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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【Underworld online】炎が大嫌いなので水属性魔法を極めたいと思います〜“ウォーターブレード”を極限まで極めていたら、いつの間にか最強ランカーになっていました〜

作者: 水篠ナズナ

「うわぁ……ここがUnderworld」


 澄み渡った美しい青空の下には、どこまでも透き通る蒼海が広がっていた。私は草原地帯をとことこ歩きながら辺りを散策する。


「花も虫も本物みたい」


 手近にあった花を手に取って、花弁をむしる。ひらひらと落ちる花びらは、それが当たり前であるかのように自然に落ちていった。


 これがプログラムされた動作だとは誰も思わないだろう。


 今日はUnderworldの公式配信日。プレイヤーが実際にゲームの世界に入り、立体的に体感する事が出来るVRMMOだ。


 私本来の身体はベッドの上で横になっている。


「この日の為にお小遣い貯めておいてよかった〜。でも巴遅いなー、待ち合わせの時間はとっくに……あれ? メッセージが来てる。えっと、塾で遅くなるから先に楽しんでて。本当にごめんね。1時間後に始まりの街で会おうか。塾ならしょうがないね。よし一人でも楽しむぞー!」


 ステータスオープン。


アクア

Lv1

HP 30/30

MP 10/10


【STR 0 】

【VIT 20】

【AGI 60 〈+10〉】

【DEX 30】

【INT 90〈+10〉】


スキル

なし


 アクアこと私、内田雫(うちだしずく)、高校2年生は親友の神崎巴(かんざきともえ)と一緒にUnderworldをやる約束をしていた。巴は遅くなるという事で、今は暇潰しにステータス画面を開いている。


 ゲーム開始時に支給された200ポイントは余す事なく使った。後のためにとっておいてもめんどくさがりな私は溜まるだけだしね。


 ステータスの振り方は人それぞれだ。バランスよく振る人もいれば、どれか一つに特化して振る人もいる。私は後者だ。元々魔法をバンバン使う系になりたかったので、INTに多く振っている。


「あとは魔法を何か一つ覚えたいなー」


 覚えたい魔法は決まっていた。水系統だ。


「炎は大っ嫌いだもん。とりあえず水場に行けば何か覚えられるかも」


 そんな感じて適当に海辺を歩いていると、洞窟が見つかった。


「おおー!! なにかいそうな雰囲気」


 洞穴を覗くと、奥は真っ暗だった。


「初日だし、まさか初見殺しの罠とかはないはず……うん、行ってみよう」


 水が滴る洞窟の中を歩きながら、炎が嫌いになった日のことを思い返す。あれは小学校6年生の時、林間学校でキャンプファイヤーを囲んでいた時の話だ。私の上着に、偶然飛んできた火の粉が燃え移り、危うく火傷しそうになった事があった。燃えやすい上着を着てきた事も不味かったのたが、近くにより過ぎていた私も悪かった。


 なにはともあれ、それからというもの、火というものが嫌いになってしまった。水系統の魔法が欲しいのもそれが理由だ。


「ひゃっ! なんだ水かー」


 私の首筋目掛けて上から水滴が落ちてきたのだ。


「でもまあ、この暗さにも慣れてきたかな」


 目が暗闇に慣れてきた。暫く歩いていると、暗闇の奥から歌が聞こえてくる。誰だろう? プレイヤーかな?


 広くて明るい場所に出た。湖畔のような大きさの湖の上に大きな岩があり、岩の上には美しい女性がいた。あれはプレイヤーではない。NPCだ。


(うわー人魚さんだ!)


 人魚は私を見て微笑むと、私に向けて歌を奏でる。とても綺麗な声だった。本物の歌手を使ってるのではないかと思ってしまった。


 2分ほどして歌が終わる。私が拍手をすると、人魚さんは恥ずかしそうに微笑んだ。その時、メッセージが表示された。


〈クエスト達成 人魚の演奏〉


(え、歌を聞くだけで達成しちゃうの!? まあ、ゲームの最初ってこんなもんなのかな)


 そんな風に思っていると、岩から降りて、水の中に潜った人魚さんが水から顔を出し手招きをしている。


 私が向かうと人魚さんが流暢な口調で喋りかけてきた。


「こんにちは可愛らしいお嬢さん。私の名前はイーゼです。貴方のお名前は?」


「私の名前はアクアって言います」


「アクア……いい名前ね、水と相性が良さそう。貴方と私が出会えたのは偶然じゃないかもね。ああ、そうそう、はいこれ。私の歌を最後まで聴いてくれてありがとう。貴方にこれを授けるわ」


 そう言って、イーゼさんが光る物を渡してきた。それを受け取ると、クエスト達成の報酬として、人魚の様々なアイテムをもらった。その中にある『人魚の涙』は水属性魔法を使用した時、MPが減らないというものだった。


「おぉ!!」


「ここでは、水属性魔法ウォーターブレードを覚えられるわ。覚えた魔法にはレベルがあるから、最初は1で99まで上げられるわ。上げることに威力や範囲が上がっていくのよ」


 スキル ウォーターブレードを覚えました。


 頭の中でアナウンスが流れる。


 その後は、イーゼさんの丁寧な指導の元、イーゼさんがさっきまでいた大岩目掛けてウォーターブレードを放った。


「《ウォーターブレード》!」


 流石にレベル1では砕けなかったが、暫く撃っていると10まで上がっていた。


「技レベルは上がるの早いですね」


「それはそうよ。私の加護がある限りは、水属性魔法を使った時に貰える経験値が2倍なんだから」


 それからイーゼさんと話をしていると、あっという間に待ち合わせの時間になった。


「あ、もう私行かなきゃ! イーゼさんまた後で来ますね! 今度は友達と一緒に」


「ええ、楽しみにして待ってるわ」


 そういうと、彼女は大岩に戻りまた歌を歌い始めた。やっぱりAIとは思えない綺麗な歌声だった。なんの歌だろう? オリジナルかな。


 イーゼさんと別れた私は、始まりの街で友人の姿を探した。


「あ、トモエこっちこっち!」


 広場できょろきょろと忙しなく首を動かしていた巴に声をかけると、彼女はとことことやってきた。


「しず……っとよかったアクアに会えて」


 私の本名を言いかけて、アクアと言い直す。


「ふふっ、私はこっちの世界ではアクアだよ。でも、巴はトモエのまんまなんだね」


「うん、別にいっかなーって思って。そういえばアクア、第一回公式ランキング戦が一週間後に始まるって告知がきてるけどアクアは参加するの?」


 スキルは、ウォーターブレードだけだけど。


「勿論参加するよ! トモエは?」


「私は様子見かな。暫くはゆっくりUnderworldを見て回りたいし」


「そっかー。あ、じゃあ私がUnderworldを案内するよ。トモエより先にログインしていっぱい見て回ったから、人魚さんがとっても可愛いかったよ!」


「え、人魚なんているの!?」


「うん。いるよー」


 私は巴の手を引いて、イーゼさんが住んでいるあの洞穴に向かった。人魚を見た巴はすごいびっくりして、いっぱい話しかけていた。そしてイーゼさんはとてもAIだとは思えない巧みな話術で私たちを楽しませた。


◇◆◇◆◇


 私は学校が終わったらすぐに家に帰り、Underworldログインした。そして、


「うおおー! 《ウォーターブレード》《ウォーターブレード》 《ウォーターブレード》ーー!!」


「「「ギィシャァァァァァァァァァォ!!」」」


 とにかくウォーターブレードを使いまくって熊型モンスターを倒し、ひたすらウォーターブレードの技レベルを上げた。


 そして一日三回挑戦できる公式戦では、


「《ウォーターブレード!!》《ウォーターブレード!!》 《ウォーターブレード!!》」


 あいも変わらずウォーターブレードを乱用した。MPは『人魚の涙』を装備しているので水属性魔法ならいくら使用しても減る事はない。


 なので私は特に何も考える事なく、魔法を乱発し続けた。


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」」」


 目指すは公式戦で100以内だ。第一回公式ランキングでは期間中どれほど勝利数が多いかで決まる。大会期間は二週間で合計21戦行われる。


 制限時間は5分、その間に勝負が決まらない場合は引き分けとなる。私は21勝0敗だった。私の他にも全勝している者は出ているが、その場合は勝利にまでかかった時間が合計で短い順に順位が上となる仕組みだ。


 私は殆どの試合を10秒以内に終えていたからかなりの自信があった。でも後半戦では、私の噂が一週間の間で広まったのか魔法防御を固めてくる相手が多かった。


「まあ、対策されるのはしょうがないよね。でも全勝したし目標の100以内には届くはず」


 そうこうしていると、広場の頭上に大きなスクリーンが映し出され、Underworldの公式キャラであるバニーガール少女、バニラちゃんが映し出された。


「みんなー! 第一回公式ランキング戦に参加ありがとー!! さっそくだけど集計が終わったから発表しまーす!!」


 11位から100位までが一気に映し出される。そこに私の名前はなかった。自分の名前は光って見えるのでとても分かりやすい。


「ではでは、10位の発表でーす!」


 バニラちゃんが、10位から順に発表を始める。10位から7位までの人は20勝1敗といった感じで、この時点で私の6位入賞は決定した。


 6、5、4と私の名前は呼ばれず、ドキドキしていると、ついにその時がやってきた。


『それじゃあ、第三位の発表を行うよー。正式オープンから一ヶ月。第1回公式ランクキング戦、第三位に輝いたのはー……【水刃】アクアちゃんですー! おめでとうございまーす!!』


 なんか、運営から二つ名付けられてる!? まさかとは思ったけど私が三位になれるとは……嘘だよね、嘘って言ってよ、私ウォーターブレードしか覚えてないんだよ。


 司会進行役のバニラちゃんは、二つ名を付けられ混乱する私を置いて話を続ける。


「3位になったアクアちゃんには次の公式戦のシード権と運営から素敵なスキルをプレゼントさせて頂きまーす! いやーこんな可愛い子が上位入賞だなんてバニラとっても嬉しいですー! 10位以内に入った女の子は二人しかいませんし……ちょっとそこの男の人、レディーファーストです! もっと負けてあげてくださいよ!」


 バニラちゃんに指さされ、スクリーンに映し出された男は10位の人だった。


「えっ、ちょ、おれ!? いや、そんなつもりは……」


 ニートの人かな? なんか喋り方がどもどもしてる。あ、でも私のクラスにもああいう風に話す人いたなー。


「ウッソでーす! 冗談ですよ、そんな事言うわけないじゃないですか、勝負の世界は非情ですからー」


 バニラちゃんが可愛く舌を巻く。10位の人もほっと胸を撫で下ろしていた。


「ではでは、次の発表に移りたいと思いまーす……」


 バニラちゃんが次の発表に移り出すのと同時に、私のステータス画面に文字が表示された。


【運営からメッセージが届きました】


 ステータス画面に表示された、そのメールを開くと祝辞とシード権、そしてスキル【限界突破】が届いていた。


「えっとスキル【限界突破】。このスキルを所持している場合、技レベルが99の時でも上限を超えてレベルアップが出来ます……えっと、つまり私のウォーターブレードは今レベル86だから99になってもまだ上げられるって事!? 最大上限300!!? なにこれ! 私の為にあるようなスキルじゃん!」


 私は早速、巴にメッセージを送った。


『トモエ! 運営からすっごくいいスキルを貰ったよ。【限界突破】だって』


 詳しい内容を巴に送ると、すぐに返信が返ってきた。


『運営、終わったね。アクアにこんなスキル持たせるとか完全に調整ミス。よしアクア天辺とりなさい!』


『うん、分かった! 今からとりあえず99にしてくる』


 私はその後、ウォーターブレードのレベルを99まで上げ、上限を越して139にまでのぼりつめ、第二回ランキング戦に挑んだ。


 今回はいくつかのグループに分かれての乱戦だったが、私はシード権を使って本選からの参加だった。


【本選】


 私は開始直後、みんなが密集している内に、レベル136になって範囲が広がったウォーターブレードで全滅させてしまった。


「よーし、《ウォーターブレード》!! あ……」


 試合開始僅か、8秒の出来事だった。第二回目のランク戦は二位で終わった。一位の人は3秒だったとの事。


 Underworldの人口は述べ、100万人に昇る。今でも新規の客が増え続けているのだ。来月には世界で配信されるらしい。そうなれば今よりもっと上位ランカーの競争率は激しくなる。


 そんな中で二位という順位は中々のものではないか。


「うん。とりあえず満足!」


◇◇◇


 今日も学校帰り、Underworldにログインする。明日は、巴と新しく出来た街を探検する予定なので今日はダンジョン探索に出向こうと思う。


「さあ、今日はどこのダンジョンに行こうかなー。あ、その前にイーゼさんの所に行かなきゃ。きっと寂しがってる」


 私はイーゼさんが待つ、いつもの洞穴に向かった。


アクア

Lv23

HP480 /480

MP200 /200


【STR 23 】

【VIT 48】

【AGI 102 〈+10〉】

【DEX 62】

【INT 203〈+30〉】


スキル

水属性魔法ウォーターブレード


装備・恩恵

『人魚の涙』

『人魚の加護』

『人魚の福音』


契約獣

なし


称号

【第一回公式ランキング戦 三位】

【第二回公式ランキング戦 二位】

【水刃】

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