第55話 地味ぽちゃ系アラサー女子の私がイケメン達と大遭遇で大混乱な件
「あれまぁ、ちと鈍ったかいのう。
あんさんの魂、確かに感じた気がしたんじゃが」
「魂、……」
土地神のお爺さんが言うように、ここは人間界であり、私の住む国でもあるのは間違いない。
(私、田舎出身だけど、こんな……大自然の中の神社へ来た事なんてあったかな……?
でも、きちんと神様が私の事も見守ってくれていたのかもしれないなんて、なんだか嬉しい)
ちなみに、現在の私の姿は神様達同様、人間界にいても視えない。
人とすれ違う事は度々あったが、皆空気のように通り過ぎていくだけであった。
「申し訳ありませんが、僕たちはそろそろ失礼させて頂きます。日も落ちかけておりますので」
「ほぉ、いかんいかん。引き留めてすまなんだ。
すっかり″逢魔が時″じゃな。お勤め、ご苦労さん」
言うや否や、土地神のお爺さんはあっという間に私達の前から姿を消した。
「あの、思兼さん……」
「質問は後ほどお聞きしますので、今はお静かに。
先を急ぎましょう」
真剣な表情に気圧され、口を噤む。
そのまま思兼さんに素早く手を取られたまま、足早にその場を後にした。
* * *
「ここまで戻れば、もう大丈夫そうですね。伊縄城さん、本日はお疲れ様でした」
「思兼さん、手っ、手を……」
一目散で連れて行かれたために、しばらく言い出せなかったが。汗だくの手をずっと握られているのは、色々キツい。
指摘されてやっと気付いたらしく、思兼さんも珍しく慌てた様子で弁明をした。
「その、ですね。ずっとお辛そうで、つい……
出過ぎた真似をしました」
「?」
スッ、と視線を下に向けた思兼さんの視界の先には、私が限界値ギリギリまで耐えていた足元だった。
「……すみません。
私、場違いな靴を履いてきてしまって」
「いえ。僕が伊縄城さんのペースを見誤り、業務を優先させ招いた結果です。……痛かったですよね」
思兼さんが沈痛な面持ちで項垂れる。
気遣ってもらった気持ち以上に、今はとても居た堪れない。
「思兼さん、私――」
《ゴロゴロゴロゴロ》
「お〜いっ!! シロちゃーん! オモッチー!
オレオレ〜!!」
「この声は……」
耳馴染みのある、朗らかな声。
振り向くと片手にスーツケースを携えた八木羽屋さんがやって来るではないか。
いつものコック服ではなく、ストライプ調のブラックスーツに身を包んでおり、かなりシックな装いが抜群にハマっている。
「ひっさしぶりじゃん! しかも、こっち側で会うとか、オレら超運命じゃね?」
「八木羽屋、来ていたのか」
「まぁねー。毎年面倒だし、さっさと終わらせて新メニューの自主練するつもりだったんだよ。でもっ!」
八木羽屋さんが私の方を向き直し、満面の笑みを放つ。
「今回は一緒にいようかな♪」
「えっ」
「こら、自分の職務をあっさり放棄するんじゃない。
その荷物、訪問先に持って行くのだろう」
「じーつーは! すでに助っ人を頼んでいるのだよ諸君!
もう少しで着く頃だと思うんだけ……おっ!
ウワサをすれば〜♪」
「こ、こんばんは……皆さん……」
「衣吹戸課長!」
「もしや、八木羽屋の助っ人っていうのは……」
「そ! 従順かつ力持ちキャラで右に出る者はイブキング以外いないっしょ?」
「従順って……ひどいよ、八木羽屋くん……」
気付けば衣吹戸課長も大きな荷物を背に、灰色のスーツ姿だった。髪もきっちりスタイリングされており、いつもの冴えなさは皆無だ。
しかし、筋肉で多少スーツが短くなっている所が衣吹戸課長だ。
先日種狛さんが言っていた神々達の出張話が蘇る。
(これは確かに、大変だ)
「とりあえず、今夜はどこ泊まるか決まってんの?」
「僕等は甘寺社長に前もって手配して頂いてる。
『草野亭』という宿なんだが」
「あ、じゃあ……同じ、だね。
ぼくたちも、社長が予約してくれたんだ」
「社長自ら連絡来たから、まじビビったわー。
つーか聞いて! 今回、ぜーんぶオゴリだってさ〜♪
たーくさんお酒飲んじゃうもんね〜!!」
「そ、それなら、ぼくも、食後にアイス、おなかいっぱい、食べていい……かな」
「えぇっ! じゃ、じゃあ私は……」
「はぁ…………あの方も、懲りない人だ」
ひとり渋い表情の思兼さんを除き、私達はのんきに宿へと出発したのだった。
最後までご覧頂きありがとうございます。
ブクマも本当にいつも嬉しいです!
少しでも心に留まりましたら、下部の " ☆☆☆☆☆ " より評価をお願いいたします。
大変励みになりますので、ご協力のほどよろしくお願いします。




