第21話 地味ぽちゃ系アラサー女子の私がイケメン達と委員会で真剣に議論した件
変わらず日々の業務に追われる中、第二回目の委員会が行われた。
今回は参加率が高く、思兼さん・八木羽屋さん・御影さん・久久野主任・衣吹戸課長、そして私を入れた総勢六名となる。
種狛部長補佐に関しては広報誌作成の為の追い込み作業中とのことで始めから不参加らしい。
正直、私としては″会いたくない″に尽きるので、不幸中の幸いである。
また、思兼さんが言うには『不在時に委員会で決定した事項については言われた通りに応じる』との事なので、後からとやかく言われる心配はないようだ。
会を進行するにあたり、実行委員長を思兼さん、副実行委員長を八木羽屋さんが任命される事になった。
文句無しの決定だ。
ちなみに私は書記に任命されたので皆さんの発言を適宜書き留めているが、前回から委員が一気に三名増えたおかげで相当量の内容を記す事になり、悠長に参加している場合では無くなっていた。
各分野の専門家が一同に揃い踏みなのだから、当然といえば当然だ。
この布陣を選出した上の方々の戦略は英断だったと思う。
各部門の担当責任者についても、それぞれの職種に応じて話し合いにより正式に決定した。
* * *
「前回たたき台として、大まかにですが各自の役割について僕の方で勝手ながら割り振りを行いました。異議なしとの事でこのまま進めさせて頂きます。
具体的に詰めたいと思いますので、皆さんそれぞれ忌憚のないご意見をお願いします」
「オレって【夜店部門】担当だったよね〜?
あ、別に割り振りカンケーなく″やりたい″って思ったら他のみんなも遠慮なく挙手していーよ〜〜♪
たっつー器用だし、オレ推薦しよっか?」
「何で俺に振るんだよ。つーか、輝彦しかやれる奴いねぇだろ、メシ関連の統括出来んの。前回は何店舗出てたんだ?
出来ればガッツリ系をメニューに入れてくれ。どうせ神霊資材部の奴らが食い倒すから、損はしないぜ」
「資料見せて〜、んんーと……ご、五百?!
うげー! まーじか〜〜!! トンデモな数じゃん!! 売り子足りんの!?
ってか毎年そんなに出しててちゃんと動員出来てたのスゴくない!?」
「知らないのか。毎年八百万祭は社にとって莫大な収益を生む。その規模の出店数でも大勢の来場者に対してはむしろ不相応だ。
そもそも、他部署の有志諸君にも協力を仰ぐのだろう? 相違ないか、思兼部長」
「そうですね。責任者決定後に各部の上長へ連絡し有志選出の募集をかけます。その後、僕が適材適所に配置しますので問題はありません。
八木羽屋、夜店に関してはまず企画について進めよう。その辺りは種狛部長補佐と相談してくれないか。社内外の市場調査情報を提供してくれるはずだ」
「えぇーっ! オレからすんの〜〜!?」
「すまないが私情は一旦割り切ってほしい。種狛部長補佐には【広報局】責任者として、祭開催に向けてのPR施策や関連制作物一連を担って頂くから、その辺りの情報も豊富だろう」
「……ちぇー。しょーがない、ねこまるに後で連絡するか〜」
「久久野主任は【財務局】責任者ですね。過去データはすでに実務に絡んで熟知されてると思いますので、いつも通りお願いします」
「承知している。不明点は前任の者に確認をとるので問題ない」
「ありがとうございます。御影は【会場設営部門】だ。会場用資材の手配手順や開催地の警備、交通規制諸々については一通りマニュアルがあるから後で打ち合わせさせてくれ」
「うーい。かしこまりー」
「衣吹戸課長はお察しだと思いますが、【インフラ整備部門】にて、当日のステージ照明、夜店通りの配電周りやシステム、各種機材等、御影と主に動くことになると思います。それから――」
『IDバングルの障害対策もですね。承知しました(^^)』
「仰る通りです。よろしくお願いいたします」
「で、念のため確認だけどオモッチの立ち位置って、組織全体の総大将って位置付けでいーんだよね?
今めっちゃざっくり言ったけど」
「その言い方はどうかと思うが……委員長として、責務を果たすだけだ」
凄まじい速さで話が展開していく。
仕事の出来るイケメン達の議論に見惚れる暇もなく、私は大急ぎで発言記録をまとめる。
「そして最後に、伊縄城さんは【事務局】責任者になります。
各部署間との渉外活動や委員会全体の各種サポートなど、伊縄城さんのお力添えがなければ成立しないとても重要なポストです。
初めてで色々と戸惑う事も多いかと思いますが、皆に遠慮なく頼ってくださいね」
思兼さんが心配事など軽く吹き飛ばすかのように穏やかに微笑む。
「逆にオレ、シロちゃんにめちゃめちゃ頼っちゃうかもしんないー!
お祭りまでバタバタだけど、張り切ってこ〜ね〜♪」
「お前意外と根性あっから、そんぐらい大したことねーだろ。ヘマしても笑わねぇから、安心しろ」
「普段通り、焦らず慎重にこなせ。何事も細部まで一切手を抜かずに心血を注げば、万事上手くいく」
『伊縄城さん、無理は禁物だよ。みんなで一緒にベストを尽くそう!(^O^)/』
イケメン達からのエールに、最大級の勇気が湧いてくる。
「はい! 皆さん、よろしくお願いします!」
* * *
終業後、委員会の議事録を仕上げているとIDバングルがオレンジ色に光る。
映像通話の着信だ。
『えむこさん! お久しぶりです、ゆきです。
すみません、まだお仕事中でしたか?』
「ゆきさん!!」
華やかな美女が画面一杯に映し出される。
「ちょっと後片付けしてただけなので、気にしないでください! 体調、大丈夫ですか?
……ずっとお話したかったので、凄く嬉しいです」
『私もですー! なんだか、少し心細くて……急に連絡しちゃってごめんなさい』
「初めてのご出産ですし、緊張しますよね。
私でよろしければ、気軽にご連絡ください!」
気丈な性格のゆきさんが一段としおらしい。
私も何かと落ち込む事が多かったので、不思議な親近感を持って接した。
『ありがとうございます。
えむこさんにお聞きしたい事があって。
私、産休中時間に余裕が出来たので色々調べ物をしてたんですけど。やっと最近、分かりました!!』
「……えっと、どういう事ですか?」
綺麗な瞳を輝かせ、ゆきさんが嬉しそうに話す。
『″コンカツ″の事ですよー!
″結婚活動″の略称だったんですね。勉強不足でした。えむこさんの力になりたくて、私に出来る事をずっと考えてたんです』
「えぇ――っ!!」
まさかの報告に腰を抜かす。
ご自身が大変な時に、そんな……どうでもいいと言ってしまうと自分が惨めになるのでアレだが、大変驚いた。
……驚いたのだが、気恥ずかしさと同時に、温かい気持ちが込み上げる。
『それでですね、お渡ししたい物がありまして。
今、お見せします……少しお待ちくださいね』
ゆきさんが画面から離れ、横から物音が聞こえる。
しばらく待つと、手に何か物品を携えている。
『私、こういった物が好きで、良く新作が出たりすると買っちゃうんですが、使わずそのままって事が多くて。
えむこさんはお化粧道具や香水ってご自身で気に入った物をお使いでしたか?』
キラキラと眩く光る虹色のコンパクトや小さな宝石が縁取られた香水瓶らしきものを、ゆきさんが目の前によく見えるように差し出す。
実に、美女が持つに相応しいアイテムだ。
「いえ。……すみません、私、女性らしいものって昔から疎くて、適当な物しか使った事がないんです。
香水に至っては、お恥ずかしい話ですが、正直言って全く無縁で……制汗剤が関の山です」
哀しいが事実なので嘘はつけない。
『そうなんですね。
あの……お嫌でなければ貰ってくださいませんか?
私なりにピックアップしてみたんですが、きっとえむこさんに似合う色味や香りだと思うんです。
あ! 全部新品なので安心してくださいね!』
「えええ?! そんな……こんな立派なもの、私なんかにいいんですか?」
ゆきさんが屈託のない笑顔で話し続ける。
『えむこさんの″コンカツ″、微力ながら応援させてください。
まだしばらくお会い出来ないので、こういうやり方で合ってるのかあまり自信ないんですが』
私は、ゆきさんを見ていて自分を省みなければと感じた。
有り体に、″女子力″と一括りに捉えていたが、結局私は外側しか見ていなかった。
美しい人は生まれもって何でも手にしていて、好きなように振る舞える強者であると。
でも、真の美とは、内面……
ゆきさんのように、澄み切った精神そのものを、心から美しいのだと改めて思った。
旦那さんに限らず、こんなに甲斐甲斐しく手助けをされたら、一生添い遂げてほしいと願うだろう。
「ありがとう、ございます。
私……大事に使わせて頂きます」
『良かったですー! では、一式旦那に持たせますね!
近々お伺いすると思いますが、よろしくお願いします』
旦那さんを派遣させるなんて、流石というか、ゆきさんらしい。
ゆきさんの誠意に心から感謝をしつつ、私達は楽しいひとときを過ごしたのだった。
最後までご覧頂きありがとうございます。
ブクマも本当に嬉しいです。
少しでも心に留まりましたら、下部の " ☆☆☆☆☆ " より評価していただけると、大変励みになります。
これからもよろしくお願いいたします!




