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1話 離脱

初投稿です。


最後まで読んでいただければ幸いです。

「ユウ、お前にはパーティを辞めてもらう。理由は・・・分かっているな?」


町の宿で数ある1つの部屋。


それを言ったのはパーティリーダーのホープだった。


他メンバーの反応はエルフの女狩人ルーダは少し驚き、


パーティ最年少で耳長の獣人魔導士キュースは表情一つ変えずに聞いていた。


俺の相棒でもあるウルフポーンのガウはどこか寂しそうな声を出す。


「ああ・・・分かってるさ」


そう、あれは三日前の事だった。



実力がついてきたパーティの力試しを兼ねて


今までよりも危険度の高いクエストを引き受け、モンスターが巣食う洞窟に赴いた。


棲み処と思しき広い空洞にはデスファングがいた。


俊敏で狡猾、その口にある牙で襲われれば命を刈り取られるとされる獣で、


1匹だけで小さな農村を根絶やしにする程に危険なモンスターだ。


ルーダがいち早く気づいて合図を出し、陣形を組む。


前にホープとガウ、後ろにルーダとキュースだ。


僕も確認したが見えてるだけでも指の数では足りない程いる。


獣もこちらに気づいてはすぐに襲い掛かってきた。


随分と距離があったのに関わらず、ものの数瞬で縮めてきた。


「ウオリャーー!」


しかしホープの掛け声と共に振るわれた聖剣が敵を薙ぎ払う。


「ガウアッ!」


ガウは獣より速く力強く爪や牙で敵を裂いていく。


その2人が逃したヤツはそのまま僕や後衛へと襲い掛かる。


「くっ!」


手にある剣を構えてなんとか噛みつきを防ぐ。


ヒュッ


その隙に矢が小さな音と共に僕の近くを通り過ぎ、獣の頭を貫く。


後ろからはキュースの魔法で作り出した炎の玉が素早く飛び、


獣を追いかけ、熱と光で包み込んだ。


襲い掛かってくる獣を協力しながら次々に倒していく。


旅を出た直後では勝てなかったはずの相手を凌駕した事が


パーティの成長を示していた。


しかし敵の親玉と思う一回り大きいデスファングと対峙し、


相手取るホープとガウの隙をついて3匹が一気に襲い掛かる。


先ほどよりも激しい猛攻を前に身構えていると


「えっ」


横から何かが飛び込んできた。


3匹とは別のデスファングが回り込んできていたのだ。


ソイツの噛みつきを何とか防いだが時すでに遅く、他のヤツは間近にいた。


その瞬間長い時が経ったような感覚に落ちた。


「ユウ!」


ルーダに呼びかけられ、気づいた瞬間には4匹の獣は矢と炎により倒れていた。


その後は親玉を倒し、散り散りになる敵を少しずつ倒していった。


「やったな!俺たちがこんなに強い奴らをあっという間に片付けてしまった!」


ホープは勝利と成長した事に大きく喜び、パーティに言った。


「アゥーーーン!」


ガウもそれにつられてか勝利の雄たけびを挙げる。


「うむ、連携も取れて大きな怪我なく進めたのは我々の成長した結果だろう」


ルーダは先ほどの戦いを冷静に評価しながらも嬉しそうに話す。


「そうだね、まあユウが危険だったのは改善すべき点だろうね」


キュースが無表情のまま話し、僕の心臓が大きく鳴った気がした。


「ハハ!戦いに身を置いているんだから危険は付き物だ。

敵も強くなったばかりだからこれから気を付ければいいだろ?」


ホープはその話を笑って流してくれた。


「そう、だね・・・」


僕はホープの優しい言葉に力無く返した。


他のメンバーを見てもどこか余裕を持って話す姿を見て胸が詰まった。


自分がさっきまで戦っていたのは死そのものとも思える程の強敵だった。


だが皆の反応はどうだろう、まるで低ランクモンスターと対峙した後に近かった。


その認識の差を感じてしまい、苦しさが痺れのように全身へとはい回ってきた。


・・・その後も何度か同程度のクエストを受けて、モンスターと対峙した。


デスファングとの闘いで起きたような危険な場面は無かったが、


敵に自らの攻撃は通用せず、


以前のような連携での立ち回りも上手くいってない事に気づいた。


それからだんだんと皆の僕に対する評価も下がっていたような気がした。



そして今日に至った。


「・・・僕が足手まといだから、なんだよね」


その台詞を言った僕の声は恐怖で震えていた。


「・・・そうだ」


少しの間と共にホープが言った。


普段だと考えられない暗く、小さい声だった。


僕は己の無力さに悔しいと感じながらもどこか安堵したように感じた。


「しょうがないよ、それが正しいんだから」


ルーダは顔を厳しくしていたが黙ったままだった。


キュースも先ほどから無表情のままこちらを見ていた。


皆思う事は一緒なんだ。


であれば答えは決まっている。

「・・・分かった、僕はこのパーティを辞める、それでいい」


そう言った。


しばらく沈黙が続いたと思う。


そこで少ししてから


「まあ才能が無いのだから仕方がない、むしろここまで良くやったほうさ」


とキュースが当たり前かのように話した。


「キュース」


ルーダはこれ以上言わせないと名前を呼んだ。


「いいよルーダ、ホントの事だから・・・

今日は先に部屋で寝る事にするよ・・・」


キュースの言葉に何も言い返せない僕は居づらさを感じてその場を去り、自分の部屋に戻った。


すぐに眠りに落ちたと思うけどそれまでは涙を流したと思う。


読んでいただきありがとうございます。


評価をして頂ければ幸いです。

感想もあればよろしくお願いいたします。

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