第27話 地味ぽちゃ系アラサー女子の私がイケメン達と約束した件
大都野さんとのお泊まり女子会も無事に終わり、呪いまで祓ってもらえ心身共にリフレッシュ出来た週末を過ごした。
ただ一つだけ、凄く恥ずかしかった事がある。
それは、お風呂上がりの出来事だった。
* * *
「大都野さん、お風呂ありがとうございました。次、どうぞ」
首からタオルを下げ、浴室から出た私は大都野さんに声を掛けた。
「うぅん……」
ソファにもたれかかった大都野さんが顔を伏せたまま寝ぼけている。
すでに時刻は一時を回っている。
あれだけの酒量を投入したのだから、眠くなるのもしょうがない。
「大丈夫ですか? お水持ってきますよ?」
私がキッチンへ向かおうとした瞬間、背後からガバッと抱きつかれる。
「?!」
「伊縄城さん、行かないでくださいよ〜〜、もっとお話しましょう〜〜?」
大都野さんがぐりぐりと私の背中に顔を埋めて甘えてくる。
珍しく悪酔いしているようだ。
慌てて、大都野さんを説得しようと身を捩るが、羽交い締めにされ上手く抜け出せない。
「お、大都野さん……っ! どこにも行かないですから、とりあえず離して……!?」
《もにっ》
衝撃が走る。
「良いな〜伊縄城さん、お胸すっごく大きくて……もちもちで柔らかい〜〜羨ましいです〜〜〜〜!」
突然大都野さんに容赦無く揉みしだかれ、私はさすがに焦り出した。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと、大都野さん!?
太ってるだけですから!! も、やめてくださ、……っ」
「減るもんじゃないんですから、もう少しだけ〜!
たくさん揉むと、女性ホルモンが分泌しやすくなるみたいですよ?
私がお手伝いしますねっ。えいえいっ♪」
《もにもにもにもにもにもに》
「くすぐったいですってば! 大都野さん!?
もうダメですって! や、やめて〜〜〜〜!!」
しばらくの間、大都野さんのオモチャにされまくった私は、生きた心地がしなかった。
* * *
(あの後、この話をしたら全然覚えてないって言ってたし……私も忘れよう)
変な気持ちを振り払いながら、早足で食堂にやってくる。
そろそろ朝食ラッシュで混み合う時間帯だ。
私はトレーを取り、いつも注文するオムレツを貰いに行った。
八木羽屋さんが私に気付き、元気よく手を振ってくれた。
「おっはよ〜シロちゃん♪
あれっ? いつもより顔色スッキリしてる〜?
なんか良い事でもあった?」
八木羽屋さんが会って早々に核心を突く。
(す、鋭い……)
「あのっ、八木羽屋さんに教えて頂いた牛乳かんてん豪華版をこの間大都野さんに作って持っていったら、凄く喜んでいただけました!
八木羽屋さんのおかげです。ありがとうございました!」
「おー! そっかそっか〜〜♪
ミヤちゃん気に入ってくれたんだね!
つーか、シロちゃんもう習得したの?!
超手際いーじゃん! 準備大変じゃなかった?」
「あんまり難しい工程が無かったので、不器用な私でも出来ました。また中身を変えて次回作ってみます」
八木羽屋さんが会話中そつなくオムレツをひっくり返しながら、お皿に乗せてくれた。
「シロちゃんの手料理、オレも食べたいなー♪
ね、今度一緒に作ってみない?」
「えっ! 私は全然構いませんけど……その、八木羽屋さんみたいに出来るか、自信が……」
「だいじょーぶっ! 料理は基本、″心配り″があれば、ちゃんと形になるから♪
シロちゃんはそこ大事にしてくれてるし、オレ全然心配してないよ〜。
じゃあ決まり! レシピ幾つか用意しとくねー♪」
「あっ、はい! ありがとうございます!」
《トントン》
背後から肩を叩かれ、振り返ると険しい表情の久久野さんが立っていた。
「用件は済んだか? さっきからずっと立ち往生しているのだが」
私の後ろに並んでずっと待機していたらしく、状況を察した私は平謝りを繰り返した。
「す、すみません! 気付かず話し込んでしまって……今、退きますっ」
「くくのん、おはよー! 今朝はどーする?
いつもの?」
「ああ」
「はーい! そんじゃっ、シロちゃん約束だよ〜!
またね♪」
「あっ、はいっ! こちらこそ!」
私は列の邪魔にならないよう、そそくさとテーブルに戻った。
* * *
(久久野さん、氷のように冷徹な顔してたな……木の精霊だけど)
ガタン、と椅子に着席し、脱力する。
そういえば、久久野さんの笑った顔をこれまで一度も見た事がない。
もっと仲良くなったら、少しは打ち解けてくれるのだろうか。
(私より一個だけだけど、″年下″なの、驚いたな。
緊張感というか、威圧感を前よりも感じなくなったし……大都野さんに感謝だ)
アンケート結果を思い出し、顔が緩む。
「楽しそうだな」
《ドキッ!!》
「えっ……! 久久野さん……!?」
「今日は食堂が混雑しているようだ。
悪いが、相席させてもらう」
私の返事を待たずにさっさと横に座られ、急に背筋が引き締まる。
何か話題を振らなければとオロオロしてしまうが、久久野さんから話を始めた。
「君は、最近料理を始めたのか」
「あ。はい! まだちょっとだけですけど」
「そうか」
このままだと会話が途切れてしまう気がしたので、どうにか終わらせないよう懸命に話を続ける。
「あの、……牛乳かんてんって、知ってますか?
八木羽屋さんから教わったんですが、凄く美味しいんですよ。最近暑いので、自分流の冷たいスイーツを色々模索中なんです」
(そういえば、久久野さんも甘いものを食べるって言ってたっけ。委員会の皆さんに差し入れとして作ろうかな)
「久久野さん、良かったら今度作ってくるのでいかがですか?
そこまで甘くしないつもりなので、男性でも大丈夫かなと」
「いや、……手間だろう。わざわざ気を回さないで良い。ここしばらく業務が立て込んでいるのだから、無理はするな」
まるで顔を隠すかのように、しなやかな手で眼鏡を直す久久野さん。
私はその下の表情に気付かず、話を続ける。
「結構作るとたくさん出来ちゃうんで、皆さんに差し入れとしてお持ちしようと考えてます。
これから委員会も正念場ですし……何か少しでも、お役に立てれば嬉しいなって思うんです。
余計なお世話でしょうか……?」
久久野さんがほんの一瞬だけ、柔らかい表情を見せる。
「この間の君よりも、良い顔をしているな」
「えっ、そっ、そうですか……?」
「ああ。小さな心掛け一つで、全てが変わるものだ。
申し出、皆も喜ぶだろう。
……では、先に失礼する」
「あっ! はい! お疲れ様、ですっ」
(久久野さんが……笑った?)
見間違いだったのか、私の見たいという願望が見せた幻か。
どことなく浮ついた気持ちも束の間、IDバングルが鳴った。
チャットを確認し、目を見開く。
私は急いでご飯を咀嚼し、ある場所へと向かう為に移動を開始した。
衣吹戸課長から、IDバングル・改の試作機完成の連絡であった。
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