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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第六章 彼女たちはこんなに眩い
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彼らは休日に集まる

 9月に入り、朝晩は半袖では肌寒い気候となってきていた。


 そんな早朝にオレは外へ出る。朝と夜の境目。日本人はそんな曖昧な時間に様々な名前を付けてきた。曖昧だから沢山の名前がついたのかもしれない。ちなみにオレが一番好きなのは黎明。次点で残夜。「黎明」って、音の響きとか漢字のカッコ良さとか完璧だよね。「黎明期」ってなると途端に古臭く感じるは多分歴史の教科書のせい。


 ふうと息を吐く。流石にまだ息は白くならない。ジャージに身を包んだオレはゆっくりと体をほぐし始める。そして薄暗い町の中を走り始めた。


 ***


 土曜日、それは完璧で究極な休日(アイドル)。背後を日曜日の兄貴に任せられるおかけで、何の気兼ねもなく自由気ままに振る舞う、オレたちを魅了してやまないその姿はまさに休日。


 昔はそんな土曜日も学校に行っていたという。大人はそう語る。いやそう騙る。ふっ、今も週5で学校に行っているオレは騙されないね。週6も学校に行けるわけないだろ!人間はそんなに強くない。昔、父さんはオール〇イトだったんだと言われて信じるのは幼稚園までだぜ。……父さんめ。マッスルフォームを見せてくれる約束まだ覚えてるからな。


 さて、こちらはそんな土曜日にサッカーのお誘いに快く応じてくれたオール〇イトの皆さんです。


 「おーす」


 「おお、こんちは」


 「ええ……まさか出場メンバー全員来たのかよ」


 「土曜なのに誰も予定がないなんて、どんだけ悲しいやつらなんだ」


 「お前も来てんだろ」


 「べ、別に来たかったわけじゃないんだからね!」


 「そうかごめんな。帰れ」


 「ええ……ひどい」


 「いや、今のは仕方がないだろう。嫌悪感がすごかった」


 「ああ、寒気がしたぜ」


 「ぼくも思わず手がでそうだった」


 「次はない」


 「……よし、わかった。全員が敵だな。かかってこい!」


 わいわい。がやがや。ざわざわ。うごううごう。


 うむ。


 「なんて頼もしい奴らなんだ」


 「正気かお前」


 なんてこと言うんだ。


 「小島。流石に今の発言はひどいぞ」


 「すまん。そうだよな。わざわざ皆土曜日に集まってくれたのに」


 「正気だと?そんなものは疾うに捨てた。オレはいつだって狂気に身を委ねている」


 「みんな、潜在的に敵なの多分こいつだ。こんな危険人物は放っておいてゲーセン行こうぜ」


 「キシャァァァァァ!」


 「狂気に身を委ねすぎだろ」


 まあ、それは兎も角だ。土曜日の運動公園にオレは球技大会のサッカーのメンバーを集めていた。何人か集まってくれればいいなと思っていたが、まさか全員集まってくれるとは。嬉しい限りだ。オレの人徳だな。もしくは一ノ瀬光の人徳。人徳が良すぎる故に逆にね。


 「よし、じゃあみんな集合」


 オレはホイッスルをピッと吹いて集合をかける。バラバラのジャージを着たメンバーがオレの周りに集合する。


 「まず最初に聞きたいんだけど、サッカー経験者の人っている?」


 「そういえば聞いてなかったな」


 結構重要な事なのにね。最初に教室で集まった時も、途中から雑談ばっかりしてたし。


 確か世界三大難問である「ハーレムラブコメにおける納得感のある最終回」について喧々諤々と議論をかわしたんだっけ。ちなみにオレは断然ハーレムエンド派だ。ハッピーエンド厨のオレとしては主人公には全員を幸せにする義務があると思うね。昔は、推しヒロインはオレが幸せにする!という反主人公の過激派だったが、オレも丸くなってしまった。ヒロインが幸せならOKです。


 閑話休題。

 

 「なるほど経験者は0人か」


 皆、互いを見るばかりで誰も手をあげなかった。


 「え、逆に日下部は経験者じゃないのか?」


 「ああ、サッカーが題材の日常系アニメがなくてな」


 「例えそれを見てても経験者とは言わないよ?」


 「それじゃあオレが練習メニュー持ってきたから、それを元に始めるか。一応サッカー部の人に考えてもらった初心者用のやつだけど、ご意見ご感想はこちらの宛先までドシドシ応募してます」


 「どこだよ」


 ピッ。それじゃあ練習スタート。


 ***


 俺の名前は小島時正。父さん、義母さん、義妹と一緒に住むどこにでもいる普通の高校生だ。漫画の主人公が自身を韜晦して言うような物では決してなく、本当に普通の高校生だ。確かに中学生の時は、運動も勉強も学校で上の方だったから俺は特別なんだと浮かれていた時期もあった。そもそも上の方であって決して一番ではないあたり特別だと浮かれるなよと今は思うが、それは中学生だということで一つ。


 そんな俺は高校に入って、奴に会って自分は普通なんだとそう思った。


 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」


 「おつかれ、横尾。ほらしっかり座って休め」


 そんな普通の高校生の俺は休日にサッカーの練習に来ていた。午前中に部活をしてからの参加は中々きついものがある。横尾ほどじゃないが、俺もバテバテだ。


 「はぁ、はぁ、はぁ」


 「普段、運動してないんだろ?あまり無茶すんなよ」


 「ああ、ありがとう委員長」


 横尾はどっかりとベンチに座ると、ごきゅごきゅと水を飲み始める。


 「しかし意外だな横尾がこういうのに参加するとは」


 横尾は別に人付き合いが悪いと言うわけではないが、こういう学校の行事に積極的に参加するとは思わなかった。まあ、それは今日来てくれた全員に言えることだが。球技大会なんて勝っても負けても何があるわけでもないものに。俺もここいる時点で全部ブーメランだな。


 「いいだろ。たまには」

 

 「別に悪いとは言ってないが」


 「……僕も本気で取り組んでみたくなったんだよ。日下部を見てたら」


 ああ。それはわかる気がする。


 日下部宗介。それが俺がこの高校で出会った友人の名だった。俺が普通だと自覚した原因だった。春に初めて出会ったときは空気の読めない陽キャだと思っていた。もしくはただのアホ。また一部のクラスメイトからは、隔絶した存在である伊万里さんと涼白さんに平気で話しかける勇者だと言われていた。なんにせよ共通していたのは痛々しいということぐらいか。


 しかし日がたつにつれ日下部の評価はぶれ始める。口を開けば、皆の評価通りふざけたことしか言わないのに、授業は真剣に受ける。内申点なんかを気にして、先生にへつらっているだけかと思っていたが、授業以外では先生にふざけた口を聞いていた。敬語を崩さない所がもはや煽っているまであった。


 成績もよく運動もできて、行動力も問題解決能力も高い。でも痛い。何故日下部はそんな振る舞いをしているのか。その振る舞いが自分の不利になる事くらい、日下部なら考えればわかるのに。


 そして気付く。日下部宗介という男は確かに変人で変態で傾奇者だ。


 だけど常に全力なのだと。ただ今を楽しむということに本気なのだ。それ以外目に入っていないのだろう。だから日下部はいつも生き生きと笑っていた。


 俺も同じように笑ってみたかった。


 日下部のストッパーみたいな扱いをされているが、結局は同じ阿呆だったのだろう。踊る阿呆の見る世界を見たくなった。それは横尾も、もしかしたら今日来た皆もそうだったのかもしれない。


 「知っているか、委員長。日下部ってこの球技大会のために毎朝練習しているらしいぞ」


 「それは、やりすぎだろ……」


 「僕もそう思った」


 日下部の中ではそれはやり過ぎではないのだろう。俺たちは今もグラウンドで元気にボールを蹴っている日下部を見る。


 もはや笑いがでるぐらいの本気だ。


 そんな本気に俺たちは巻き込まれたかったのだ。


 皆様お久しぶりです。長い間お待たせてしまい本当に申し訳ございませんでした。そして読んでくれてありがとうございます。


 更新していなかった期間何をしていたかというと、実は何と驚くべきことに……働いておりました!ニートから脱却し社会の荒波にのまれていました!正社員げろ忙しい!


 そんな感じで亀更新にはなるとは思いますが、また読んでくれたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
久しぶりの更新!嬉しいです!やったー!! 大好きな作品なので復活とても嬉しいです…! 日下部君とヒロイン達の楽しいラブコメがまた読める…!
生きててよかった。 これから楽しみです。
復活嬉しいです。やっぱり面白い次も更新楽しみにしてます!
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