王家の人々①
私が、新しい両親について知っていることといえば、おまるを使っていることくらいだ。っていうのは冗談。
この国について、私の生まれについて。折にふれ、また寝物語に、乳母のユリリアが語ってくれる。まだ、理解できない歳だろうが関係ない。いわゆる英才教育ってやつだね。
ポカスカン大陸のヤラレタ王国とか、ふざけてんじゃないかって思ったけど。ユリリアは大まじめ。
「ぽかすー、やれー」
私が、ドーナツ型のガラガラを振り回しながら奇声を上げれば、大喜びだ。
「姫様は、本当に賢くてあられます」
彼女が言うには、王様は賢く勇ましく、お妃様は美しくやさしい。本当だったらうれしいけど、下々の言うことだ。まして、こっちは実の娘。悪口は言えまい。話半分に聞いておこう。
案の上、隣国と年がら年中戦争をしているらしく、またその理由がくだらない。国土は向こうの方が小さいが、いろいろと進んでいるようで、それをうらやみねたみ難癖つけて、あれこれぶんどろうとしているのがうちの国。は、はずかしい。
まあ、向こうも勇者召喚とかやらかしてるらしいから、褒められたもんじゃないけど。召喚って、聞こえはいいけど、ようは誘拐だよ?
ありがたいことに、魔王はいまのところおとぎ話の登場人物におさまっている。お願いだから、そのままでいてください。
で、勇者召喚の目的は、技術革新。それから隣国、つまりうちとの戦争に引き分けるため。そう。なんだかんだ、うちの軍は強いらしい。
技術で負けてるのに、なぜ負けないかって? それは、魔法があるからです。ま、まじか? そういえば、神様(?)が回復がうんちゃらとか言ってたような。
でも、乳母のユリリアや、メイドのハンナが使っているのは見たことがない。もちろん私も、いくら唸っても何もできない。
「まひょー」
二、三日しつこくねだって大層、困らせてしまった。
「大きくなられれば、姫様はすごい魔法をお使いになれますよ。ええ、きっと。絶対に」
き、期待が重い。どうやら王族は全員、貴族は大半が、平民はごくごくまれに、六歳くらいから発現するものらしい。
メイドのハンナは商家の出で、なかなか裕福な家の子らしいが、当然のように魔法は使えない。乳母のユリリアは子爵家の三女だが、魔法の才はないんだそうだ。なんか、ごめんね。