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新たな依頼

 その後はシャルとバンデッドも鍛錬に加わった。フィジカルとスキルに頼りがちな我王に指導を与え、加えてチームの動きの練習も行った。合間の時間を縫ってのことで、二人は暫くの後に復興へと戻った。合わせて我王も一度、アジトへと帰る。


「遅ぇじゃねぇか、待ちわびたぞ! 魔物討伐の依頼が来たぜ」


 なにやらマルスは上機嫌な様子だ。我王は参加していないが、団の仕事自体は、前回の魔物討伐から今に至るまで全くゼロという訳ではない。復興はもちろん、取り締まりや護衛。一般流通では入手困難な材料や資源の確保など、数多の活動をこなしている。それぞれある程度の相場が定められているものの、報酬はピンキリ。困難な割に益の少ないものもあれば、容易であっても割のいいものまで。

 

 しかし今回は割がいい。そう感じさせるマルスの態度。魔物討伐の相場は断トツで高いからとも取れるが、当然危険性も高い訳であって、マルスのご機嫌はそれだけが理由とも思えない。


「今回の依頼者は驚け、バルカン王国直々の依頼だ!」

「それはすごいな。それで今回の相手はなんなんだ? その顔から察するに、割のいい相手に思えるが」

「おっといけねぇ、顔に出ちまってたか。ターゲットはワイバーン、シャマル王国のある北東の方角から南下して、それが居城付近の山岳に居ついてやがる。バルカンより下は南方の極地だ。ワイバーンはこの大陸を出ることはしねぇだろう」

「つまり、このまま南下を続ければリヴァーに至るかもしれない。そしてそのまま居つくかもしれない。だから自衛の為に駆除しては? という建前か」


 相手は国家、そしてマルスは自衛団。村や町こそすれ、国が相手であれば建前は必須。だが頼みの本質は当然、国が困っているから助けて欲しいということ。


「察しがいいじゃねぇか。相手は国だからな、直接的なことは言わねぇだろう。そして協力金も聞いて驚け、なんと百万マナだ」

「ず、随分と払いがいいな、つまりはそれだけのリスクが伴うということか。ワイバーンと言うからにはやはり、ドラゴンのような生き物なのか?」

「まあ似てるっちゃ似てるが、ワイバーンはブレスを吐かねぇ。その分体内の器官も無く体も小柄だ。ランクはゴーレムと同等のサードレベルで、頑強さはゴーレムに遥か劣るが、問題は素早さと与しにくさという点だろう」


 マルスのいう与しにくさ、ワイバーンはバルカンまで歩いて南下してきた訳ではない。紋章として描かれるワイバーンの特徴は当然――


「ワイバーンは、空を飛ぶ」

「そうだ、だから相性が悪い奴はとことん悪い。シャルやバンデットのような近接戦闘が主体ではな。だが、前にも言ったよな、我王」


 相性に悪しがあるのなら、当然逆もあって然るべきで、そしてマルスの能力は飛ぶ鳥も落とす重力波だ。


「浮遊するには器用なバランスが必要。飛んでる奴で、重力の変化に対応できた奴は誰一人としていねぇ。奴らにとって俺は天敵ってことだ」


 ワイバーンは一般的には強敵、しかしジュエラレイドにとっては恐るるに足らず。だからマルスは上機嫌、という訳だ。


「依頼は討伐だ、退けるのではなく完全討伐。野生動物には誇りなどねぇし、ピンチになったら普通に逃げる。空を逃げるワイバーンは止めを刺しにくいんだよ。だから報酬の受け取りには証拠も必要だ」

「確かに。撃退したのか、単にその場から去ったのか、区別のしようがないからな」

「故に失敗は許されねぇ。確実に仕留め切る為、前回とほぼ同じ面子で行く。主力の総出はリヴァーの危険に繋がる分、本当は控えておきたいところだがな」


 ゴーレムの襲来。同じようなことが再び起きて、かつ主力が不在であれば、今度こそリヴァーは滅びてしまうに違いない。しかし元来、リヴァーへの魔物の襲来は稀なはずなのだ。そもそも魔物は個体数が少ないうえ、大陸の位置関係上、大半が北方からやってくる。加えてゴーレムの襲来は前代未聞であり、 そんなことはマルスの知る限り、一度たりとも起こり得なかった。


 一度あれば二度目も。そのリスクはあるが、対価を考えると捨て難い。危険を冒してでも今のリヴァーには必要な金。半端な力で取り逃がすことだけは避けたかった。


「出発は明日だ、今回は少し早めのペースで行くぜ。三日で向かって討伐し、王国経由で四日で帰る。ぴたり一週間、てめぇの世界の暦では馴染みが薄いか?」

「いや、我々の世界でも一週間は七日で、人々に馴染み深いものだ」


 一週間。神が六日で世界を創り、残り一日に休暇を取ったことがそのはじまり。ただしそれは地球の暦の話で、こちらの世界では天使に世界の創造を任せたところ、休みなく続く激務に天使は皆疲れ、昏倒してしまったそう。仕方なく神が世界を仕上げたのが七日目にあたる。


 人任せな神だからこんな世界になっちまうんだよと、マルスのその言葉をミラノアが聞けば、憤慨するに違いない。

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