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女友達がこんなに可愛い(仮)  作者: シュガー後輩
第五章 夏休みがこんなに楽しい
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彼は彼女に仕事を教える

更新が遅くなってすみません。


遅れた理由とは全然関係ないのですが、最近魔法科〇校を全巻大人買いしました。面白かったです。

 「私だってね!私だってね!二人と一緒に働きたかったよ!でもね、でもね!先生が言うの!テストの順位が200位台の人にはバイトを許可することなど到底できませんって!」


 「なんてことを言うんだ先生は!言ってやれアリア!バイトをしようがしまいがその時間を勉強に当てるわけではないので、成績は上がりません!って」


 「なんでそんな意地悪言うの!?私だって空いた時間で勉強するかもしれないじゃん!」


 「そこで勉強するって言い切らないあたりがもう勉強しませんって言ってるのよ」


 そもそも現に君は今ここでくだをまいているわけだし。


 「店長さん!店員がお客の精神をチクチクしてきます!」


 「それは良くないよー、日下部くん。お客さんには癒しを提供しなきゃ。はい、キャラメルオレ。苦さ抑えめ、甘さましましだよ」


 そんなラーメンみたいな頼み方できたんですね。


 「わぁ、ありがとうございます。あま~い。美味し~い。私のすさんだ心が癒されていく気がする」


 カップを持ち本当に美味しそうに飲むアリア。それを見てこちらも本当に幸せそうに笑う店長。


 「うんうん。私もねお客様のそんな顔が見たくてこのお店をやっているんだ。日下部くんもお客さん虐めちゃだめだよ。本当のことでも言っていいことと悪いことがあるからね。お客様、喫茶店Sanatioをこらからもごひいきに」


 うん、店長も追い打ちをかけている気がする。


 というか、うちの店はそんな名前だったのか。働き始めて5ヶ月目にして知る真実。おそらく響きの感じからしてラテン語だろ。店長の趣味だと~~処みたいなネーミングになるので、店長が考えたものではないな。


 「お待たせしました」


 そんなことをしているうちに、着替えた竜胆が帰ってきた。うちのバイトの制服を着て、長い髪はポニーテールにしてシュシュで結んでいる。そのシュシュは当然、文化祭で買ったアリアお手製だ。ふぅ~。


 「わぁ~りんちゃん似合ってる~」


 アリアは小さく拍手する。そうだね。こんなに竜胆に似合うシュシュを作るだなんてアリアは誇っていい。これが愛の力か。


 「うんうん。どうやらサイズは問題ないようだね。じゃあお店の方は私一人でも大丈夫だから、日下部くんフロアのお仕事について教えてあげて」


 「わかりました」


 お客さんはアリア一人しかいないので、店長に任せてオレは竜胆に向き直る。学校では友達だが、ここでは仕事の先輩。ビシビシいかせてもらおう。オレのその真剣な雰囲気を感じ取ったのか、竜胆の背筋も心なし伸びる。


 「じゃあ基本的なところから教えていくな」


 「ええ、お願いするわ」


 それからオレは竜胆にフロアの仕事を教えていく。お客さんが来た時の流れ。注文の取り方。料理の運び方。帰った後の片付け。流石に今日ですべてを覚えろとはいわないが、最初に全ての流れを教えていく。ここから後日、順に挑戦してもらう。


 今日はぽつぽつとお客さんが来て、忙しくもなくかといって暇を持て余すほどでもないという新人のために合間に説明を挟むには絶好の日だった。竜胆も運がいい。これがもし稀にくる忙しい日に当たったら、オレと店長が忙しく働く中、キッチンで突っ立てもらうところだった。店内でお客さんに話しかけられても対応できないからな。


 ちなみにこの間、アリアはカウンターで夏休みの宿題をえぐえぐ言いながら解いていた。そうか、アリアは合宿のノルマを達成できなかったのか。ちなみにあの合宿の勉強するときの席や部屋は名簿順で組まれている。そのためアリアの面倒を竜胆が見れなかったようだ。


 竜胆と一緒にお客さんが帰ったテーブルを拭き終わる。


 これで店内にいるお客さんはアリアしかいない。アリアはずっと宿題をやっている。別に混んでないからいいけど、まだ終わらんか。


 それはともかく、お店も落ち着いたところで大事なことを竜胆に伝えなければ。


 「竜胆、働くうえで一番大切なことは何かわかるか」


 「一番大切なこと……。お客さんを思いやる心とかかしら?」


 いや、そんなバイトの面接で答えるような綺麗ごとではない。


 オレはチッチッチッと人差し指をふる。竜胆は拳を握る。ちょ、オレは先輩ぞ。ダメだからねその拳を使っちゃ。オレは竜胆の拳におびえながら先輩としての教えを説く。


 「働くうえで一番大切なこと。それは、自分の気持ちに正直になることだ」


 「自分の気持ちに?」


 「ああ、バイトする学生は皆こう思っている。早く帰って遊びたい、とな」


 「……皆が皆そう思っているわけではないんじゃないかしら。ほら、よく小説とかにも生き生きと楽しそうに働く若者がでてくるわ」


 「はっはっは竜胆。フィクションと現実の区別はつけなきゃダメだぞ」


 「それはそうだけど。あなたに言われるのだけは解せないわ」


 いやいや、ちゃんと現実とフィクションの区別ぐらいついてるよ。ただ現実がフィクションのように楽しくなればいいなと行動しているだけで。


 それにしても竜胆ったら仕事に夢見ちゃだめだぞ。


 人はやりたいことは無料でやるし、有料でもやるんだ。つまり賃金が発生するということは人にとってやりたくないことか、やりたくてもできないことのどちらかだ。当然接客業は前者だ。


 「それで、自分の気持ちに正直になったらどうだっていうの?」


 「完璧な仕事ができるようになる」


 「論理が飛躍したわ」


 「詳しく説明するとだ。早く帰りたい、仕事を増やしたくない、クレームなんてもってのほか、クレームを貰わないようにするのはどうすればいいか考える、仕事を効率よく完璧にこなすようになる。ね、やっぱり自分の気持ちに正直なるのが最善なんだよ」


 「……そうね最終的な結論は間違っていない気がするのだけど、なんだかこうもやっとする気持ちは何かしらね。あまり働いたことないからわからないけども、仕事の姿勢としては間違っている気がするわ」


 「いいか竜胆。お客さんが求めているのは温かい接客でも、仕事に対する真剣な姿勢でもない。いかに自分の頼んだものが間違わずに早く席に来るかだ。つまりは重要なのは正確さ迅速さ。それ以外は重要じゃないんだ。店員はベルトコンベヤーぐらいにしか思われていない」


 「なんだか働くのが嫌になってきたわ」


 「ようこそ!労働の世界へ!」


 ふぅ、仕事のオリエンテーションとしては完璧なものができたのではないか。さてそろそろオレも上がりの時間かな。


 オレは竜胆に背を向けると大きく伸びをする。今日も働いたわー。


 「でも、日下部くん。やっぱりあなた間違っているわ」


 ぽつりと竜胆が言った。


 「いやいや、実際そんなもんですって。お客さんなんて店員のことを見てないよ。あーでも竜胆は美人だからな。確かに違うかもな」


 「び!……そこじゃないわ。間違いだと言った所は」


 「え、じゃあどこが?」


 オレは振り返って聞いた。


 「バイトする学生みんなが早く帰りたいと思っているってところよ。……少なくとも私は、今日、あなたと一緒に働いていて、そんなこと思わなかったわ」


 竜胆はオレから目をそらしながら言った。


 こぽこぽとコーヒーが湧き上がる音が二人の間を包む。


 そんな竜胆にオレは、温かい目を向けながら言う。


 「竜胆……。店長が近くにいるからってそんなこと言わなくていいんだぞ」


 「店長さん。仕事の時間が終わったので、私もアリアと同じ飲み物をください。支払いは日下部くん持ちで」


 「竜胆さん!?」


 「はいよ~」


 「店長!?」


 こんなに真面目に働いたというのにお金が減るなんて、おかしなことがあったもんだ。理解ある先輩ムーブの何がいけなかったんだろうか。


 「まあいいか、店長。オレも同じものだください」


 「はいはい」


 「宗介くん。私はー?」


 「……一杯だけだぞ」


 「やった」


 その後、オレと竜胆はアリアを挟むようにして座ると、宿題の面倒を見るのであった。3人一緒の飲み物を飲みながら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] てぇてぇってやつかこれが
[良い点] >「なんてことを言うんだ先生は!言ってやれアリア!バイトをしようがしまいがその時間を勉強に当てるわけではないので、成績は上がりません!って」 辛辣すぎる(笑) 正しさは人を傷つける… …
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