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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第六章 彼女たちはこんなに眩い
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彼は伝説を作る

 竜胆に一ノ瀬との勝負について説明した次の日の昼休み、オレたちはいつも通り教室で昼食をとっていた。


 一緒に食べているメンバーはオレに竜胆、アリア、神楽坂さんの4人だ。席替え後は席が近いこの4人で昼食をとることが多い。会話の主導権を握るのはオレかアリア。オレとアリアが話題を提供し、竜胆が聴き、神楽坂さんが華恋への愛を語る。それがいつも通りの流れだ。


 今日もアリアが話し始める。


 「丼物って芸術だと言っても過言ではないよね」


 「なるほど。詳しく聞こうか」


 「そうね。大事よね。安易に否定しないこと。話を最後まで聞くこと。共感してから反論すること」


 「あ、それ知ってる。育児の番組で同じこと言ってた。でもあれ嘘だよ。だってずっと全肯定だったけど華恋ちゃんはあんなに真っすぐ育ったもの。はっ!人間の子育てのノウハウが当てはまらない華恋ちゃんはつまり天使!」


 静粛に。二人とも箸をおいて聞くんだ。


 「まずは(キャンパス)があるでしょ」


 「(どんぶり)をキャンパスと読ますセンス嫌いじゃない」


 「なんでわかるのよ」


 「その限られた丼に如何に自己を表現するか。しかも丼にはふちがない。だからフランス料理とかおしゃれな料理みたいにソースで飾り付けることもできない。無駄な物を入れる事もできない。合わない食材同士を一緒に入れる事も出来ない。しかも丼の半分はもうご飯が座している。できることは単純。されど難解。ご飯の上におかずを載せること。単純なのに奥深い。その探求の果てに生み出される美味なる丼物を芸術以外になんて言うの!」


 「料理かしら」


 「竜胆、竜胆。共感フェーズが抜けてるよ」


 「牛丼、豚丼、天丼、かつ丼、親子丼、海鮮丼、ロコモコ丼!」


 「アリアちゃん、ついに語彙が丼物になっちゃたね」


 「呪言師の方かな?」


 「それでアリア、結論を言うと?」


 「私もかつ丼食べたい!ずるいよ!宗介くん!」


 「ずるいことはないでしょう」


 確かに今日のオレの昼食はかつ丼だが。


 「学食のカツ丼だから、アリアも買えば良いんじゃない?」


 かつ丼とみそ汁、漬物のセットで何とお値段400円!学食の値段ってバグってるよね。学生の味方過ぎて心配になる。

 

 オレはトロトロ熱々の卵がかかったカツにかぶりつく。


 「……やっぱりそれ学食のカツ丼よね。食堂から持ち出してよいものだったかしら?」


 「学食のおばちゃんは、お好きな席でどうぞって言ってたぞ」


 「日下部くん、意図を汲みなよ。学食のおばちゃんがお好きに提示できる席は学食内だけだよ」


 「いいや、オレは学食のおばちゃんが理事長でこの学校を牛耳っていると思うね。花京院の魂を賭けてもいい」


 「テレビの見過ぎ」


 「そもそもこの高校に理事長はいないわ」


 「なんで勝手に花京院さんの魂を賭けちゃうの?」


 なんでだろうね。オレもそう思うよ。


 「カツとおかず交換する?」


 「そんな……カツ丼のカツとご飯を別々にするなんて、親と子を引き離すような所業……」


 「嫌ならいいんだ」


 「そろそろ子どもも独り立ちしないとね!親も子離れ!」


 アリアは端のカツをとると、替わりにアリアのミニハンバーグをくれる。普通に中心のカツを取っていくと思ったオレを許して欲しい。


 ちなみにアリアのお弁当は全体的に茶色。


 「うみゃい!」


 それは良かった。


 「……学食のデリバリー。新規のビジネスチャンスがきたな」


 「やめなさい」


 「確かに、昼休みのあの短い時間じゃ売り上げもたかが知れているか。流石は竜胆。鋭い指摘だ」


 「そうじゃないけど、それでいいわ」


 「そろそろ先生たちは日下部くんにお灸をすえた方がいいと思う。私が代わりにやろうかな。平和のために」


 「私利私欲が垣間見えてるぞ」


 「ヒーローだって滅私奉公の精神だけではやっていけないんだよ」


 「ヒーローをやった事ある人の口ぶり」


 「お姉ちゃんはいつだってね、妹のヒーローなの」


 「う~ん、まいった」


 「何処に勝負の要素があったのよ……」


 へへっ、姉妹の関係を出されちゃ敵わねぇや。早く行きな。見逃してやるよ。


 「そういえばさ知ってる?球技大会の伝説」


 カツをしっかりと味わい飲み込んだアリアが言う。


 「伝説?球技大会にそんなものがあるの?」


 「うん、これは先輩に聞いた話なんだけどね、何か優勝チームにはMVPがあるんだけどさ、それに選ばれるとね」


 アリアは面白そうに言う


 「告白が100%成功するんだって」



 ***


 

 「あの伝説作ったのオレなんですけどね」


 「何をやっているのよ」


 学食に食器を返しに行く道中、ついてきた竜胆にぶっちゃける。


 「……伝説を作る男か。ありだな」


 「何を言っているのよ」


 「まあ、オレはただ『告白すると100%成功するらしい』って噂を流しただけなんだけどね。まさか伝説になっていて、100%成功するって断言されているとは。こうやってデマってできるんだろうね。怖いね」

 

 「いけしゃあしゃあってこういう時に使うのね。それでどうしてこんな噂を流したの?こんなのライバルを増やす行為になるんじゃない?」


 それは思春期の男子高校生をわかってない。


 「オレはライバルは減ると考えているかな。いいか、竜胆。男子高校生ってのは自意識の塊なんだよ。これで球技大会を頑張るってことは、好きな人がいますよって宣言するようなもの。それに耐えれるほどメンタルは強くない」


 「そんな中学生じゃないんだから」


 「いやいや、男子高校生はまだそんなもんだって。まあもし裏目に出てもそれはそれでありだ。球技大会自体が盛り上がることはありだ。トーナメントな訳だから一ノ瀬達のチームが負ける確率が高くなるわけだしな」


 「日下部くんのチームにも影響がでるんじゃないの?頑張りにくくなるってことでしょ?」


 「それは大丈夫。何故ならオレがいるから」


 なんかすごいカリスマみたいな台詞がさらりとでたな。これがカリスマの素質……!


 「どうやらオレは悪目立ちするらしいからな。オレが積極的に行動すればするほど、クラスの皆はオレに付き合ってあげている人になるわけだ。そしてもし意中の相手がいるメンバーがいようものなら、その彼には大義名分が与えられる。『全然好きな人とかいないけど?まあ仕方なくね?日下部が頑張っているからね?俺もクラスメイトのために頑張ろうかな?』といった風に逆にモチベーションアップにまでつながる」

 

 「…………最近カツ系の食事が多いのって?」


 「無論願掛けだ」


 ふっ、竜胆からの畏怖の目が痛いぜ。じゃあ畏怖の目じゃないな。


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― 新着の感想 ―
しれっとハーレム的構図で飯食ってますねこの男 神楽坂さんもシスコンスイッチさえ入らなければ割と気安い関係の友達として接してるのなんか良いですね 問題はスイッチが緩すぎて神楽坂さんが第三者的な立ち位置…
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