種明かし④
シイル殿下は、さらに奥へと進んでく。
「ここです」
一言で表すなら、大きな亀裂。さっき通ってきた地下道と比べて、縦にも横にも何倍も広い。そこから生ぬるい風が吹いてきて、いかにもな雰囲気。暗がりに何かがひそんでいそう。
「これは?」
「地神の口と、我々は呼んでいますが」
ふり返ったシイル殿下は、怒りを抑えたような顔をしている。
「ケセラサ王族の中でも、限られた者にしか知らされていません」
ひょぇ! そんなおっとろしいもんは、見せないでほしかったよ。でも、なにか理由があるから、こんな所まで連れてきたわけで。
「この割れ目をどこまで進んでも、何もないのです」
挑むように闇を凝視するシイル殿下。そして、沈黙。
話したいのに躊躇っちゃうものがあるんだね。まかせて! 私、案外、聞き上手だよ?
「シイル殿下。発言をお許しください」
「どうぞ。以後、いかなる時も、キララ殿は無許可で私に話しかけてかまいません」
五秒ルールを持ち出すまでもないって、こんなガキんちょにありえんくらいの好待遇だ。
「ありがとうござます。それで、何もないとは、どういうことでしょう?」
裂け目の尽きるところに、窪んだ岩壁があるってだけじゃ、それはふつうのことだよね。
「我々にも、どういうことなのかわからなのです。見た目には、なんの変哲もない洞窟だ。むしろ歩きやすいくらいのね。ただ、それがずっと続き、果てがない。半年間、騎兵に旅をさせたという記録もあります」
ふぉぅ。なんだろうね、ループしてるのかね? もしや、次元の裂け目? 通り抜けたら、そこは異世界だった? 心の中で、きゃいきゃい言ってたら、そういうのって呼んじゃうらしい。
「しかし、ここから現れるのです」
えっ。えーっ! 現れるって、まさか、まさかね?
「あの、それは、もしや。こちらの王国が召喚しているという」
「そう、勇者です。彼らはいつともなく、自然に現れる。我々が召喚しているわけではないのです。我が国に、そこまでの技術はありませんから」
一言でも漏らせば首チョンパなことを、よくもまあ、あっさり教えてくれたもんだ。隣で堂々としている旦那様のおかげかな? 私がのん気に、心置きなく驚いていられるのもそう。
いくら王太子でも、根回しなしには私を引っ張り出せないよね。
ようするに、私が呼び出された時には、すでに話はついていて、いつからどこまでかはわからないけど、ワルサさんは知ってたってこと。
自室に下がって、二人きりになってから、秘密にしてたのを謝られたけど、それはしかたがないと思うよ?
ギュベニュー家に降嫁してきた自国の王女、つまりワルサさんのお祖母様は、それはそれは気位の高い人で、じつは若い頃やんちゃだったワルサさんとは、死ぬまで相容れなかったそう。ふーむ、人に歴史あり。でも、体罰はいかんよ、体罰は!
まあ、おかげで私たちのいまがある。領地に帰ったら、うらみごとを言って、好きだったっていう白い花でも供えるね。
王族であることを誇りつつ、嫁いだからにはその家の利益を優先するって、切り替えはできる人だったから、代々の当主には王家の秘密が伝えられてきたんだそうな。




