あの子たちの)お父さん、お母さん。


 「君、何をやっているのですか?」


 顔を上げるとバーコード頭のおじさんが話しかけてきた。天にも昇る気持ちだったのに全くもう邪魔しないで欲しいですわ。しかしおじさんに現実に引き戻されたことで、ここが廊下であることに気づく。全くオレとしたことがあまりの衝撃でどうかしていた。


 「通行の邪魔をして本当にすみませんでした」


 「いいから立ちましょうか。隣の担任の先生がすごい目で私たちを見ているので」


 おじさんというかおそらくオレの担任の先生であろう人はオレを立たせる。


 「それでなんでドアに向かってあんなことしていたのですか?まさか誰かから強要を?」


 「いえ自主的に」


 「自主的に」


 「扉を開けたら運命に出会いまして」


 「運命に」


 先生が無言でドアをガラガラと開ける。もう着席している生徒の全ての目がこちらに向く。もちろんその中にはあの二人の目をあるわけで、顔が緩みまくりなわけであります。


 先生がまた無言でドアを閉める。教室が少しざわっとした。


 「一目惚れでもしましたか?」


 一目惚れ。一目惚れか、確かにそうとも言うかもしれない。あの二人が一緒にいるところを一目見た瞬間に雷を受けたような衝撃を受けたわけだから。姉ちゃんも彼氏と付き合い始めたときそんなこと言ってた。七日で別れたけど。


 「はい。二人(の関係)に一目惚れしました」

 

 「先生は聞かなかったことにします。早く教室入ってくださいね。ホームルーム始めますから」


 「え、無理です」


 「なぜ?」

 

 「運命と一緒の空間にいたら死んでしまいます!」

 

 「初日から飛ばしますね、新入生」

 


 ***


 あぶぶ、あぶぶべば


 「えー皆さん入学おめでとうございます。君たちはこれからこの学舎で3年間過ごすわけですが、えー実りのある3年間となるように願っております」


 あぶべべぶ…………


 「本日ですが、このホームルームが終わった後は、下校となります。体育館では新入生歓迎会兼部活動説明会が行われます。自由参加です。演奏や映像作品等もあるため途中退席は休憩時間のみとなっておりますのでご注意ください。えー」


 カクッ


 「あのー」

 

 「はい、えー凉白さん。なんでしょうか?」

 

 「えっと、隣の人がさっきから痙攣しているんですけど」


 「運命と一緒にいるとどうにかなるそうですよ」

 

 あああ、決して許されないことが起きてしまった。運命の二人の仲を切り裂くことになるなんて……確かに先生が一回ドアを開けたとき、何か違和感があったんだ。あれ二人が遠いなと。二人しか見ていなかったから気づかなかったが、まさか、まさか二人の間にもう一つ席があったなんて……これじゃあ、これじゃあ二人同時に見れない!


 「先生!」

 

 「はい日下部くん。座ったままで良いですよ」


 「なんで僕はこの席なんですか!」


 「名簿順です」


 「どうして……どうして僕は日下部なんですか!」


 「先生に聞けば何でもわかると思ったら大間違いですよ」


 日下部じゃなかったらこんな席にならなかったのに。隣を見れば金髪さん。心配そうな目だ。かわいい。反対の隣を見れば黒髪眼鏡さん。ヤバいものを見る目だ。かわいい。首を傾げてもう一回反対側を見る。金髪さんとクラスメイト男子、男子、男子。ヤバいものなんて何もないのに何をそんな目で見ているんだろうか。


 「席替えを希望します!」


 「いいですよ」

 

 「いいんですか!?」


 席替えを希望したのは本音だけどまさか受理されるとは。


 「まあ、いつやってもいいですし。それに今の席順では勉強に支障をきたす人もいるかもしれませんしね」


 「先生。あなたは神か!」


 「先生です」

 

 ***


 あぶべあぶべば。


 「先生。また隣の人が痙攣しています」


 あぶぐぢdjskjぢsks


 「はい、あとは先生が処理しとくので先に解散しましょう」


 なんでだよ。またオレが、ひっく、オレがこの二人の間に入ることになるなんて。


 「先生。席を移動したいです!」


 「……黒板が見えませんか?先にそういう人は前の席を希望してくださいと言ったではないですか」


 「いえ、隣の席のどちらかと交代したいです」


 「何故?」


 「僕にこの二人の仲を切り裂くことはできません!」

 

 やけに静かな教室にオレの声が響いた。


 この二人の間にオレがいたら意味がない!オレは二人が一緒にいるところを眺めたいのに!流石にそんなことは言えないので当たり障りない言葉を選択した。オレも学んだんですよ。中学の時とは違うのだ。


 「日下部くん」

 

 「何でしょうか?」


 「あなたの言う運命というのはそんな脆いものなのですか?」


 「なん……だと……」


 「あなたが中に入っただけで切り裂かれるようなそんなものなのですか?」


 思わず力が抜けて席に座り込む。そうだ。なにをオレは自惚れていたというのか。オレのような塵芥ごときにどうにかなるような二人ではないではないか。


 目から一筋の涙が零れる。


 「オレが間違っていました」


 「そうですか」


 「先生。あなたは神か……」


 「間違ってますよ。日下部くん」


 こうしてオレは先生にまるめ込まれた。あの先生、さてはやり手だな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤダこの主人公、ブレなさすぎる
[一言] ツッコミを福原先生(cv.津田健次郎)で想像したらクソ笑う
[良い点] ラブコメ系で笑ったの久しぶりかもしれない。
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