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第51話 地味ぽちゃ系アラサー女子の私がイケメン達に翻弄された件

「はっくしゅんっ!! さ、寒い〜っ!!」


 布団からもぞもぞと這い上がると、ヒンヤリとした外気に身震いする。首元にブランケットを巻きながら洗面所へ向かい、冷水に縮こまりながら顔を洗った。


 最近ぐっと気温が下がったせいか、朝がまたつらくなってきた。数日後には、思兼(おもかね)さんと出張に行くというのに、また待たせてしまうなんて事態になったら大変だ。


「うーん。出張、かぁ……」


 確か、″人間界″に行くと言っていたっけ。

 どのぐらいの期間滞在するかは不明だが、戻れる事に対して特に感慨深さもなく妙に冷静な自分がいた。

 友人や家族に会えないのはもちろん寂しいが数ヶ月会わない事などこの歳になってそう珍しくはない。彼等もまた、『久しぶり』ぐらいの感覚だろう。


 それよりも、思兼さんと行動を共にする事の方が私にとっては大変由々しき問題である。


 体感時間にして約半年。

 イケメン達の存在にも段々と慣れてはきたが、流石に常に一緒というのは、困る。非常に。色々と。


 出張というからには、仕事先ではもちろん、行き帰りの移動や外泊も兼ねているに違いない。


(別に何も起こらないけど……!

 なんか……緊張するな)


 ともかく、まずは思兼さんの足を引っ張らないように気をつけなくては。


 ふと時計を見ると、すでに部屋を出る時刻を過ぎていた。今日は朝一から久久野(くくの)主任と打ち合わせがある日だ。仮に一分でも遅れでもしたら、氷漬けにされそうなぐらい冷酷な扱いをされるに決まっている。


「お、怒られる……!!」


 真っ青になった私は、大急ぎで身支度に取り掛かった。



 * * *



 どうにか死にものぐるいで到着し、事なきを得たので無事に職務を遂行することが出来た。

 予定よりも後ろにズレた為、遅い昼休憩を取る事になった私は、空腹でヘロヘロになりながら食堂へと向かった。


「今日の日替りなんだろ……」


 壁に掛かっているメニュー表を見ていると、背後に気配を感じた。


「シーロちゃんっ♪」

「わぁっ?!」


 突然両肩に大きな手を置かれ、飛び上がる。


「や、八木羽屋(やぎはや)さん! 心臓に悪すぎるのでやめてください……!」

「やっほー♪ こんな時間に来るなんてどーしたの?

 仕事また立て込んでる感じ?」

「久久野主任との打ち合わせが長引いちゃいまして……でも、おかげでしっかりまとまったので心置きなくごはんが食べられます」

「そっかそっか、お疲れ様! シロちゃんもくくのんもホント真面目だよね〜。あ、今日は『秋のスペシャル日替り定食』だよ♪ もう残り少ないから、早くもらっておいで〜」

「あっ、はい! 行ってきます!」


 慌ててトレーを取りに行くと、そこに意外な人物がいた。大きな背中がゆっくりと振り返り、驚いた顔でこちらを見下ろしている。


「……っ! 伊縄城(いなわしろ)、さん」

衣吹戸(いぶきど)課長、お疲れ様です。あっ……」


 ちょうど最後の日替り定食を衣吹戸課長が受け取っている所に出くわしてしまう。

 どうやら一足遅かったようだ。


「ごっ、ごめんなさい、伊縄城さんの分……っ」


 状況を理解した衣吹戸課長が申し訳なさそうに困った顔で弁解しようとしている。


 八百万祭参加から短髪にイメージチェンジしてからというもの、印象がガラリと変わり今まで見えなかった表情が分かる様になった事は劇的な進歩だった。


 課長も少しずつ表に出て他部署とコミュニケーションを取れるようになったらしく、こうして食堂で出会う事も増えており、とても喜ばしい……のだが。

 イケメン度が爆上がりした事で逆に以前よりも近寄り難くなってしまったのには、何とも皮肉な結果だ。


「大丈夫ですからっ! そ、そんな顔しないでください!」


 悲しそうな瞳のイケメンに謝られたら、逆にこちらの方が恐縮してしまう。私は全力で否定したが、衣吹戸課長は何を思ったのか斜め上の提案をしてきた。


「良かったら、半分、食べる……?」

「へっ?」


 冗談かと思ったが、何故か頬を赤らめて手で口元を覆う仕草をする衣吹戸課長を見ていたらどうやら本気らしい。


「限定で、人気みたい、だから」

「ちょっ、えっ!? き、気にしないでくださいっ。

 課長にわざわざシェアしてもらうなんて……食べちゃっていいですから!」

「……アイス」

「?」

「前に提案してもらったの、嬉しかったし」

「っあ、ありましたね、そういえば……!!」


 思い出した。……思い出してしまった。


 研修合宿中、衣吹戸課長にアイスをあげた事。

 そして、間接キ……


「わっ!! 私、お気持ちだけ頂きます!

 用事思い出しちゃったんで、すみません、一旦失礼しますっ!!」


 真っ赤になった顔を隠すように、食堂を飛び出す。


(あんな雰囲気で、ご飯なんて無理無理無理!

 恥ずかしすぎる……!!)


 勢いで出てきてしまったが、もう戻れない。

 空腹どころでは無くなってしまった私は、ひとまずカフェへと逃走するのだった。

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