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勇者がやってきた④

「まして、これほどまでに魅力的な。いや、こんな言い方は失礼やもしれないが、聖女殿がここまでおかわいらしい方だったとは思いもよらず、照れてしまいますな」

「あら、お上手ですこと」

「いやいや、事実ですぞ?」

 勇者はしきりに私を褒め(たた)えて、今回の《回復》について、事のあらましを聞き出そうとする。あ、なんか王都では、「聖女の大回復」とか妙な言い方されてるらしいよ。まったく誰の仕業(しわざ)だ、マスコミか?

「大変申しわけありません。じつは私、よく覚えておりませんの」

 アーパーな七歳児で押し通そうかとも思ったが、領民の証言と齟齬(そご)があってもね。それに女の子はこれくらいの歳になれば、おしゃまな口をきくものよ?

「皆様のお役に立てたのならばよろこばしいことですが。本当に私がおこなったことなのでしょうか」

 自信なさげな表情をつくって、つぶやく。

 まあ、それを調査して帰るのも、この子の仕事なんだろうけど。偶然とはいえ、なんやら器材を持ち込もうとしてた連中は追い返した。ギーブ君、グッジョブ! せいぜい空撮ならぬ、空からの目視と、目撃者の話を聞くことくらいしかできないだろう。

「人の口に戸は立てられぬとはこのこと。これも真実ゆえのことと我は思います。まして、かつて聞いたことのないほどの大魔法。天使様の降臨さえあったと聞いております。お体に相当のご負担もあったに違いない。ゆっくり静養されるがよいでしょう」

 なんか慣用句の使い方がおかしい気もするけど。つまり、いずれは王都に来て欲しいが、いまは時期じゃないと。

「王都にお越しの際には、ぜひ、我が屋敷にもお招きしたい」

 この勇者サマ、王家とは別の思惑があるらしい。何をどうするのかまではわからないけど、私を利用する気満まんまん。でも、こっちは彼らをあてにしてないしな。突然、異世界に連れてこられるなんて、不憫(ふびん)と思わなくもないけど、彼らは彼らでたくましく生きてる。

 第一、アイドル顔って、お姉さんどうも好かんのよ。

「ええ、ぜひ」

 あはは、うふふと笑い合う。こっちの世界では成人っていっても、現代日本育ちの十代に、そうそう丸め込まれませんよー。

「ちょっと失礼いたしますね」

「いえ、どうぞごゆっくり。私はこの茶菓子を堪能(たんのう)させていただいております」

 メイドに椅子を引かせて席をたてば、ちゃんと立ち上がって見送ってくれる。最低限のマナーは身についているんだよね。

「奥様、こちらでよろしいでしょうか」

 私を立てて確認してくれるけど、土産は選びは家令におまかせ。次に会った時とか話が合わないと困るから、こういう気遣いはほんと助かる。化粧直しに立ったついでを狙うのもこころにくい。

 ギーブ君から報告を受けた時、「祖父母の代に掘りつくしたと思ったが」って、ワルサさんも驚いてた。それでも、ギュベニュー辺境伯領イコール、ミスリルの産地ってイメージはいまだ残っているそうだ。ミスリル製の文鎮(ぶんちん)は、あなたとの交誼(こうぎ)に重きをおいています、って意味だって。

 勇者は、半日ほどくっちゃべって、勝手に飛んで帰っていった。はー、やれやれ。

 勇者の話でいちいばん魅力を感じたのは、新発売されるっていうせんべいかな。王都に行ったら、ぜひ買おう。ワルサさんも気に入ってくれるといいな。万が一、醤油のにおいがダメだったら、塩味をつくらせよう。

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