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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第六章 彼女たちはこんなに眩い
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彼は雑学を披露する

 席替えも終わり、新学期一発目の日程が終了した。夏休みが終わったことをやっと受け入れたのか、みんな元気に教室から出て行った。高校生活において一番楽しい時間、放課後の始まりである。高校生活の本筋ではない放課後に楽しさで負けるとか、高校にはもっと頑張ってもらいたいものだ。


 「それじゃあ、私はテニス部のミーティングに行ってくるわね」


 「はいはい~了解。私たちは教室で待ってるから、終わったら連絡してね」


 「わかったわ」


 竜胆はそう言うと荷物を持って教室から出ていった。他のクラスメイトも徐々に教室からいなくなり、オレとアリアの二人だけが残った。オレ達の部活は今日は活動がない日だ。


 ……そういえば夏休み中一度も海神先輩達に出会わなかったな。吹っ切れた海神先輩はきっとバラ色の夏休みを過ごしたことだろう。今から想い出話を聞くのが楽しみだ。


 「そういえばアリアと竜胆、オレがいない時に家に来てたみたいだな。なんか心配かけたようですまん」


 「本当だよ。急に三日間ぐらい連絡が途絶えるからびっくりしちゃったよ。宗介くんの家に行ったら山に行ってるって言うし」


 「悪かった」


 修行のために山に向かったから、人間界との関わりを断つためにスマホは家に置いていったのだ。


 でもよく考えたらオレはSNSもやっていないし、ニュースとかもシリアス展開とかバッドエンドが多めだからほとんど見ないうえに、フィクションしか楽しまない。もしやオレは既に人間界から解き放たれている超常の存在なのではなかろうか。『次元の壁に挑む者』の名をほしいままにしている。


 「折角だからそのままお姉さんと華恋ちゃんと遊んだけど」


 「へぇ~」


 「宗介くんの部屋で」


 「部屋の主が不在の時に何をしてるん?」


 「大丈夫。ちゃんと宗介くんのお母さんに許可はとったから」


 「オレへの報告が事前にも事後にもないのがおかしいと思うのはオレだけでしょうか」


 姉ちゃんも華恋も部屋には無断に入ってくるし、今更ではあるけれど。


 「アルバムを見せてもらったんだけどさ、小学校の時の宗介くん可愛かったよ~」


 「失敬な!今も可愛い!」


 「その返答は予想してなかった」


 逆にどんな返答を予想していたのだろうか。


 アリアの方が可愛いよとか言えば良かったのだろうか。小学生男子に可愛さで勝って嬉しいのだろうか?可愛さのベクトルも違うし。


 「そういえばお姉さんは嘆いていたよ。小学生の時は可愛かったのに、今ではこんな朴念仁になってしまったって」


 「嫌だな姉ちゃんたら、朴念仁は愛想のない無口な人のことを指す言葉だ。何と間違えたかは知らないけど完全に誤用だ。あっはっは」


 「………」


 「アリア?」


 「そういう所だよ」


 「え?」



 ***


 

 「そういえばどうして山になんて行っていたの?山の中におばあちゃんの家があるとか?」


 「昨今若者のスマホ依存が問題になっており、およそ日本人の四百万人ほどがその症状を持つという」


 「突然どうしたのかな?」


 「人と対面していようが目線はその小さな画面へと向かい、コミュニケーションを取るのは顔も知らない誰か。果たしてこの機械は人との距離を近づけたのか遠ざけたのか。オレはそんな世情を憂いた。そして世間に一石を投じることを決意したのだ。そのためにはまずは自らの姿勢で示すこと。自分がスマホやパソコンを使っているままならば、憂いの言葉はただの戯言と化してしまう。だからオレはスマホやパソコンを手放し、山に籠ったのである」


 「長かった~。そして相変わらず行動力の塊だよね」


 「俗に言うデジタルデトックスだな」


 「あ、それは聞いたことあるかも。旅行のプランでそんなの見たことある気がする」


 「デジタルデトックスはすごいんだぞ。とある研究結果によると、想像力が高まったり、閃きが良くなったり、安心感を得たり、幸せな気持ちになったりするらしいぞ」


 「あれ?おかしいな。何だか急にデジタルデトックスが胡散臭いもののように思えてきたよ」


 「そういえば以前家に壺を売りに来た人が、壺を買うことによってもたらされる効果で同じようなことを言っていたな。あれはもしやデジタルデトックス用の商品だったのだろうか。ほら、スマホを入れて鍵閉める箱みたいな」


 「絶対違うよ。怪しいツボとデジタルデトックスを一緒くたにしないであげて。あとそういう人の話は聞かないでさっさと追い返した方がいいよ」


 だってあんな詐欺の注意喚起のビデオに出てくるようなコテコテの怪しい壺初めて見たんだもの。逆にどういう壺なのか気になるでしょ。


 「まあ冗談だが」


 「どこからどこまでが」


 「デジタルデトックスをしに行ったということ」


 「全部じゃん」


 「本当は精神を鍛えるための修行に行ったんだ」


 「冗談の方が真実っぽいんだけども?」


 「事実は小説よりも奇なりというやつだな」


 「違うと思うよ」


 あれ?なんかアリアさん、ツッコミがこなれてきてはいないかい?


 

 ***



 「あ、りんちゃんから連絡来たよ。ミーティング終わったって」


 「了解。じゃあオレ達も昇降口に向かうか」


 カバンを持って立ちあがる。


 今日はこうして放課後3人で合流しようとしているが、意外にもオレは彼女らと放課後に遊ぶことは多くない。竜胆とはバイト先でアリアとは部活で一緒にはなるが、三人一緒となると中々予定が合わないのである。そんなオレ達だが今日は丁度テニス部もミーティングだけ、家庭科部もなしで予定の空きが合ったのだ。


 しかし、そうじゃなくとも今日アリアと竜胆は放課後一緒にいたことだろう。もしかしたら今日を迎える瞬間も一緒にいたかもしれない。


 なぜなら本日8月31日は竜胆の生まれた日なのだから。


 はい、拍手!


 こんなめでたい日なのに、なんで今日まで夏休みではないのだろうか。それならばアリアと竜胆は誰にも邪魔されることなく一緒にいられたのに。


 アリアの部屋で竜胆の誕生日会を開くという事で、オレも呼ばれたのである。アリア、あなたが神か。


 ド〇キで沢山パーティグッズを買ってきたし、勿論誕生日プレゼントも買ってきている。8月31日にちなんだ物でも送ろうと考えもしたが、竜胆はおそらく野菜も初音〇クも貰っても喜ばないだろうから止めた。英断だな。そういえば。


 「アリア、ねぇ知ってる?」


 「豆〇ばかな?懐かしいね」


 「8月31日って I LOVE YOU の日なんだって」


 オレはそんな最近仕入れた雑学を披露した。


 ピタリとアリアが固まった。


 「アリア?」


 「………………あ!ごめんね続けてどうぞ」


 もしかして知ってる雑学だったのだろうか。だけどオレがあまりにも得意気にいうもんだから、言わないであげてるのだろうか。優しさが痛い。


 まあいい、ではお言葉に甘えて続けよう。


 「日本ではあまり馴染みはないけども英語圏では831というのは I LOVE YOU を意味するそうだ」


 「へ、へぇ~」


 「I LOVE YOU が8つの文字、3つの単語、1つの意味で構成されているからそうなったらしい。このことを知ってオレは思ったんだ」


 「……何をかな?」


 「わかりにくくない?と」


 「…………」


 「無理矢理にこさえたような感じがするよね。どこかにもっと良い日があったろうって思う。なんか日本のバレンタインデーにも似た恣意的な臭いを感じるよな」


 「宗介くん」


 「ん?」


 「本当そういう所だよ」


 「え?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] あ~日下部君とアリアのボケとツッコミみると心が潤うんじゃ~ 今話も面白かったです!! 感想 ① >日下部「そういえばアリアと竜胆、オレがいない時に家に来てたみたいだな」 さっそく好きな…
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