学校へ行こう②
結果からいうと、学院の授業内容は、そう馬鹿にしたもんでもなかった。なにごとも決めつけはダメだね。
校舎は王城と隣接してるけど、外からの出入りはもちろん、城と行き来するにも、衛兵のいる門を通過しなければならない。なにしろ王子、王女も通ってるからね。
飾りだと思ってたフルプレートメールが動いた時にはびっくりした!
案内役の先輩は知らんぷりをしてたけど、微妙に肩が震えてる。どうも、よくあることらしい。私も次第に、笑いが込み上げてきて、平然とした顔をつくるのに苦労したよ。緊張してる時って、妙に笑いの沸点が低くならない?
時々、お茶目な騎士がまじってるみたいだけど、警備は万全なようだ。
前世だと、小中一貫校にあたるのかな? それぞれが自分に合った授業を受けるところは大学っぽい。
入学の機会は、年に二回。春と秋。それにともなって講義は、一クールが半年。
私は、春の方にぎりぎり間に合って、いま面接を受けている。
足切りするためのものじゃないとは言われたけど。嫌だな、就活を思い出しちゃった。
「王立魔法学院」には、貴族一人の推薦があれば、平民でも入れる。実際は、数年に一人いるかいないからしいけど。
たいていは保護者が推薦するから、社会的に抹殺されるようなことでもやらかしてなければ、貴族は確実に入学できる。ここで落とされるなんてことはないわけ。
私の場合は、ワルサさんが一筆書いてくれた。王家の肝いりとはいえ、形は大事。
五人の面接官は、学院の教師でもある。
ああ、せめて集団面接ならなぁ。すべての視線を集めて、私は前屈みになりかかった背筋をのばす。
正直、質問の内容には拍子抜けしたけど、忘れちゃいけない、私は七歳児!
「あなたが一個、百五十スピラのリンゴを五個買おうとしていたとします。どの硬貨を渡すのが適切だと思いますか?」
ここでつっかえると、『初級算術』の授業が必須になる。
「では、おつりはいくらになりますか?」
ここで間違えると、できれば『初級算術』を受けた方がいいと勧められるみたい。
「家に帰って、一個を六つに切り分けました。五個すべてを切り分けると、全部で何切れになりますか?」
私は一人掛けの机に向かっていて、紙とペンを渡され、それを使って計算したりメモしたりしていいと言われている。
でも、もともとが掛け算九九を暗記させる異世界育ちだからね。さらりと答えると大いに感心されて、計算系の授業に関しては何も言われなかった。『魔導入門』でも『晴雨考察』でも、学びたかったらお好きにどうぞってことだ。
「この国で、政治はどのように行われているでしょう?」
一度、体験してきたことだから、答えやすい。褒められこそすれ、強制はされなかったけど、もともと『政治入門』の授業はとるつもり。
合間に休憩と称してお茶が供され、マナーも見られた。
あとは、本を渡されて、数ページにわたって朗読させられたり、新しいお友達ができたと設定して、お茶会に招く手紙を書かされたり。
唯一、絶対に受けるようにと言われたのは『ケセラサ王国の歴史』。
うん、自分でもそうしなきゃって思ってた。家令のイマージや、メイド長のスカレに教えを請うたり、図書室の蔵書をパラパラ捲ったりはしてたけどね。
いくら歴代の王の名前が言えても、まだまだ視点がヤラレタ人のものなんだわ。




