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第22話 地味ぽちゃ系アラサー女子の私が美女のイケメン夫と義理の兄の話をした件

「うぅ、眠い……暑い……ツラい…………」


 八木羽屋(やぎはや)さん特製栄養ドリンクを一気に飲み干し、私はデスク上で屍同然に潰れていた。


 毎日の業務が忙しいのはもちろんなのだが、委員会業務が明確になった事もあり私のスケジュールは常に満員御礼状態と化していた。それだけではなく、今週末には大都野(おおみやの)さんとの約束の日(お泊まり女子会)も迫っている。

 それでもって、種狛(たねこま)部長補佐の一件で衣吹戸(いぶきど)課長から定期的に連絡が入るようになり、すでにキャパオーバーだった。

 体が一つでは足りない。

 仕事もプライベートも只今絶賛ハードモードだった。


(とりあえず何か、別の飲み物でも買いに行こう)


 集中力が切れかかった頃、ちょうど休憩時間を迎えた。ヨロヨロとおぼつかない足取りで仕事場を出ようとした際、寸前で他の社員とぶつかりそうになったのを慌てて踏み止まる。


「うわっ!?」

「あっ!! 驚かせちゃってすいません!!

 伊縄城(いなわしろ)さん、ですよね?」


 突然目の前が暗くなり、謎の壁がそびえたつ。


 視線を上方に向けると、ワックスを効かせた薄灰の短髪が男らしい、爽やかなイケメンが申し訳なさそうに立っている。先程の壁は胸筋だったらしい。


「はい、私ですが……な、何か御用でしょうか?」


 不安そうな私を一蹴するように、イケメンが豪快に挨拶をする。


「嫁がいつもお世話になってます!!

頼まれてた物、お届けにきました!!」


 渡り廊下の端から端まで優に伝わる爆音が、弾丸のように轟く。至近距離での大音量に、脳内がビリビリと痺れた。


(す、すごい、声量……!!)


だが、大きなわんこに似た無邪気さを醸し出すイケメンに、怒る気にはなれない私は甘いかもしれない。


「嫁……あっ! 

神霊営業部の帆見(ほみ)主任、ですね!」

「はい! 覚えていてくれて嬉しいっす!!

今日、八百万祭(やおよろずさい)有志(サポーター)について案内見ました!

神霊営業部も一丸となって働きますので、よろしくお願いします!!」

「あ、ありがとうございます……!」


 あまりの熱量に、終始押され気味になる。

 神霊営業部の方々は確か、皆さんこんな感じだった。

 とにかく、″一生懸命で何事にも全力投球″といった()()()男達で脇を固めている部署である。


「あと、これが例の物っすね。結構重いんで、部屋まで運びます!」


 見ると、帆見主任の両手にずっしりと詰まった紙袋が握りしめられていた。


「えっ、これ、もしかして全部その、……ゆきさんからですか……?」

「あっハイ、そっす!

すいません、あいつかなり張り切っちゃってて、自分もさすがに途中で止めたんすけど……やっぱ、こんないらないっすよね……?」


 まるで叱られた後の子犬のように、しょんぼりしている帆見主任を見て、慌てて私は否定した。


「い、いえ! というよりも、勿体なさ過ぎて。

見た所、かなりお高そうな物ばかりというか……でも有り難く全部頂きます!

ゆきさんにもよろしくお伝えください!」

「押忍! 結構凝り性なもんで、とことん集めちゃうとこあるんですけど、気にせずガンガン使ってやってください!

子供生まれたら、化粧とかしてる余裕ないって言ってました。伊縄城さんに貰ってもらえて嬉しいって喜んでたんで、引き受けて頂いてありがとうございます!!」


(おおお……なんて良き夫婦だ……)


 旦那さんは真っ直ぐで優しいし、奥さんは綺麗で思いやりに満ち溢れている。

 完璧すぎる夫婦像だ。


 (良いなぁ。いつか、自分も……)


 相手すらいないのに、そんな高望みをする身分ではない事は百も承知だが、羨まずにはいられない。


「あ、そういや今日お義兄さ、じゃなかった!

思兼(おもかね)部長って見ましたか?」

「えっ、と……すみません。今日は会ってないので、ちょっと分からないですね……」

「そっすよね! 後で檜川くんに聞いてみます!

話全然変わるんすけど、伊縄城さんって結構業務で思兼部長とやり取りってしますか?」

「あっはい。入社時から色々お世話になってます。忙しいのに仕事がとても早くて、でも凄く几帳面というか丁寧で……色々助けられっぱなしです」

「あ〜〜〜〜、分かります!!

なんていうか、非の打ち所がないっすよね。

そっかー、やっぱり伊縄城さんから見てもそうっすよね!」


 うんうんと帆見主任が力強く頷いている。


「突然こんな話しちゃって驚きますよね。実は自分、思兼部長みたいになりたくて、密かに目標にしてたんです。部長、前は営業部のエースだったんすよ。もう伝説っすけど凄い優秀で、誰も追いつけなかった。今でも憧れてる奴、結構いるんじゃないかなぁ」

「えっ! 営業部にいたんですか?

知らなかったです」

「嫁の兄貴が完全無欠過ぎて、たまに自信無くなるんですけれどね。だから、こう考える事にしたんです!

こんな理想的な兄貴が出来た自分は、逆にとても幸運(ラッキー)なんじゃないかって!

いつか、ライバルになれるぐらい自分もぐんぐん成長して、嫁に愛想尽かされないよう、死ぬ気で頑張ります!!

自分語りしてすいませんっした!! では!!」


 帆見主任は爽やかな笑顔で去っていく。


 私主観で完璧な夫に見えた帆見主任の口から意外な言葉を聞き、色々な想いが脳裏を巡った。


(……そういえば……)


 ここ最近、まともに会ってない気がする。


 というより、()()()()をいちいち今まで気にした事もなかった。

仕事で疲れているから、余計に。


 何かと近くでフォローされる事が当たり前になっていた為に、今になって一抹の寂しさを覚えた。

思兼さんは特に委員長の役目が重くのしかかっているはずだから、私の忙しさの比ではないはずなのに。


(……夕ご飯、誘ってみようかな)


 私は初めて、『思兼さんに会いたい』という気持ちで行動を起こしていた。

最後までご覧頂きありがとうございます。

ブクマも本当に嬉しいです。


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これからもよろしくお願いいたします!

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