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無限大のユニバース

 倒したゴーレムの機体をそのままに、ジュエラレイドの面々はドニクスの街へと足を運ぶ。ゴーレムの装甲は貴重な資源で、使い様は幾らでもありそうに思えるが、不思議に思った我王がその旨をマルスに問うてみると――


「あれはな、使えねぇんだよ。魔力の残り香があるのか知れねぇが、過去に残骸の保管や、部品を使った道具を手にした者は嗅ぎ付けた魔物に襲われてる。呪われてるんだよ。人を殺め、破壊の後すら災いを呼ぶ。現実的に言っちゃあ、開発を抑止する機能なのかもしれねぇがな」


 それが生物であれば、死亡と共に魔力は消失される。生気が無くなるのと同様に、急速に体外へと放出されてしまう。しかしゴーレムにそれはなく、生物の器官とは構造が異なり、停止状態でも魔力を放出しないよう特殊な造りとなっている。


「しかし証拠がないとなると、どうやって倒した証明を提示するのだ」

「証人を連れたり、ごく僅かな部品を持ち帰ったり、そんなところだ。そもそもゴーレムを倒せる奴なんてそうそういねぇし、やはり信用が一番だな。確認には行かせるが、しかしドニクスの奴らは付き合いも長ぇ、素直に信用してくれるだろうよ」


 その後は街へと入る一行。謝礼を受け取る為のものだが、訪れれば町の人々は感謝の言葉を口々に述べた。対してジュエラレイドの面々も復興の助力に頭を下げては、友好の握手を交わす。恩着せがましくも、媚びることもなく、信用とはこういうことなのだろう。実績は何よりも大事だが、こうした細かな人付き合い。それが根付き、信頼をより強固なものにしているのだ。


「時々、正義の味方と勘違いして自衛団に入りたがる人もいるけどね。違うのよ、マルスはそういうことは求めてない。今は強いリーダー性を発揮しているマルスだけど、真に望んでいることは――」

「ユリア! てめぇ、俺の口上を台無しにするつもりか!」


 あわや目的を語られる間際に激昂するマルス、やれやれと肩を竦めるユリア。理想については、何がなんでも自分の口から伝えないと気が済まないようだ。


 謝礼を受け取った後に、ドニクスの町長は町で一晩過ごしていくことを提案した。せっかく訪れたことだし、感謝も兼ねてもてなしたいと申し出た。しかしマルスはそれを断る。善意は汲みながらも、復興途中の町を放っておく訳にはいかないと。また何かあればいつでも頼ってくれと。それを伝えて、ドニクスの町をその日の内に発つことに。


「ドニクスの町長な、悪ぃ奴ではないんだが話が長ぇ。内容は毎度同じ、退屈なドニクスの起源とその歩みだ。聞く方の身になれってんだ」


 それは自分のことを言っているのかと、団員達は一斉に疑念の眼を向ける。しかし当のマルスは露も知らずに、帰路の最中も我王を長話へと付き合わせた。


 リヴァーに着く頃には日も沈み、星々が夜空に輝きはじめる。


「この世界は、夜空がとても綺麗だな」

「はっ、そんな柄じゃねぇだろ。大体よ、手に届かねぇもんを考えて何になる」


 マルスからしてみれば、遥かな天体など考えても益のないこと。しかし我王の常識、我王の生きた世界ではそうではない。数多の資源や生活圏、長い目で見れば宇宙の開発は必須事項だといえた。


「全てではないが、俺のいた世界では星の一端を掴んでいたぞ」

「なっ……空に浮かぶ、あれらをか?」

「所説はあるが一つとして、星々の浮かぶ宇宙という空間には端がないとされ、永久に続くとしている。ミラノアは異世界だと言うが、もしかしたらこの宇宙のどこかに、俺のいた世界が瞬いているのかもしれないな」


 宇宙の端には何があるのか、答えは恐らく宇宙が広がる。有限なるユニバースの先には、これまた有限のユニバースが続き、結果は無限大に続くマルチバース。そこに果てはなくて、神々さえも全容を掴めぬ未知なる世界。


「手を振りゃあよ、誰かが見てくれるかもしれねぇぜ」

「はは、だといいが。光が辿り着く頃には俺もマルスも墓の中だ」

「てめぇらの世界って――」


 宇宙の壮大さが、具体的に人類に何をもたらしてくれるのかは分からない。結局知ったところで活用には至らず、その前に人類共々星の終焉が訪れるだろう。では全く無意味かというと、そんなことは決してない。知欲は人に進化をもたらす。知性が人間の最大の武器で、いかなる強さもそれに勝ることはない。己を知り、相手を知り、そして世界を知ることで、次なるステージへと到達させてくれるに違いない。

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