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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第六章 彼女たちはこんなに眩い
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彼は手紙を受け取る

 「ん?」


 なんとか死相を乗り越えた次の日、オレは下駄箱を開けて停止した。


 上履きの上に昨日までなかった白い紙が置かれていたからだ。劇団家庭科部による劇に巻き込まれた時にもこんなことがあった気がする。その時は確かノートの切れ端だった。しかし今回は違う。ちゃんとした手紙だ。


 オレは手紙を取り出す。思わず笑みが零れる。


 バサッ


 何かが落ちる音。


 物音がした方を向くと竜胆とアリアが立っていた。アリアの手からカバンが落ちている。自分が箸より重いものを持たないことに気が付いたのだろうか。流石お嬢様。


 「二人ともおはよう」


 「こ、こ、こ、こ」


 こんにちは?流石に今はまだおはようの時間じゃないか?時間までも私の思うがままだと。流石お嬢様。


 竜胆がアリアのカバンを拾いながら時間に合った挨拶を返してくる。


 「おはよう、日下部くん。それでその手に持っているのはまさか……」


 「ああ、そのまさかだ」


 「そう……」


 すると二人は何故か後ろを向くとこそこそと話をし始めた。おそらくこれが悪戯だと思ってるのだろう。もしくはオレと愉快な仲間たちによる犯行か。いやいやこれは悪戯じゃなく本気だね。オレにはわかるんだ。


 (「こ、こ、こ、」)


 (「落ち着いてアリア」)


 (「あ、あれってこ、恋文ってやつだよね!」)


 (「何故わざわざ古めかしい日本語で表現したのかはわからないけれど、そうだと思うわ。本人も認めてるし」)


 (「どうする?」)


 (「どうすると言われても……告白を邪魔するなんてそんな真似できないじゃない」)


 (「だ、大丈夫だよね。だって宗介くんがそんなものに興味あると思えないし。りんちゃんの誕生日会でも私たちが折角私服に着替えていたのに、何の反応もなかったし。文字通り眼中になかったし……」)


 (「自分で言っておいて落ち込まないで。大丈夫可愛かったわ」)


 (「ありがとう。だから大丈夫だよね?うん、大丈夫!」)


 (「自分に言い聞かせてるわね」)


 (「よし、オッケー。私はクール。クールガール」)


 (「本当に日下部くんに毒されてきたわね………)」


 話がまとまったようだ。何かを決意した目でこちらに歩んでくる。まるで親が子供にサンタさんは実在しないことを伝える目。嘘だい!サンタさんはいるんだい!


 オレは思わず手紙を胸に搔き抱く。


 ぴたりと止まる二人。


 「絶対これは悪戯なんかじゃないやい!」


 「……こほん。いいえ日下部くん私たちはそういうことを言いたいんじゃないの」


 「嘘だッ!」


 「嘘じゃないよ~。ただ私たちは宗介くんと話がしたいだけだよ~」


 「くっ……オレにだってわかってるんだ!これが悪戯かもしれないってことぐらい」


 そう零した瞬間、竜胆とアリアは二人で顔を見合わせる。


 「……宗介くん、本当はわかっているんでしょう?」


 「その言いにくいのだけれど、今時手紙は」


 「言いにくいなら言わんでくれい!」


 オレは歯を食いしばりながら、ドンっと拳を下駄箱に叩きつける意気込みで、下駄箱を拳でそっと触れる。物を叩いちゃいけないからね。下駄箱は学校の備品だし。


 「だけど、オレは、初めて貰ったんだよ、こういうものを」


 「日下部くん……」


 「宗介くん……」


 二人は驚いたような、悲しそうな顔をする。どういう感情ですか?


 でも、これだけはわかっている。二人がオレに悪戯に引っかかって欲しくないって思っていることは。


 それでも、オレは信じたい。一縷の望みを持っていたい。

 

 オレは手紙を突き出すように見せると言った。


 「この()()()()は絶対に本物なんだよ!」


 見てくれこの立派な筆字の果たし状という文字を!ここまでやってくれたなら最早悪戯でもオレは一向に構わん!


 「「………………うん!私たちも本物だと思うよ(わ)!」」


 「急な手のひら返し!」



 ***


 そして放課後オレは屋上に立っていた。バサバサと強い風に吹かれて鉢巻きの端と服の裾がはためく。


 果たし状には「今日の放課後屋上にて待つ」と書いてあった。なお「予定があったらそっちを優先してください」とも小さく書かれていた。果たし状とのその文言のギャップがすごい。ははーん。さては果たし状初心者だな。待つと書いておきながらオレの方が先に屋上に着いている辺りにも初心者故の拙さが見て取れる。やれやれ、待つと書いた以上待っていてほしいものだ。


 こちらはとうに準備万端だというのに。


 ガチャリとドアが開く。


 「来たか」


 オレはゆっくりと振り返る。


 そこにいたのは見知らぬ生徒。良かったこれで知り合いによる犯行の線は消えた。


 白い襟付きのシャツに細めのスキニーパンツ。少し茶色の髪を爽やかな感じで整えた優男だった。果たし状を出すように見えない好青年風だ。


 ノリノリで「来たか」とか呟いちゃったけど、人違いかもしれない。


 その優男はオレを見た瞬間に崩れ落ちた。両手両膝を床について這いつくばる。


 「負けた……」


 一体何の勝負で?


 「いや、まだだ。勝負はまだ始まっていない」


 優男は自分に言い聞かせるように呟きながら、ゆっくりと立ち上がる。


 「流石ですね。既に戦闘態勢とは。こちらとしては今日は勝負を受けるかどうかの確認に来たつもりでしたが……認めましょう。意識の差であなたと私に大きな差があることを。」


 優男はオレの格好を見ながらそう言った。


 「聞いたことがあります。古の時代、男たちはその衣装に身を包み、雌雄を決していたと」


 「ふっ、よく勉強しているじゃないか。そうこれこそが日本男子の戦闘服、長ランとボンタンだ」


 当たり前かのようにメイドイン森川先輩。オレ用に作られたものではなく、既に部室に存在していた。流行りのアニメの影響で、衝動のままに特攻服やこのような改造学ランを作ったそうだ。オレは昼休みにこの服に着替えると、最後の授業が終わった瞬間に扇風機(鉢巻きと裾をはためかせる用)をかかえて屋上にダッシュした次第だ。


 …………え?この格好の事、古の時代って言った?オレの中学に普通に居たんだけども。ジェネレーションギャップが凄いなうちの中学。冷たい校舎の時が止まってたのかな。うちの中学ではよく改造制服に身を包んだ赤髪のヤンキーが体育館でバスケしてたよ。何の漫画を読んだかもろわかりだ。不良も一種の中二病なんだなと思いました。


 「それでは勝負を受けてもらえるということで良いですか」


 「ああ、勿論だ。売られた勝負からは逃げない。それは男に、いや漢に生まれ落ちた時から決めている」


 「え?何を言い直したんですか」


 「心意気を」


 「……流石です。ゴクリ」


 薄々感じていたが、この人アホっぽいぞ。


 「しかし、勝負の内容も言っていないのに大した自身ですね」


 「……あ、ああそりゃ勿論。どんな勝負の内容でも勝つ自信があるからな」


 オレもアホでした。くじ引きとかだったらどうしようか。昨日死相が見えたから運は悪い気がするんだよな。


 「察しのいいあなたならもう既に気が付いているかもしれませんが、勝負の内容は今月末に行われる球技大会です」


 「ほう」


 ほう?今月球技大会なんてあるんですね。


 「同じ競技に出場して、より上位の成績をとった方が勝ちという事でよろしいですか」


 「ああ」


 「競技はどれにしますか?」


 「そちらが好きなのを選ぶと良い」


 だって競技の内容知らないし。


 「テニスを選ばないとは……。あくまでも真正面からの勝負にこだわってくれるということですね。わかりました。バスケは私がバスケ部に所属しているため出場できないので、必然的に競技は一つに決まります」


 テニスとバスケがあったようだ。


 「そうサッカーです」


 サッカーになった。


 「正々堂々良い勝負をしましょう」


 「ああ」


 オレは差し出された手をギュッと握る。


 さてサッカーを題材にした日常系アニメはあっただろうか。


 そんな思考は彼の手を握る力が強くなったことで遮られる。彼は真剣な面持ちで口を開いた。


 「僕はあなたに勝ちます」


 決意と緊張に満ちた声。彼は乾いた唇を舐める。


 「そして自信を持って涼白アリアさんに告白します!」


 了解。蹂躙がお望みだな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「そして自信を持って涼白アリアさんに告白します!」 まさかのアリアを狙う優男の出現!なんて無謀な… どちらにせよ日下部君にとってはアリアと竜胆の仲に挟まろうとする男は滅っする対象だか…
[一言] 正々堂々なのでOKです
[良い点] アリアに告白することは許されなそうだが、既にこの果たし状男若干好きになりつつある。
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